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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
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1-8.エレ・アンジェラ8


 夏になると私の料理の腕は上がり、朝ごはん程度のものなら作れるようになっていた。しかし、火を使うものはお母様がいるときでないと作ってはいけないと言われていた。

 ようやく私の誕生日が訪れた。お母様は毎年私の誕生日にはケーキをつくってくれる。どうやらこれが一般的なことらしい。晩御飯のあと、ケーキを食べているときに私はお母様に尋ねた。

「お母様、魔法を教えてくれませんか?」

「そういえば、そんなこと言ったけ?まあ、ちょっと早い気もするけど、教えるか。」

「どんな魔法を教えてくれるの?」

私は目をきらきらさせながら聞いた。魔法の知識はほぼないと雖も、魔法で空を飛んだり、炎を出したり、草木を育てたりできることは知っていた。物語や本などで読んだからだ。どんなかっこいい魔法を教えてもらえるのだろう?

「まずは魔法基礎ね、教科書を読んで、実践っていう感じかな。最初は魔法制御からだと思うけど。」

「そうなんだ。」

私はがっかりした。もっとかっこいい魔法を使ってみたかったからだ。

「じゃあ、明日からね。」

お母様はそう言ってお茶をすすった。


 翌日、まずは座学から始まった。

「魔法とは魔素をエネルギーに変換することなの。例えば、魔法でこの鉛筆を動かすとするとそれは私の魔素を鉛筆の運動エネルギーに変換しているってことなの。」

お母様は、鉛筆を宙に浮かせて上下左右に揺らしていた。

「でも、実は魔法を使わなくても、鉛筆の運動エネルギーを変化させることは可能なの。」

お母様はその鉛筆を手の上にのっけた。そして、それを握って壁に投げつけた。鉛筆は壁にぶつかり、芯がぽきと折れた。


「これは生物でやった通り、体の中のATPを使って、運動エネルギーに変換させているの。魔法はATPの代わりに魔素を使っているだけということ。だから、世の中の物理法則などには逆らえない。でも、人間の力だけではできないことを魔法によって成し遂げることはできる。要は発想の問題ってこと。例えば、空気中でメタンを合成して、それに点火、球状にすればそれはファイアーボールという魔法になる。」

お母様はファイアーボールというものを作って見せてくれた。炎が球状になってメラメラと燃えていた。そして近づくととても熱い。


「今どきの魔法の指導だと、演唱をしてイメージをする必要があるって教えているけど、本当は演唱なんて不要、イメージも本当は不要、理屈がわかっていればできるのよ。だから、科学は大事なの。それらの知識で大体魔法はどうにかなる。でも、理屈がわかってなくてもイメージすればできるから厄介なの。

イメージによってできる魔法はエネルギー変換効率が約5パーセント、それに対して理屈を知ってできた魔法は変換効率が約95パーセントなの。だから、理屈で魔法を理解したほうがはるかに強力で、効率的な魔法が使えるのよ。」

このように今日は座学だけで終わってしまった。しかしながら興味深いことがいろいろ学べたのでわたしはよかったなと思った。


 そしてお母様は寝る前に魔法についての昔話をしてくれた。

「昔々まだこの世界に神が存在したころ、魔王がいました。」

お母様は魔王の話をよくしてくれる。おそらく同じ人の話なのだろう。


「その魔王はすべての学問分野に精通しており、天才でした。魔王は天使と出会ったのち、ノイン大陸にあった国の一つのアソ魔国の先代魔王に次期魔王として見込まれ、十年間の魔王見習い期間を過ごします。まあ、その見習い五年目くらいで戦争始めちゃうんですけど。それは置いといて、戦争の前の五年間魔王見習いは政治のことを学びつつ、魔法の研究に励みます。

そして、魔族史上初安定的な魔道具の開発など様々な分野で研究を推し進めたのです。そして、その研究は戦争の兵器にも応用されました。魔王はそれを見越して研究していたのもあるかもしれません。魔王がした最大の発見はみんな魔法が使えるということでした。

当時は一部の人しか使えないとされていましたが、魔道具の利用や教育改革によってみんなが魔法を使えると認識が変わったのです。魔王は魔法研究と同時に科学の研究もしていたのです。そのおかげで技術が発展して人々の生活が豊かになりました。


しかし、悪い面もありました。魔法が使えるようになった人々が反乱を起こしたり、魔法や技術を悪いことに使うようになったのです。魔王はそのことを問題視しましたが、それよりも利点のほうが多かったので目をつむっていたのです。

しかし、そんな中悲劇が起こります。そうですね、たしか魔王が世界統一を成し遂げる直前でしたかね。最後まで帝国に抵抗していた国はラスフェ共和国という国でした。帝国とは違い、人間が作った国で帝国の傘下に入るのを拒絶しており、最後まで戦い抜くという姿勢をとっていました。


そして、そのラスフェ共和国は技術開発を進め、ついに最終兵器を完成させました。それが核兵器というものです。実は帝国はその核兵器を開発する技術をとっくの昔から、まあ、ノイン大陸統一した位からですかね、持っていました。その気になればいつでも作れたわけです。しかし、そうはしなかった。

それは核兵器というのが恐ろしいものだったからです。これを使って戦争すれば、この世界の半分以上の人が死に、土地は荒廃してしまう。そのことを魔王はよくわかっていました。ラスフェ共和国は帝国内の大都市、まあ言い換えれば世界中の都市に核兵器を落とす計画を立てて、実行しました。帝国に最後まで抵抗するくらいですから、ラスフェ共和国はそれくらいできる軍事力を持っていたわけです。


魔王はそのことを察知し、追撃を命じますが五十都市以上が狙われており、防ぎきれませんでした。そして、核兵器、兵器名を原子爆弾と言いますが、原子爆弾は狙われていた五十六都市のうちの四都市に落とされてしまいます。その都市は、ミヤザキ、ハコダテ、ナガ、ヒロシマです。これに対して魔王は責任を感じてこれ以上犠牲を出さないために自らラスフェ共和国に向かい滅ぼしてしまいます。

そして、世界を統一したのちに技術開発、魔法教育を中止させて、このような悲劇が起こらないようにしたのです。魔王が殺されたあともこの活動が帝国十人衆によってすすめられ、その時の本はすべて燃やされたのですが、十人衆だけがその当時の本の一部をもっており、ほかの貴族よりも魔法が使えたりしてますけど。

ちなみにアンジェラ家もその十貴族に入っているから教えているのですがね。」


お母様は話を終えた。私はお母様が、この家が貴族だったことをはじめて知った。そして、それに驚いた。お母様は眠そうにしている私に向かって、

「ごめん、ついつい話が長くなってしまったわ、お休みネネ。」

「おやすみなさい。」

お母様は電気を消したのだった。


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