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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
88/129

1-82.対抗試合18

 ヘイドは覚悟をしていた。体に走る激痛を、そして、自分自身の敗北を。しかし、一向に攻撃はこない。そして、自分の前に気配を感じた。

「やっほー、お待たせ。」

 イオの声が聞こえた。イオの声は何かと安心させられるが今まで以上に安心させられたことはないかもしれない。

 ヘイドは目を開けた。そこには小さなショートヘアの少女の大きな背中があった。

「カナ・・・」

 カナは普段小動物のようにかわいいですが、戦いになるととても頼もしい見方ですよ、とネネが言っていたのを思い出した。未だにネネとカナの関係性がわからない。

 カナはどや顔をでヘイドをチャチャの魔法から守った。

『ふん、この我が助けに来てやったぞ、光栄に思え。』

「私が来てからもう安心ってカナちゃんが言ってるよ。」

『うるさいな小娘。』

「カナちゃんがうるさいな小娘っていう顔してるよ。」

 なぜかイオがカナの思っていることを代弁しているようだった。しかも、何だか本当に思っていそうだ・・・

 カナは何でわかるのと言いたげな顔をして、チャチャと対面した。


「あれ、どうして入って来れたの?結界があったはずなんだけど・・・」

「結界なんてなかったよー、今もないし。」

「あのブラックホールとやらの魔法で吹き飛んだようじゃのう。」

 チャチャはそう言うが実は嘘である。あのブラックホール、維持していたのはチャチャの結界の魔力であった。結界がなければ、ヘイドのコントロールがなくなってすぐに消滅していたはずである。それにチャチャの魔力が大幅に奪われてしまった。もう一度結界を展開することは可能であるが、また同じ手を使われると大いに困る。だから結界を張るのをやめたのだ。


「まあ、そんなことはどうでもよい。お主らを潰すだけじゃ。」

 スミレはライトレイを放つ。それはイオに命中するが防御結界により防がれる。

 カナは無言でヘイドを守りながら、水刃を何発か撃ち込む。しかし、チャチャはそれを素早くかわし、すぐさま次の攻撃に移る。


「ライトニードル。」

 チャチャの周りに無数の光の直線の刃が現れる。そして、それらはチャチャの号令によってイオに向かう。イオは回避を試みるが、数が多いので無理だった。

 無数の光の刃がイオに襲い掛かる。そして、イオの防御結界の耐久力が段々削られていく。最終的にイオは光の刃に突き刺され、ハリネズミのようになった。

「ごめ・・・ん、カナちゃん・・・」

 そう言ってイオは気絶した。


 カナは無言で肯定した。

「さて、お主ら二人だけじゃのう。」


 カナは座り込んでしまっているヘイドの手を取って体を引き起こす。ヘイドは自分をとても情けなく思う。そして、再度強くならなければと確信する。

『まだいけるのか?』

 カナはテレパシーで問いかけるがヘイドには聞こえない。だが、気持ちというものは案外伝わるものらしい。

「あと一発なら魔法を使えます。」

『よろしい。』

 カナは息を吸った。それが攻撃の合図だった。


「暗黒球。」

 ヘイドは最後の力を使って暗黒球をチャチャに向かって放つ。そして、カナは水刃をあらゆる方向から放つ。

 これはいくらチャチャでも回避不可能だった。そして、二人の思惑通り攻撃は命中した。だが、そのすぐ後にチャチャから爆発魔法が二人の前で炸裂した。

 二人は防御結界を展開しているものの、その威力によって二人は吹き飛ぶ。


 ヘイドはチャチャから十数メートル離れたところで倒れていた。そして、顔を上げる。カナもヘイドの近くに倒れていた。

 どうやらチャチャも少なからずダメージを受けたらしい。服はボロボロになっていて、いくつか傷口から血がにじみ出ているところがある。これはヘイドとカナにも言えることではあるが。


「ふん、わしをここまで手こずらせるとはのう・・・もう、終わりしてやろう。」


 ヘイドはもう指一本動かす気力もない。しかし、カナはまだボロボロの体を起こして、立ち向かおうとしていた。

「あれを食らってまだ立てるとは・・・」

 だが、チャチャは容赦するつもりはない。チャチャはライトニードルの準備をする。無数の光の刃がチャチャの周りに現れる。

 そして、チャチャが止めを刺そうとしたその瞬間・・・盆地にテレサ校長の声が響き渡る。


「勝者、クマ高校チームや。」

 会場が歓声で溢れる。

「何でじゃ・・・もしや・・・」

 チャチャは天守閣の方に振り向く。


「言ったじゃないですか、私の得意魔法は空間魔法だって。」

 ネネは天守閣の頂上で笑っていたのだった。



「クマ高校総合優勝と城取合戦優勝を祝して乾杯。」

 ネネがグラスを上げる。ちなみに、今年の総合優勝はクマ高校だった。箒レース、魔術大会、剣術大会の成績は両校ともあまり大差はなく、城取合戦を制したクマ高校が優勝したのだ。

