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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
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1-88.転生者2


「ねえ、レイリちょっと野暮用が出来たんだけど、抜けたらまずい?」

「今はちょっとね・・・」


 披露宴はもう終わりに差し掛かっていた。宰相のパース・アタランタが話をしていた。

「皆さま、本日は来てくれてありがとう。楽しんでいただいたなら幸いだ。なお、以上をもって披露宴を終了したいと思う。」

 拍手が巻き起こり、パーティーは終了したのだった。


「はあ、本当に疲れました・・・家に帰って寝るとしますか。」

 ネネは控室の方に向かっていた。

「何を言っているんだい?君は今日は泊っていくんだよ。何時だと思ってるんだい?」

「いやです。チャコ、速やかに車の用意を。」

「畏まりました。」

「ねえ、ちょっと、ネネ。」

 ユグノーは必死でネネを追いかけたが、ネネは着替えて、帰って行ってしまった。


 話を戻そう。

「じゃあ、僕は野暮用ができたからちょっくら行ってくる。」

 披露宴が終わった後、レナはレイリにそう一言告げて庭に出た。

「えっと、マーキングしたのは・・・あら、こんなところに。」

 レナはそう言って転移した。



「ねえ、ここで何しているのかな?」

 そう声が聞こえた。その瞬間、相手の攻撃が止んだ。

「%#$&#%$。(なんだよ、文句あんのか?)」

 大男はそう言って振り向いた。そして、彼女の姿を見て驚く。

「‘*“$”%“#@:。(おお、上玉じゃねーか、こいつが終わったらかわいがってやるよ。)」

 ぐへへと気味悪く笑う。

 僕も大男から解放された体を起こして、彼女を見る。月明かりに照らされて顔はよく見えないが、どうやら裏路地には決して似つかわしくない黒色っぽいドレスを着ているようにみえる。


「何を言っているのかな?今なら見逃してあげてもいいよ、僕は優しいからさ。」

「%$#&#“$%$#”。(あん、てめーやんのか?)」

「じゃあ交渉決裂ってことで。」

 彼女はそう言った瞬間、大男を目にも見えない速さで殴った。

「ぐっは。」

拳がお腹にめり込み。大男は吹き飛ばされる。


「#$%“#$%#”$%“。(くっそ、覚えていやがれ。)」

 大男はそう言って逃げ出そうとした。流石にさっきのパンチで実力差を悟ったようだ。

「何を言っているのかな?」

 彼女はバインドで大男を彼女の元へと引きずってきた。そして、なにやら黒い球を手のひらに浮かべていた。

 苦しいながらも、おお、ファンタジーと思ってしまう。僕は道路のわきの建物に寄り掛かって座っていた。体中が痛いし、あちこち出血しているようだった。口の中が血の味がして気持ちが悪い。


「#$%#%%“#$%”#$&“#。(お願いです、何でもしますから助けてください。)」

 言葉が理解できない僕でもわかる。大男は命乞いをしているようだった。あれ、じゃあ何で彼女の言葉はわかるんだ?

「降伏勧告はしたからさ。大人しく殺されなよ。」


 僕はきょとんとしてしまった。いや、ここは警察とかに突き出すところじゃないの?殺したら犯罪じゃない?そもそも、異世界だから警察はいないか、でも自警団の詰め所みたいなところはないの?

 ちなみに、帝国には警察は存在する。法律で町には何人以上の警察学校を卒業した警察官を配備するはずとなっている。しかし、近年の財政悪化で警察官は最小限しかいない。だから、帝都の治安は場所によっては悪化しているのだ。


 彼女は何のためらいもなく、その黒い球を大男の顔に向かって撃った。それは大男の顔に当たった瞬間に大きな黒い炎となり、大男を跡形もなく焼き払ってしまったのだ。

 幸いしたのはそれはグロい殺し方ではなかったということだ。しかし、異世界転生したばかりの僕には刺激的過ぎた。そして、それは恐怖となった。自分もそうされるかもしれないという恐怖に。


 そして、彼女は僕の方へ向かってきた。

「こ、殺さないで。」

 僕は怯えた顔をしていたのだと思う。

「ふっ、はっは。」

 彼女は腹を抱えて笑い出した。

「いや、心外だね。助けたのに殺さないでなんて。君には僕がどう映っているのかな?君の瞳には可憐なお姉さんが映ってるはずなんだけどな。」


「すみません・・・」

 とりあえず謝ってみる。

「まあ、僕は心が広いからね。許してあげる。それにサービスで君の傷も治してあげるよ。」

 彼女は何もしなかった。しかし、傷がみるみるうちになくなっていった。口の中の血もなくなったし、折れた歯や骨も元通りになっていた。そして、何より痛みがなくなった。

 僕は驚きを隠せなかった。

「あ、ありがとうございます。」

「僕はレナっていうんだけど、君の名前は?」

「えっと、鈴木曹っていいます。」

「ふーん、どう(・・)やって(・・・)来たの?」

 ふと彼女の聞き方に疑問を覚える。どこから、じゃなくてどうやって、って・・・

「えっと、わからないです。嘘みたいな話なんですけど、トラックにはねられて、死んだと思ったんですけど、気が付いたらここにいました。」

「ほうほう、それは興味深いね。」

「何であなたは僕の言ってることがわかるんですか?」

「何でだろうね。」

 僕は不満そうな顔をした。


「まあ、教えてあげてもいいんだけどね・・・そんなことより、行こうか。」

 彼女は手を差し出した。

「どこへですか?」

「僕の家だよ、君帰るところなんてないんだろう?」

「そうですけど・・・」

「嫌なんだったらいいんだよ、僕は君をここにおいて帰るだけだから。」

 いまいち僕はレナを信用できていなかった。しかし、ここで野垂れ死にをするよりはついて行った方がましだ。

 僕は彼女の手をとり、立ち上がる。そして、初めて彼女の顔を見た。

 彼女は銀髪でとても美しかった。思わず僕は見とれてしまう。こんな人を信用していなかったなんて・・・いやいや見た目に騙されてはダメだ。

 曹は異世界に来て人間不信になったようである。


 そして、二人はレナの屋敷へと向かったのだった。



「で、拾ってきたと。」

 金髪の美人がソファで腕組みをしながら困っている様子だった。それにしても異世界って美人多いよな・・・これはハーレムも夢ではないのでは、などと僕は考えていた。

「そうだけど、問題ないでしょ、僕の屋敷なんだし。」

「いやいや、ここは私の屋敷だから、テロメア家の。」

 案内された屋敷はとても豪華なものだった。どうやら僕を拾った女性は貴族らしいと思っていたが、どうも話がつかめない。

「そう言えば・・・まあいいじゃん。レイリには迷惑かけないしさ。」

 最後にはレイリという女性が折れた。

「まあいいけどさ、何者なの?どうせレナが連れて来たんだから只者ではないはずなんだけど。」

 ふん、僕はどうやら只者ではないらしい。やっぱ異世界転生してチートするやつだよね、これ。しかし、僕の期待は少し違う形で裏切られる。

「この子は異世界人だよ。」

 レナはそう言ったのだった。


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