1-73.対抗試合10
更新が遅れました。コロナのワクチンの副反応で熱がでてしまい・・・
困ったことになりましたね・・・地の利を制するものが戦いを制すると言いますし、完全に相手のフィールドです。どうしたものか。
ネネは特にこれというものは思いつかなかったので、とりあえず戦ってみることにした。彼女は手始めに暗黒球を作り、チャチャを攻撃した。チャチャは避けることなく、攻撃を受けたが、無傷であった。
少し勢いが落ちている気がします・・・
「ふん、こんなものか?多少弱くなっているとは言え、わしを舐めておるのか?」
「様子見というやつですよ。」
何事においても情報は大事であることはネネ、チャチャも理解していた。
少し煽ってみたが、挑発に乗ってくるほど馬鹿ではないようじゃな。チャチャはネネを十二分に警戒していた。先ほどの試合で見せた柔軟性と逆境への強さ。それは順風満帆の人生を送ってきたチャチャには無縁であった。しかし、チャチャは驕り高ぶることが身を亡ぼすことは散々言い聞かされていた。一応謙虚に生きてきていたつもりであった。
「わしも、攻撃しようとするかのう。」
チャチャは水魔法の水刃を二三用意し、ネネを攻撃した。本来水魔法は攻撃としては弱いものである。しかし、圧力、初速、形状などを操作することで驚異的な魔法になる。水刃はその最たる例だった。
ネネは素早い動きで水刃を躱したが、体の動きが想定より鈍く、二つ目、三つ目の水刃除けそびれてしまった。
あら、避けられませんでしたね。この程度の魔法なら防御結界でどうにかなるでしょう。そう高をくくっていたが、水刃が防御結界に衝突するや否や、防御結界が破られた。
やばい・・・
そう思った時にはもう手遅れだった。右の太ももと左の腕に痛みが走る。ふと見ると、太ももの方はかすり傷程度であったが、腕の方は深く切られてしまい、血が出ていた。
「ネネ様―。」
スミレが観客席で顔面蒼白になっていた。
「ネネだから大丈夫だよ。」
ヘイドはスミレをなだめた。
「そうだぞ、なんたってネネだからな。」
サヤカは根拠もないのに大層なことを言っていた。
「そう言えば、イオは?」
ケリンがイオがいないことに気が付く。
「マコトのお見舞いに行くって言ってたぞ。」
「道理で静かなわけだぜ・・・」
カイは試合が始まる前に買ってきたたこ焼きを食べながらそう言った。
「イオは元気だからね。」
「そうだな・・・」
観客は呑気だったが、舞台上のネネは大変なことになっていた。
ネネは激しい痛みを精神力で殺し、自らに再生魔法をかけた。この魔法は生物体でも熟知していれば、利用は可能だった。見る見るうちに、ネネの腕は治り、残ったのはまだ全然乾いていない血と切れて、血が染みている制服だけであった。
「ほう、回復魔法か・・・よく使えておるのう。」
チャチャは相変わらず挑発する。最も、いつもとあまり変わらない気がするが。
「これは完全に不利ですね・・・」
ネネは覚悟を決めた。本来使いたくはなかったが、今回は使わざるを得ないですね・・・
そう思い、ネネは転移した。
ネネは転移でチャチャの背後に回り込み、暗黒球を放った。至近弾であったため見事に命中したが、威力が低下しており、ほとんどダメージはないようだった。
それでも、多少の戦果はあった。
「ほう、転移魔法かなかなかおもろしろいのう・・・」
ネネの攻撃がなんとでもないようにチャチャは言った。転移魔法、だいぶ厄介じゃな。これを続けられると困るのう・・・
一方でネネも、少しのダメージはあったはずです。このまま、一撃離脱を繰り返せばどうにかなりそうですが、そんな生易しい相手ではないですよね・・・
となれば、やはりこの結界をどうにかしないといけません。この結界のせいで魔法の運用効率が落ちている、ならばこの結界はチャチャだけではなく私の魔力も使用しているのかもしれません。
ここは賭けですが、一度魔力発散をやめて防御に徹してみましょう。
「この結界はなかなか面白いですね。」
「そうじゃろ、なんたってわしが発明した魔法だからのう。弱点は何一つない。」
チャチャは大見得を切ってそう言ったが弱点はないわけではない。結界の規模にもよるがこの結界の魔力消費は激しいものとなっている。しかし、これを空気中の魔力や内部の人間の魔力を使用することで賄っている。魔力供給が停止すれば、結界の維持は困難である。それでも、チャチャの魔力量は莫大であるためほとんど破られるはずもなく故に弱点はない。
しかも、チャチャの魔力量は限界値の九割は残されていた。それに対して、マコトとの試合などで消耗したネネは五割くらいと不利であったし、限界値もチャチャのほうが多い。
ネネは防御結界を多重に張り、大気中への魔力の流出をほとんどなくした。
チャチャは少なからず驚いた。もしかしたら、ネネが結界について何か察しただろうことははっきりした。まさか、魔力を内側にため込むとはやりよるなあ。しかし、それでは攻撃が出来ん。お手並み拝見といかせてもらうかのう。
「ええい、つまらん。もう終わらせてしまうか。」
「そうですか・・・」
ネネはチャチャの総攻撃を覚悟した。少し顔がこわばっている。
「何か雰囲気が変わったな。」
「ネネ様が真面目な目をしている・・・」
スミレはその姿を脳裏に焼き付けているようだった。
「しかし、変だよな。ネネの魔法が弱く見えるぜ。」
「それはあの結界のせいかも。」
ヘイドは言った。最初チャチャが結界を張った時から何か違和感があった。そして、それがネネの態度を見ていて確信に変わった。あの結界は中のネネの魔力を食っていることを。
「ネネ様、何だか本当に調子がよくないようですね・・・」
「そりゃ、あんなにマコトの戦いで消耗していたんだぜ。」
「珍しくカイがまともなこと言ってる・・・」
「あ?ケリン、俺はいつだってまともだぜ。」
「・・・」
誰も賛成しようとはしなかった。
舞台上では、チャチャが魔法の準備をしていた。それはさっき使った水魔法の水刃だ。しかし、今回は規模が違う。無数の水刃がネネに向かって打ちだされる。
今回は黙って受けるつもりなんで毛頭もないネネであった。自分自身の前にセットしてあった爆発魔法を水刃がそこに到達する瞬間に発動させて自分は転移する。そして、爆発魔法でチャチャにネネが転移するところを見せないようにした。
そしてネネはチャチャの真上に転移して攻撃を試みた。その時だった。
「ほう、わしの上に転移とはなかなかやるのう・・」
そして、水刃がネネに向かって飛んできたのであった・・・
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