1-87.転生者1
僕の名前は鈴木曹、普通の男子高校生だ。ある日、僕は学校から帰っているときに、公園の近くの交差点で赤信号を待っていた。周りには少し人がいたが、いつもと変わりがない日常だった。
「じゃんけんぽん。」
「くそ、おにかよ。」
「ケンちゃん鬼だー、逃げるぞー。」
小学生の遊ぶ声が聞こえてきた。うん、元気なのはいいことだ。
「あ、光ちゃん。そっちはいっちゃいけないよ。」
「ほらほら、こっちにおいで。」
光と言われた少女は前を見ずに道路の方へ走っていた。もちろん、僕は見えてはない。タッタタと足音が段々近づいてくる。ちょうど、そのとき大きなトラックがその交差点に差し掛かろうとしていた。
そして、その少女は道路に飛び出した。僕は一瞬唖然とする。そして、考える暇もなく体が動いていた。
「危ない。」
僕は荷物を捨て、その少女に向かって走り出す。トラックはもう目と鼻の先にあった。間に合え。
僕はその少女を道路のもっと向こう側へと押し出す。トラックの運転手はブレーキを踏んだ。そして、クラクションを鳴らした。だが、間に合わなかった。僕の体はトラックのボンネットに激しくあたり、体が宙を舞う。痛い。今まで経験したことがないような痛みだ。しいて言うなら、トラックにはねられたような痛みである。最後に見えたのはトラックの窓ガラスと道路に倒れている少女の姿だった。
「ん?ここはどこだ?」
曹は石畳の地面からふらふらと起き上がる。そして、右わき腹を押さえる。痛い、夢じゃないのか?辺りを見渡す。気温は寒くひんやりとしていた。そして、あたりは暗かった。
夜なのか?街灯には蛾などが集まっていた。曹がいるのは大通りの裏路地といったところだった。街灯はあるものの人気はなく、浮浪者がいることから治安はあまりよくなさそうだった。
曹はよくわからなかった。そう言えば、小学生の女の子を助けようと思ってトラックにはねられて・・・それからどうなったんだ?
トラックにはねられたことは確かなはずだ。右わき腹は今も痛い。
そして、ある考えが頭に浮かぶ。もしかしたら、僕は異世界転生というものをしたのでは?トラックに轢かれて異世界転生なんて定番中の定番じゃないか。曹は少し興奮していた。とりあえず周りの人に何か聞いてみよう。
「あのー、すみません。」
曹は近くで煙草を吸っていた帽子をかぶったおじさんに話しかけた。
「*‘$“%#”$(何か用かい?)」
煙草をくわえたおじさんはそう言った。
「え、言ってることがわからないんだけど・・・」
異世界にいったらスキルとかで言語は理解できるんじゃないの?曹は異世界を甘く見ていた。
「‘“#$!”$&’&$・(どうしたんだい?帝国語ではないな。)」
ええい、ものは試しだ。ここはどこか聞いてみよう。
「こ・こ・は・ど・こ・で・す・か?」
曹はジェスチャーで地面を指しながらそう聞いた。
「%%#$“!#”%#&“、$#”%&&、&&。(もしかして、ここはどこか聞きたいのか、ここは帝都だ、帝都。)」
しかっし、こいつの言ってることはわからん。面白うけどな。
「&&?(帝都?)」
とりあえず、相手が繰り返していた言葉を使ってみる。
「$#%“&、&&。(そうだ、帝都だ。)」
「そうか、&&というところなのか。」
ほかにも質問してみたが、おじさんが面倒くさそうにしてきたので、諦めた。
「ありがとうございます。少しわかりました。」
曹はぺこぺこと頭を下げお礼をする。
「##$#、&$‘*%$“%*”#$“$。(兄ちゃん、そんな上等な服着ていたら追剥にあうかもしれねーから、気を付けな。)」
「さようなら。」
「%#&$%#%&。(おう、またな。)」
おじさんは煙草を持った右手を振ってくれた。
ふう、しかし、言葉が通じないのは困ったもんだ。曹は路地をいくつか曲がって明るいほうへ向かって歩いていた。そうしたら、後ろから話しかける声が聞こえた。
「$#%&!%$&#‘%’$&#。(おい、そこのにーちゃん、止まりな。)」
曹が振り向くとそこには如何にもチンピラそうなムキムキの男性がいた。背は曹よりも高く、威圧感があった。
「何ですか?」
「$#%#“&#”%%&#“”#$“。(こいつ言ってることがわからねーな、まあ、殺して金と上等そうな服をもらうとするか。)」
そしていきなり、そのチンピラは曹に殴りかかってきた。曹は反応することができず、顔面にパンチを受ける。拳が顔にめり込む。そして、曹はその反動で床に倒れてしまう。
くそ痛ってえ・・・今殴られたよな?口の中が切れて血が口の中に流れていた。歯も何本か折れているようだった。
くそ、異世界はこんなにもくそなのかよ。
「$#%%“%&$(なんだ弱っちいな。)」
大男は顔を曹の顔に近づける。そして、曹の髪を握った。
なんだよ、このまま負けるのか?いやだ。そんなのは絶対に嫌だ。こんなとき主人公ならよくわからない力が湧いてきて倒せるんだよな。今の僕は主人公なはずだ。よし。
曹は自分の拳を握りしめる。そして、精一杯の力でその男の顔面を殴る。しかし、それは全く効果がなかった。
「####$#%#%%&。(はっはは、こいつよわすぎ。)」
目の前の男は曹の攻撃を受けても笑っていただけだった。他人に笑われてこんなに嫌な気持ちになったのは初めてだ。
「‘$&%#%&%#。(ほら、お返しだ。)」
激しい左のアッパーが曹の顎に直撃する。歯同士が砕け散る。そして、頭にすごい衝撃が走る。曹は辛うじて意識を保っていたが、長くはもたないことを悟っていた。
ああ、このまま僕は死ぬんだ・・・