「かんぱーい。」

 それぞれが、乾杯する。ネネたちは城取合戦の打ち上げに来ていた。ちなみに、イオとマコトはお留守番だ。マコトは動けないのだが、イオはマコトの看病をするの一点張りだった。困ったものですね・・・マコトは喜んでいそうですけど。

「私もネネ様の活躍見たかったです・・・」

 イオがグーで軽くネネを叩く。

「理不尽です。それに私は最後に転移魔法で天守閣の頂上に転移して、魔石に触っただけですよ。」

「それ、打ち合わせになかったよね・・・」

 ヘイドがネネをじとりとみる。

「俺だって聞いてないぞ。」

「班長は秘密主義だな。」

「あなたは黙っていてください。」

 相変わらずカイに厳しいネネだった。

『我も聞いていないぞ。』

 テレパシーでカナが参戦する。

「ほらカナだって思ってるよな?」

 ヘイドの問いかけにうんうんとカナが頷く。」


「最初から私の計画はチャチャ以外を全滅させて、チャチャの結界を解除させて転移するというものでした。」

「おお、ついに班長がげろったそ。」

 なぜかカイが興奮していた。

「私が伝えた作戦はヘイドとスミレを城内に侵入させ、他は囮として、敵を引き寄せる。そして、見事に撃破が出来たらヘイドたちの補助に回れというものでした。

 今回の城取合戦で一番厄介なのはチャチャというのも伝えましたよね。もしも、スミレとヘイドの奇襲班がなく、外部の起動戦力が破れたら、私は籠城するしかありません。そこで、私はチャチャを引き付けているうちに他の人を排除し、私が向かえばいいのだと。ですが、厄介なのは結界でした。そこで、スミレとヘイドが結界を破壊するように仕向けたのです。」


「ネネ様、でも私たちの任務は結界内に侵入して魔石に触れろでしたよ?」

「そうです、ヘイドの闇魔法があれば結界内に入るのは余裕だと思いましたが、結界内でチャチャに気付かれず魔石に触れるのは不可能です。

 そこで、私はヘイドとスミレに賭けました。正直、カナとイオの健闘は想定外で、私は三人程度城で相手をしないといけないと思っていました。しかし、来たのは二人、みんなのおかげです。

 ヘイドは強くなってきているようですし、スミレも成長しています。この二人ならチャチャの結界を破ることができるのではと思いました。最悪できなくてもチャチャの魔力を削ることはできます。あわよくば、倒してくれるかもなんて思ってもいましたけどね・・・

 そして、私の読み通り、チャチャの結界がなくなりました。その頃私は城で戦闘中でしたからいけませんでしたが、結界が再展開される様子もなかったので、城での敵を倒して、天守閣まで転移して魔石に触れたわけです。」


「ネネ様、すごい・・・」

「でもなんで教えてくれなかったんだ?」

「それはヘイドとスミレが結界の破壊を優先するとチャチャに私の作戦が露呈するかもしれなかったからでし。敵をだますならまず味方からと言いますし。」

「そうだけどさ、もうちょっと俺たちを信用してくれてもいいんじゃねーか?」

「はい・・・今回は敵がてきでしたから・・・すみません。」


 その場の空気が一変した。

「あの班長が・・・謝罪だと。」

 カイは天地がひっくり返ったような顔をしていた。

「ネネ様が・・・成長しましたね、しくしく。」

 スミレは子供の成長を喜ぶ母親のようであった。

「ネネが・・・まさか・・・」

 ヘイドでさえ信じられないようだった。

『たまには素直になれるのであるな。』


「え、私は一体何だと思われていたの?」

 ネネはみんなの反応が予想外過ぎて逆に驚いていた。


「ネネ様の成長を祝ってかんぱーい。」

 スミレがガラスを上げる。それにつられてみんなも、

「かんぱーい。」

 と叫ぶ。


 そして、その夜はみんなたくさん食べたり飲んだりして楽しんだのだった。


やっと対抗試合終わりました。いや、長かった。こんなに書くつもりはなかったんですがね・・・

いつも読んでくださりありがとうございます。

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