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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
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1-7.エレ・アンジェラ7



 冬のうちに特にこれと言ったこともなく、私はスキーとスケートに明け暮れる毎日を過ごしていた。そして、昼は段々長くなっていき、雪が重くなり、しまいには雪が溶けだして、川に流れるようになった。

そう、生命がまた活動し始める春がやってきたのだ。

「もう春だねー。」

お母様は窓の外を見て、しみじみと季節の移り変わりを感じていた。私にとってはまだ五度目の春で、三歳以前の記憶はないので、実質二回目の春だ。私はお母様にとっては何度目の春なのかなと勝手に思っていたりしていた。


三か月くらい続いた銀世界はなくなって、地面の茶色が見えるようになってきた。日向には植物が芽吹き、木の枝にはつぼみが付き、葉っぱを生やす準備をしている。私とお母様も早速、畑仕事をするようになった。

「ネネ、こっちの畑も耕しておいて。」

お母様は肥料をまきながらそう言った。

「はい。」

私は鍬で畑を耕す係だ。今日で二日目だがもうすでに手に豆が出来て痛い。しかし、私は文句を言わず農作業に励んだ。私が耕すのは300m四方の土地で、そこで私とお母様、二人の一年分の食料を栽培する。植えるものは季節によってさまざまだが、この季節は夏野菜の種を植える。畑の横には、多くの果物や木の実の木がある。秋になるとブドウやなし、リンゴの実がなる。

 

そして、一日中農作業をして、やっと畑を耕し終えた。外はもう暗くなっていた。私は家に入って暖を取った。春になっても朝晩はよく冷える。お母様は晩御飯に暖かいジャガイモのスープを作ってくれた。

「そろそろ、ネネにも料理の仕方教えないとね。」

料理か、できれば自分の好きなものが何でも作れるかなと思った。

「教えてください。」

「やる気満々ね。じゃあ、明日の朝ごはんは一緒に作ろうか。」

「はい。」

「あ、でも早起きしないとだめだよ。」

私はぎくりとした。お母様は朝の五時から起きて家事などいろいろしている。それに比べて私は七時起きだ。しかも、私は朝がとても苦手でお母様に二回呼ばれてやっと起きる。果たしてそんな私が早起きなんて可能なんだろうか?お母様は私がいろいろ思い悩んでいることを察したらしい。

「ネネは起きるの六時で大丈夫だよ。」

「六時か。」

私は思わずぼそりと言った。お母様はそれを聞き逃しはしなかった。

「あら、それも無理かしら。」

「できなくはないけど・・・」

「じゃあ、大丈夫ね。」

「あ、」

どうやら六時に起きることになってしまったらしい。私は明日早く起きれるように早めに寝たのだった。


「ほら、起きなさい。」声が聞こえる。

「ん?」

私はまだ寝ていたかった。しかし、そうもいかないらしい。私の体は誰かにゆすられている。

「もうちょっと・・・」

「こら、起きなさい。」

お母様は鋭い声で言った。私はびっくりした。しかし、まだ私は布団から出るつもりはさらさらなかった。この気持ちの良い時間が一生続けばいいのに、幾度私がそう思ったことか。 

次の瞬間、私の体が一瞬にして冷え、強制的に起こされたのだった。

「寒い。」

そう、お母様が布団を剥いだのだ。この瞬間のお母様が私は一番嫌いだ。いつもは優しいのに何で起きるときだけは・・・私はそう思いながら起き上がった。


「ほら、朝ごはん作るわよ。」

お母様はそう言って、私に上着を着せてくれた。

「朝さえ強ければいいのにね。」

 私はトイレに行ってから、台所に向かった。着いたらお母様がもう準備をしていた。私は全く料理をしたことがなかったので、基本的なことから教えられた。

「まずは包丁の使い方、こういう風にもって、まな板の上で食材を切るの。」

お母様は見せながら説明してくれた。

「そして、こんな風に手を猫の手のようにして食材を押さえるの、こうすれば自分の指を切らなくなるから。でも、ネネは猫って見たことないか。」

私は猫を見たことがなかったので身振り手振りでお母様の真似をした。最初に切るものは豆腐だった。朝の味噌汁に入れるものだ。豆腐はとても柔らかく切りやすかった。こうして、私は食材を切れるようになった。そして毎日少しずつお母様に料理を教わることになった。


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