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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
95/129

1-89.転生者3


「「へ?」」

 レイリと曹の声が重なる。

「だからー、僕はこの子が異世界人、つまり転生者って言ったの。」

「てんせいしゃ?」

「何でわかったんですか?」

 僕は驚きを隠せなかった。

「待て待て、転生者とはなんだ?」

「あー、転生者って言うのは異世界からやってきた人ってこと。どの世界から来たのかはわからないけど。」

「どうやって?」

 レイリはレナに質問攻めする。

「あのー、僕はスルーですか?」

「えっと、時空の狭間みたいなところに挟まって来ちゃうみたいな?」

「何で疑問形なんだ?」

「えー、よくわかってないの。」

「僕、存在、空気、折角異世界転生して主人公ポジなのに・・・・」

 僕はだいぶ落胆していた。


「ああ、ごめんね、君、レイリがしつこいから。」

「私のせいにするな。」

「いや、完全にレイリが悪いでしょ。」

「・・・」

「まあ、どうでもいいけどさ。で、なんだっけ?」

「何で僕が転生者ってわかったんですか?」

「ああ、それは君がこの世界にない言語、服装をしていたからだよ。それに帝都に転移なんてできないからね・・・」

「帝都に転移?」

「ああ、帝都には結界が張られていて外部からの転移、内部からの転移、内部での転移ができないのだ。」

 レイリがなぜか解説する。

「結界とかまじファンタジーじゃん。」

 曹は一人で盛り上がっていた。

「ふぁんたじー?」

「空想世界みたいなのもだよ。」

 レナはレイリの疑問に答える。


「そう言えば、さっき魔法みたいなの使ってませんでした?」

「ああ、あれ?見てたんだ。」

「それは、魔法と言えば異世界転生ものの定番ですから。」

「何をどや顔で言っているのかわからない・・・」

 レイリはやはり、曹の扱いに困っているようだった。

「そうだね・・・」

 レナは何か考えているようだった。

「レナ、何を考えてるの?」

「いや、魔法って自分も使えると思っている自称主人公さんにどうやって魔法を使えないっていう事実を伝えよっかなーって、そのまま言うのもなんか酷だし。」

「・・・レナ、もう手遅れだ。」


 自称主人公さんは理解が追い付いていなかった。

「僕が、この選ばれた僕が魔法を使えない・・・・」

 どうして?これは魔法チートの流れじゃなかったのか?異世界転生したけど魔法が使えませんって洒落になんねーよ。


「あちゃー、これは面倒なことになったね。」

「面倒なことにしたのはレナだよ。」

「そもそも僕は期待するのが悪いと思うけどな。」


 曹はまだがっかりしていた。魔法が使えなくて・・・恐らく剣は無理な気がする。じゃあ、僕はただの人?異世界転生したのに普通の人として過ごすのか?そんなのは嫌だ。憧れていた異世界転生、その内実はクソゲーだったことかよ。

 でも、諦めるのはまだ早い。チート系の主人公だって昔から強かったわけじゃない。ここから頑張ればどうにかなるかもしれない。

 僕は気を取り直した。

 しかし、レナは残酷な事実をさらに曹に突きつける。

「普通の人は魔法使えるはずなんだけどね・・・」

「へ?それもうオワタやん。」

「うんうん、ってレナ違うぞ。今はそれはもう常識じゃない。」

「え?」

「大魔術時代の話はしただろう、そこから一般には魔法教育はほとんど行われていない。ただ、生活魔法程度なら誰でも使えるけどな。」


 曹は少し希望を持つ。

「まあ、魔法チートは諦めな、この世界の人間じゃないかぎり魔法は使えない。」

 一部例外を除いてとレナは言おうとするが、その言葉を飲み込む。たぶん今のままじゃ無理だ。


 魔法チートが無理なら・・・知識チートは行けるかも?

「あの、文明ってどのくらい進んでいるんですか?」

 帝都はほとんど見ていないが、あんな裏路地が存在するなら現代日本よりも文明レベルは低いはずだ。

「抽象的な質問だな・・・」

「ねえ、もしかして知識チートしようとしてる?」

「げ。」

 曹は自分が一生出すことはないと思っていた声を出す。

「僕は優しいから教えてあげるね。この世界の一次エネルギーはほとんどが魔力なんだよ。二酸化炭素もでないし、環境にやさしい。灯りとか、冷蔵庫とか、ガスまで全部魔力で動いている。唯一水道だけが魔法じゃないけど、浄水施設も下水処理場も魔力で稼働してるからね。うーん、交通は魔導列車が全国に走ってるかな。」

「魔導列車!」

 曹は目を輝かせる。魔導列車、なんかロマンがあるよな。

「魔導列車、まあ、普通はただの鉄道って言うだけど、は魔力で動かされる列車の名前さ。あとは、暦もちゃんとしてるし、農林水産業は微妙だけど・・・ああ、発達してないのは水運だね。」


 うーん、水運って船か・・・あんまり詳しくないしな。スクリュー船とかは知ってるけど、作り方は知らないし。

「帆船だしね・・・」

「レナ、水運が発達していないのは理由があるぞ。」

「ああ、そうだったね。海は魔物が多いし、あとは魔導列車が発達しすぎて水運の必要がないというのが妥当かな。」

「そうですか・・・」


「あとは・・・政治体系は帝政だよ。なんといっても帝国だからね。」

「えっ、民主制じゃないの?」

「そりゃ、封建体制だしね。」

「じゃあ、もしかして貴族とかいるんですか?」

「うん、君の目の前に。」

「えー、レナさん貴族だったんですか?」

「僕は違うよ。この綺麗な吸血鬼のお姉さんが貴族だよ。しかもかなり偉いね。」

「まじか。それに吸血鬼って・・・血吸うんですか?」

 曹はワクワクしていた。何せファンタジーの塊が目の前にいることに気付いたのだ。


「血は吸わないなぜなら私は不死身だからね。」

「それ、理由になってなくない、レイリ。」

「まあ、いいのだ。」

「そうなんですね、しかも不死身って。何年くらい生きてるんですか?」


「ねえ、君。レディーに歳を聞くのはとても失礼だとは思わないのかい?」

 曹ははっと気が付かされる。

「すみません、悪気はないんですけど・・・」

「素直だな・・・」

 レイリは少し感心していた。


「それより、君、これからどうするんだい?」

「え、とりあえず異世界来たんで冒険者にでもなろうかな。」

 曹は夢を広げる。もしかしたら、きれいな少女と同じパーティーに入ってあわよくばハーレムも夢ではない・・・

「なんか、卑猥なこと考えてなかった?」

「いえ、そんなことはありません。」

「それより、冒険者なんて職業存在しないからね。」

「へ?」

 僕は異世界というものをはき違えていたかもしれない・・・・


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