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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
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1-81.対抗試合17


 痛い・・・全身に痛みが走る。小さいころ川に流されて滝の上から真っ逆さまに落ちた時以来の激痛だった。そう言えば、あの時はよく生きてたなと言われたものだな・・・スミレは目を開ける。スミレは地べたに仰向けになっているようだった。スミレは顔を上げる。しかし、そこから体が動かない。

「ほう、あれでもまだ気絶しおらんのか。お主は寝ておれ。」

「何で・・・」

 スミレは最後の力を振り絞って声を発した。

「わしがお主らの思惑が読めんわけがなかろう。」

 チャチャの声が聞こえて、スミレの意識は絶えたのだった。


 ヘイドはブラックホールを彼の上に発動させていた。そして、スミレが脱落したことにショックを受けていた。

「さて、お主の方も終わらせるとしよう・・・」

 チャチャはヘイドに向かって水刃を撃ち込んだ。それは空中を駆け抜け、ヘイドに飛んでいくはずだった。しかし、ヘイドに近づくと軌道がそれ、ブラックホールに飲み込まれてしまった。そして、ブラックホールはその禍々しい黒色の光を放ちながら少しづつ大きくなっていた。


「魔力吸収量が半端ないのう・・・あの奈落というものの劣化版か。」

 チャチャはそう判断した。魔法大会決勝でネネが最後の最後に使った奈落という魔法はすべての光、エネルギー、魔法を飲み込んでしまうというものだった。ヘイドが使っているものと同系統のものである。しかし、ヘイドは魔力制御ができていない、というよりネネの魔力制御が完璧であるために全く違うものになっている。


「ネネの魔法の劣化版・・・」

 似てるけど、これをネネが使えるはずがないし・・・でも、ネネだったら有り得るか。ヘイドは妙に納得してしまっていた。暗黒球も使えていたしたぶんそうだな。


 チャチャは攻めあぐねていた。困ったのう・・・対処方法が思いつかん、とりあえず闇魔法には光魔法というし、破壊の魔法を使うか。いや、あの時はわしは我を忘れておったが、ネネではなかったら死んでおったわい。運がいいというかなんというか。使うべきではないのう。他の光魔法を使うとするか・・・


「ライトレイ。」

 チャチャはその魔法をヘイドに向けてはなった。この魔法は破壊の魔法の超劣化版であるが、威力はそこそこある。強い光を放つ光線がヘイドの上にある、ブラックホールに向かっていく。しかし、ライトレイはブラックホールに吸収されていった。


「案の定無理じゃな・・・」


 一方でヘイドは焦っていた。実はこのブラックホール、ヘイドは成功したことがない。ダメ元で使った大技だった。もちろんさっきまでは魔力制御ができていた。だが、ライトレイの魔力が吸収された瞬間に魔力制御が覚束なくなった。許容魔力量をオーバーしたのである。


 仕方がない、このまま空中に放り出すしかない・・・だが、これは有利な状況だった。だから、ヘイドはブラックホールを放り出したいという気持ちとこのまま優勢を維持したいという気持ちが葛藤していた。


 しかし、もう限界に達していた。次のチャチャの攻撃で完全に暴走してしまう。そうなるともはや戦いがどうとかいう問題ではなくなってしまう。


 ヘイドは断腸の思いでブラックホールを手放したのだった。そして、それはヘイドの魔力制御下でなくなった瞬間に霧散するはずだった。魔力供給がなければ、どんな魔法でも無くなる。もちろん、遠距離攻撃の魔法は魔力を乗せることで攻撃となる。

 だが、ブラックホールは魔力消費が激しく、いくら魔力が乗せられていてもすぐに消滅するはずなのだ。

「まさか、他の魔力供給源が・・・」

「お主、これは意図しておるのか?」

 チャチャがヘイドの様子を見てすかさず問う。

「いや、消えるはずなんだが・・・」

「ここまじゃとやばいのう。こいつはいつか暴発するぞ。」

「・・・」

 魔法はチャチャの方へ向かっていた。そこまで速くはないが、ただ確実に進んでいた。

「仕方がないのう、わしが消してやろう。わしの方へ向かってきておることだしな。」


 チャチャの目が本気なった。

「破壊の魔法。」

 チャチャは魔法を制御しながら、ブラックホールが消えるであろうくらいの威力に調整した。そして、簡易版ということもあり、展開速度はネネの時と比べて短くなっていた。

 そして、太い光の柱がチャチャから発せられた。その光は真っすぐにブラックホールへと向かった。

 そして、二つの魔法は衝突した。光魔法と闇魔法がぶつかり合ったのだった。そして、その威力は光魔法のほうが勝っていたようだった。ブラックホールは跡形もなく消し飛び、あたりには爆風が吹き荒れた。そして、破壊の魔法は結界すらも打ち破り、空の彼方へと飛んでいったのであった。


