1-75.対抗試合12
「う、ここは?」
「ネネ様。」
スミレはネネに抱き着いた。そして、泣き出した。
「本当に、ぐすん、心配したんですよ。」
どうやらネネは保健室にいるようだった。彼女はベッドで寝かされていた。
「大丈夫そうだな。」
サヤカはそう言った。
「ふん、俺様は心配などしていないがな。」
「カイは結構心配してましたよ。」
「おい、ケリン、言わんくてもいいだろ。」
「おっ、起きたようだな。こんな仰山囲まれて嬢ちゃんも幸せだな。」
デイヴィッド先生が姿を現した。ネネはこの人が保健室の先生だということは察した。
「そこのフタバがずっと魔力を注入していたよ。たぶん魔力はもう回復してると思う。全く、無理をするな。」
ヘイドは呆れてそう言った。
「ヘイド・・・」
「そこの坊主のいう通りだ。倒れた原因は魔力切れ、次からは無理をしないような。」
デイヴィッド先生はそう言った。
「ありがとうございます。」
「とりあえず今日一日は安静にしておけ。別にここに止まる必要はないが。」
「はい。」
ネネは体を起こした。確かに疲れていたが、動けないことはなかった。隣のフタバを抱いた。
「ありがとう、フタバ。」
「どう・・いたしまちて。」
「偉い偉い。」
ネネはフタバの頭を撫でた。フタバは嬉しそうに笑っていた。
隣のベッドには、マコトがいた。
「だらしないですね、マコト。」
「ネネがこうしたんでしょー。マコト怒ってもいいんだよ。」
イオが珍しく不貞腐れているようだった。
「イオをこんな風にするなんて、マコトは一体どんな魔法を使ったのでしょう?」
「僕にもわからないんだよね・・・」
「イオは何も変わってないもん。」
「まあ、そういう事にしておきましょうか・・・」
「あばらがいっちゃってるって。責任取ってよ、ネネ。」
「恨み言は他で言ってください。結婚でもすればいいんですか?」
「・・・いや、ネネはなあ。それに婚約してんじゃん。」
「何ですかその間は?」
「想像して無理だったから・・・」
「一方的にふらないでください、もう、何だったと思ってるんですか、私みたいな美少女滅多にいませんよ。」
「美少女は自分でそうは言わないと思うけど・・・」
ケリンがぼそりとつぶやいた。
「そうだぞ、ケリンの言うとおりだぞ。それに性格もちょっとな。」
マコトはネネをディすった。
「さりげなく悪口を言わないでください。それより、明日は出れそうなんですか?」
「うん、無理そう。」
「はあ・・・まあ、いいでしょう。ちょうどいいところに帰ってきたやつがいますからね。」
「カイね。」
「そうですよ。」
「じゃあメンバーの心配はしないでいいね。」
「ゆっくり休んでてください。」
「そうしておくよ。」
「ほら、イオ行くよ。」
「イオはここにいます。」
「今から作戦会議だから来て。」
「いーや。」
「来なさい。」
ネネは殺気を放った。それにビビったイオは思わず返事をしてしまう。
「はい。」
「班長つえーな。」
カイがぼやいていた。
「お嬢ちゃんたち大丈夫だぞ。面倒は俺がちゃんと見るからよ。」
デイヴィッド先生は別れ際にそう言った。そして、イオは仕方がなくネネに連れていかれた。
ネネたちは寮に着いた。キョウ高校はアルティ別に分かれておらず、寮は二人一部屋とクマ高校の一番最初の時に似ていた。それゆえ、一つの部屋で八人が集まれるほどの大きさではなかった。もちろん入れなくはないが八人入ったら狭苦しくなる。そのため、ネネは寮内の会議室を借りていた。
「はい、会議をはじめまーす司会進行役はこの美少女イオちゃんだよ。」
「美少女自称するんの流行ってんのか?」
サヤカが聞く。
「たぶん流行ってないと思いますよ、たぶん・・・」
「イオ、ノリノリだね。」
「まずはカイの代わりに出ることになっていて、今はマコトの代わりのカナちゃんです。」
イオは端に座っていた筆談用の紙を持っている少女を指した。カナはあらかじめ書いてあった自己紹介用の紙をめくってみんなに見せた。
「カナです。無口の魔法使いと呼ばれています。食べるのが趣味です。そして睡眠も趣味です。よろしくお願いします。」
「よろしくね。」
ケリンがあいさつした。それに続いてみんなが挨拶していく。
『ふん、この我が手伝ってやるのだ、感謝しろ人間ども。』
『聞こえてますからね。』
ネネはテレパシーでカナに話しかける。テレパシーは思っていることに魔力を乗せると人に自分の思念を送ったり他人の思念を受信したりできる便利な魔法だが、知っている人が少なく、近くではないと伝わらないという問題点があり死んだ魔法と言っても過言ではない。
『死んではないぞ。』
『はいはい、そうですね。』
ちなみにカナはかっこいいからという理由で無口だそうだ。ネネには理解しがたいが。
「ということで、最初はリーダーを決めるけどネネちゃんでいいよねー。」
満場一致だった。そもそも、最初の班長決めでもいつも間にか決まっていた気がします。
「副リーダーは誰がいいかな?マコトいないし。」
そう、マコトは副班長だった。
「じゃあ、僕やろうか?」
ヘイドは立候補した。
「んー、いいんじゃね。」
サヤカが賛成した。正直誰がなろうがあまり関係はないとみんなが思ったので全員が賛成して、副リーダーはヘイドに決まった。
「はい、じゃあー、作戦決めるよー。」
イオは地図を広げた。
「城取合戦の舞台はキョウ郊外の小さな盆地内だよー。盆地って言っても起伏があるから、大変なんだけどねー。そして、都合のいいことに盆地は壁に覆われているからその中で戦うって感じかなー。」
「ルールはどうなっているのですか?」
「ルールは単純、相手の城の中の魔石に先に触れれば勝ち、触れられれば負けってことー。あと殺したらダメと盆地内から出ちゃダメってことかなー。」
「毎年ここでやっているのですか?」
「そうらしいよー、でも先生たちが地形を少し変えたり城の位置を変えたりしてるけど。」
イオはそう答えた。
「今年の城の配置はイオたちの城がここ、敵の城がここだよー。」
そこから、イオの説明は続き、一通りの作戦は決まったのだった。




