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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
89/129

1-83.帝都での春1

舞台は政治の中心、帝都ダザイフです。


「まもなくダザイフ中央駅でございます。ネネ様。」

「わかってます。」

 ネネは面倒くさそうにチャコに反応する。車窓には高い建物が多く建ち並んでいた。流石帝都ですね・・・

 帝都ダザイフはノイン大陸東部に位置するノイン大陸最大の都市であり、政治の中心となっている。人口は世界二位となっており、三千万人ほどが住んでいる。ちなみに一位はエドで四千万人程度である。

 帝都は海に面した大きな平野に立地しており、古くから交通の要所として発展してきた。アソ魔国がノイン大陸を制した際、魔帝がこの地を首都としたのが始まりである。

 今は三月下旬であり、あらゆるところに植えられている桜は満開を迎えている。


 ネネは下車する準備を始める。キョウからダザイフまでは船と列車で約四日かかる。ネネは道中窓の外を見たりしながら過ごしていたわけではない。今後の綿密な打ち合わせをチャコやその他の重役としたりして休んでいる暇もなかったのだ。


 本当はダラダラ過ごしたかったのですがね・・・春休みは諦めたとして、夏休みはどうにかして仕事を振ってくるチャコから逃れる手はないのでしょうか・・・

 チャコはネネが学生だということもあり、チャコがアンジェラ財閥代表取締役の代理をしているが、クマ高校に入る前はネネが代表をしており、ほとんど休む暇がなかったのだ。しょっちゅう転移魔法を使ってネネはサボってはいたのだが、それは別の話である。

 しかし、代理と言っても重要な案件はネネの承認が必要である。だから、チャコはネネに手紙などを送って指示を仰いでいたりした。


 ネネはすやすやと眠るフタバを起こすのにためらっていたが、もうすぐ着くので体を揺らした。

「もう着くの・・・でちゅか?」

 やだ、寝ぼけてるフタバかわいいです・・・

「そうですよ。」

 ネネはフタバのぼさぼさになっている髪を手櫛で整えながら答えた。フタバはまだ眠たいのか大人しく座っている。

 フタバは対抗試合以来、言葉を話すようになった。相変わらず、魔力量が少ない人には見えないし、声も聞こえないらしい。ネネとしては目立たなくていいと思っている。ソフィアのメンバーは魔力量が増加したのか全員フタバが見えるようになっていた。

 でも不思議ですよね・・・可愛いからいいんですけど。


 ネネはフタバを連れ、右手にトランクを持ってダザイフ中央駅に降り立つ。ダザイフ中央駅はクマ中央駅のようにターミナル駅ではない。一階にホームがあり、二階以上に改札やお土産屋さん飲食店などがあった。

「ネネ様、こちらです。」

 広くて迷いそうと思っているネネをチャコが誘導する。

「ああ。」

 ネネは素っ気ない返事をしてついて行く。そのまま、車へと案内され、ネネは無事にダザイフのアンジェラ家の屋敷にたどり着いたのだった。ネネがアンジェラ財閥の代表としてどこかへ行くときは必ず、護衛が十人くらいついてくる。全員ネネの部下だ。ネネは何度も護衛はいらないと言ったのだが、

「ネネ様に何かあれば困りますので。」

とチャコが絶対に譲らない。

「少しは当主としての自覚を持ってください。」

とも怒られたりする。下手したら全員かかって来ても私が勝てる気がします・・・


「お疲れのところ申し訳ございませんが、ドレスのために採寸をします。」

 ネネが屋敷に入って一息ついたころにチャコがそう言った。

「はあ、わかりました。あなたは出て行きなさいよ。」

「失礼します。」

 チャコはメイドたちを残して出て行った。ネネはメイドたちに服を脱いでもらい採寸を始める。

「ドレスに関して何かご要望はございますか?」

 メイドの一人がそう尋ねる。

「そうね・・・コルセットはなしで色はどうしましょうか・・・」

 珍しく乙女らしい姿を見せるネネだった。

「黒はいかがでしょうか?」

「そうね・・・似合うかしら?」

「恐らく。」

「じゃあ、それにするわ。」

「では、そのように伝えておきます。」


 話しているうちに採寸が終わったようだ。採寸結果をネネはチラ見した。やはり、バストはあまり変わっていないわね・・・

 別にネネは貧乳なわけではないが、イオやサヤカのように大きいわけでもなかった。少しあこがれはあるのだ。でも、重そうですし体重増えそうですし・・・などと言い訳をした。


 ネネはまた服を着せられた。

「明後日の披露宴には間に合いますので安心してください。」

 仕立て屋の人はやる気満々のようだった。


 その日はそのまま、夕飯を近くの高級レストランで食べて、お風呂に入ってベッドに入ったのだった。


「フタバ、起きてる?」

「ご主人様?」

 フタバとネネは同じベッドで寝ていた。もちろん、学校にいたころも一緒に寝ていた。

「私、どうなっちゃうのかな?」

 純粋な疑問だった。ネネは怖かった、これから自分がしていくこと、狂っていく世界。そして、何よりすでに狂い始めている自分が怖かった。ネネはフタバをぎゅっと抱きしめる。フタバの温もりがネネに伝わる。フタバは暗い部屋の中で少し光っていた。

「ご主人様は・・・ご主人様でちゅ。」

 フタバは小さな腕でネネを抱きしめる。

「これじゃどっちがご主人様かわからないですね・・・」

「大丈夫でちゅか?」

「うん、フタバがいる限り私は狂わないよ。大好きだよ。」

「わたちもでちゅ・・・」

 そして、二人は眠りについたのだった。




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