 ヘイドは爆風に耐えるために体を少しかがめていた。そして、チャチャの魔法が飛んでいくのを見送った。


「さて、わしの手をここまで煩わせたのじゃ、潔く消すとするかのう・・・」

 チャチャは問答無用でヘイドに向かってライトレイを放った。ヘイドは魔力がほとんどなく、防御結界も張っていない。

 ああ、ここまでか・・・そして、ヘイドは目を閉じたのだった。




 ネネは城に立てこもっていた。

「消えなさい。」

 オデッサの言霊の魔法によってネネが城内に施した結界が悉く破られていっている。そして、ネネが作った自動迎撃システムから発せられる魔法も同じく消されている。

 しかし、オデッサは自分に向かってくる魔法しか対処しようとしないため、ラスクは少し疲弊しているようだった。だが、ラスクは弱音を吐くことはなかった。


 結界は全部で二十枚張られていますけど・・・もう十枚破られていますね。少し困りましたがまあ、想定内です。もう一人の方は早々に排除してしまいましょう。

 ネネは天守から城内を見た。そして、ラスクに向かって暗黒弾を撃った。それは目にも止まらぬ速さでラスクに向かって行き、直撃した。ラスクはそのまま気絶してしまったのであった。


「あら、敵もなかなかやりますわね・・・それにこの結界の数、厄介ですわ。」

 オデッサは自分を守る肉壁が減ったとくらいにしか考えていないような口調だった。


 全然怖がっていないじゃないですか・・・あの人の感性は狂ってそうですね。狂人の相手ですか、まあ、したくはないですが仕事ですから仕方がないですね。

 そんな怠惰なことを思いながらネネは天守閣の最上階から飛び降りた。そして、見事に着地した。


「初めまして、ネネと申します。あなたは確かマコトに負けていた・・・えー、オなんちゃらさんですね。」

「私の名前はオデッサですわよ。しっかりと頭に刻み込みなさい。」

「わかりました、オなんちゃらさん。」

「しつこいですわね、まあ寛大な私は気にしませんけれど。それに私が魔術大会でマコトとやらに負けたのは偶然ですわ。」

 確かにマコトが勝ったのは偶然でしたけど、負けたほうがとやかく言うのは何というか憐れですね・・・

 ネネは憐みの視線をオデッサに向けて挑発した。

「ふん、あなただってチャチャに負けているのですわ。私と大差があるはずがありませんわ。」

 うん、あなたに勝ったマコトに勝ってるんですけど・・・とても突っ込める様子ではありませんね。さっさと終わらせましょう。

「そうですね。」

 ネネはにっこりと笑った。

「今すぐ倒してあげますわ。ふふふ。」

 一体この自信はどこから来るのだろうとネネは思いながら、暗黒球を撃った。それは見事にオデッサのほうに向かった。

「消えなさい。」

 その魔法によって暗黒球は消滅した。


 全く恐ろしい魔法ですね・・・


 オデッサはネネの驚いている様子に少し満足感を覚えていた。そして、彼女はとどめを刺さんとばかりに言霊の魔法を使った。

「爆ぜろ、爆ぜろ。」

 ネネは魔力の流れを感じ取り、すぐさま動くが間に合わない。ネネの真下、そして真上で爆発が起こる。そして、土埃が舞い上がる。


 ネネは防御結界によって守られていたので特に外傷はなかった。これはまずい予感がしますね、もしも防御結界を破壊されたら・・・

 その予想は現実のものとなる。

「壊れなさい。」

 オデッサの魔法によってネネの自慢の防御結界が壊される。


 どうやら方針を変えたほうがいいですね。ここは魔法大会ではないのですし。オデッサの魔法は魔法に対してのみ有効な可能性が高い。対魔法仕様なのだ。魔法大会では物理攻撃は認められていないがここは城取合戦である。もちろん、剣や素手の攻撃は認められている。


「終わりにしますか。」

「何をあなたは言っているの?終わるのはあなたの方よ。」

 しかし、ネネはその瞬間にオデッサの真後ろに転移した。そして、剣を抜いた。彼女は華麗にオデッサを剣で気絶させたのだった。


 勝ったネネは、一休みしてつぶやいた。

「最後の仕事をしますか・・・」



防御魔法、防御結界、結界魔法、結界は本質的にすべて同じです。また、回復魔法、治癒魔法も同じですが、再生魔法は違うものとして扱っています。

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