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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
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1-80.対抗試合16

『我だ、カイは脱落、こちらは三人撃破し、敵本丸へと向かう。』

『よろしく。』

 ネネはテレパシーでそう言うと眼下の敵を見下ろした。

「さて、私も仕事をするとしますか・・・」



 そのころ、キョウ高校側の天守閣にヘイドとスミレが到達していた。

「どうやら結界に覆われているみたいだね。」

「そうだな、どうやって突破しようか・・・」

 チャチャの魔法ならネネとの戦いで見た。しかし、今は結界外なのでネネが用いた手法を使って結界を破壊することはできない。さて、どうしよう・・・

「ネネ様が暗黒球の応用を使ってみたらって言ってたよ。」

「暗黒球・・・」

 それは闇魔法の一種で強い攻撃力を持ち、相手の魔力を吸収することができる技だ。結界は魔力で維持されている、だとすれば暗黒球で魔力を吸収すれば、結界が突破できるかも・・・

「ネネは結界の破壊は考えなくてもいいって言ってよな?」

「うん。」

「よし、じゃあ俺に任せろ。」

 ヘイドとスミレは近くの森から城門へと駆けた。


「ふう。」

 スミレが一息つく。

「じゃあ、行くぞ。」

 ヘイドは暗黒球の魔力吸収だけを意識した魔法を作り出した。そう簡単にはできないが、多少攻撃力を持っていても構わなかった。

 ヘイドはそれを手のひらの上でとどめて、結界の魔力を吸わせる。

「うおお。」

 予想以上の魔力が吸引されているので驚いた。しかし、結界自体は穴が空いてもすぐに補強されてしまう。

 一度ヘイドは魔力の吸収をやめた。


「どうしてやめたの?」

「すぐに結界が閉じてしまう・・・俺が一瞬で大きな穴をこじ開けるから、そのタイミングで中に入ってくれ。」

「わかった。」

「さん、にー、いち。」

 ヘイドは一気に魔力を吸収し始めた。そして、それは結界の修復能力を上回っていた。

「いまだ。」

 そう言って、スミレとヘイドは結界内に入った。そして、すぐにその穴は塞がれたのだった。


「入れたね。」

 スミレは喜んでいた。ヘイドも少し安心したが、戦いはこれからだった。

「油断はしないように。」

「わかってる。」

 二人は城門を破壊し、天守閣の方へと進んで行った。城門から天守閣までは少し距離があった。城門内は少し広い広場になっており、その先に天守閣が建っていた。


 歩いていると、天守閣の方から人が一人やってきた。

「チャチャ・・・」


 彼女はやはりネネに似ていた。似ていない部分は髪が短いのと白髪なところだけだった。ふと、ヘイドとスミレの脳裏にネネの姿が過る。先日、ネネは目の前の少女に負けたのだ。二人の憧れのネネがだ。スミレもヘイドもネネを目標としていた。彼女は何があっても凛としており、どんな場面でも全力を尽くしていた。そのネネが負けたのは二人にとってショックであった。

 ちなみに当の本人は負けちゃいました・・・程度にしか思っていないのだが、二人は知らないほうがいいだろう。そして、今は二人とも大好きなネネの敵討ちと意気込んでいたのだった。


「わしの箱庭にこうも容易く侵入されるとはな・・・少しは楽しませてくれそうじゃ。」

「かかってこい。」

 ヘイドは強気だった。しかし、突破したと言ってもここはチャチャの結界内、分は向こうにあるか・・・

 ヘイドは剣を抜いた。そして、チャチャに向かって駆け出した。確かに体が少し重いというか、動きが鈍い。

「スミレ援護を。」

「はーい。」

 スミレもやる気満々だった。


 すべてはチャチャを欺くためにヘイドは剣で本気で切りかかった。そして、剣先がチャチャに触れるであろう瞬間に暗黒球をチャチャの近くで発動させた。態勢的に両方は避けるのは無理なはずだ。

 そして、事実そうだった。チャチャは驚く様子もなく、剣は避けて魔法だけを受けた。まるでヘイドの攻撃を読み切っていたように。

そして、ヘイドが離れるとスミレはすかさず、得意の水弾を撃った。それはチャチャに向かって一直線に飛んでいった。しかし、チャチャはそれを躱した。


「どうして魔法が見破れるんだ・・・」

 ヘイドはつぶやいた。

「お主らはわかっておらんなあ、ここはわしの箱庭(・・)なのじゃ。中で起こっていること、魔力の流れ、すべてわかるのじゃ。」

「へ?」

「じゃあ、ネネ様はそんな状況下で・・・」

「そうじゃ、そしてわしの魔法が初めて破られたのじゃ。」


 改めてネネのすごさを実感する二人であったが、この状況ではそんなことを考えている暇はない。確かにネネのやった手法で結界を破壊することはできるかもしれない。しかし、何らかの対策はされそうだし、別に魔法大会みたいに勝つ必要はない。ただ、天守閣の上にある魔石を触ればいいだけのなのだ。結界の中に入れた時点で本来なら勝ったも同然なのだ。相手がチャチャではなければ。


 しかし、考えようによってはヘイドとスミレにとって有利な展開だった。城を守るのはチャチャだけだ。一人が相手している間にもう一人が魔石に触れればいい。


「スミレ。」

 ヘイドは叫んだ。そして、目を合わせた。

『俺が引き付けるから魔石に触れてこい。』

『了解。』

 と目で会話した。


「よし、じゃあ大技行かせてもらおうか・・・」

 ヘイドは必死にチャチャの注目を集めた。もちろん本気だ。ヘイドは、掌の上に魔力を圧縮した。

「ブラックホール。」

 ヘイドの手の上には大きな黒い渦が渦巻き始めた。それは空気中、そして、結界の魔力すらも吸収して段々大きくなっていった。


 スミレはチャチャの視線がブラックホールに向いている隙にそろりそろりと天守閣の方へ向かっていた。そして、天守閣の入り口に着いた。

 スミレは中に入ろうとはせず、浮遊魔法を使って天守閣の最上階を目指そうとした。スミレの体がフタバのようにふわりと浮いた。

 スミレはネネの仲間になると言った時から、ネネが使える魔法を聞いて、自分も同程度に使えるように努力していたのだった。


「別に急に覚えなくてもいいのに・・・」

「ネネ様、私はいざというときにネネ様の隣に入れないのは嫌なのです。」

 そう懇願した。

「わかりましたよ、でも決して無理はしないでくださいよ・・・」

 ネネは渋々教えてくれたのだった。内心ではこんなに私のことを想ってくれているのなんて・・・と照れていたりするのだが、顔には出さない。


 浮遊魔法もその一つだった。

 しかし、スミレが浮遊魔法を使って天守閣の最上階に達しようとした、その瞬間スミレは何者かによって突き落とされた。まだ、浮遊魔法を使い始めて日が浅いので対応しきれず、スミレはそのまま地面に墜落したのだった。




ついに八十話です。なかなか第一章が終わらないです・・・

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