1-72.対抗試合9
その後、マコトは担架で保健室に運ばれて行った。
「おお、派手にやったな。」
スキンヘッドをキラリとさせながら、デイヴィッド先生はマコトの様子を観察した。
「誰ですか?」
「ああ、俺はな、デイヴィッドって言うんだ。
マコトは保健室にはお世話になったことはなかったので、デイヴィッド先生のことは知らなったのだ。
「これは、あばらが何本かいっちょっとる。固定して最低一週間は安静にしないとな。」
「えっ、じゃあ、城取合戦は?」
「出場は無理だな。」
「・・・はあ。」
「そんながっかりするな、坊主。いい試合だったんだからよ。」
「ありがとうございます。」
「それにしても、今年はレベルが高いよな。そのせいで俺も少しは忙しいだけどな。」
デイヴィッド先生は笑った。例年はここまでけが人が多いことはないらしい。
「マコトー、だいじょーぶ?」
イオがお見舞いに来てくれた。彼女はベッドの横の椅子に座った。
「大丈夫じゃないけど、無事だよ。」
「みんな誘ったんだけどね、ネネちゃんの試合が始まっちゃったから・・・」
「来てくれてありがとう。」
「流石にさー、誰か行かないと可哀想だなーって、イオが来てあげたの。どう?城取合戦は出れそう?」
「いや、あばら骨が折れたから出場は無理だって。」
「ふーん、みんなに言っておくねー。それより、試合惜しかったねー。ネネちゃんも負けそうだったって言ってたよー。」
「うん・・・」
「マコト、珍しく落ち込んでるねー。」
「そりゃ、落ち込むよ・・・」
「今なら誰もいないから、甘えてもいいんだよー。」
イオは少し笑った。デイヴィッド先生は空気を読んだ。
「俺はちょっと出て行くからな。」
「すみませーん。」
もし、出て行かなかったらデイヴィッド先生はイオに無理矢理出て行かされていただろう。デイヴィッド先生はいち早くイオの殺気を感じて出て行ったのだった。
「今の女子高校生はおっかねーな。」
廊下に出たデイヴィッド先生は一人感慨にふけっていた。
もちろん、マコトは殺気などは感じていない。
「別に気を使わなくても・・・」
「そう言うわけじゃない。」
「え?」
「そう言うわけじゃないって言ったの。」
マコトは少しあっけにとられていた。しかし、甘えたい気分ではあった。
「じゃあ、少しだけ・・・」
マコトは体を少し楽にした。イオはマコトにお子を近づけた。
「よし、よし。頑張ったね。」
イオはマコトの頭を撫でた。マコトとイオは顔色を決して変えることはなかったが、二人の内心はすごいことになっていた・・・らしい。
そして、イオは少し大胆な行動をとった。
「はい。」
イオはマコトを抱擁した。マコトはなんだか安心はしたが、すべてをイオにゆだねることはできなかった。
「まだ硬いなー、いつかイオがその防御を破ってみせるよー。」
「うん。」
マコトは不確かな返事しかできなかった。
「さあ、最終試合や。うちの天才チャチャちゃんとネネやで。うちとしてはチャチャちゃんが勝ってほしいんやけどな。」
「では、試合開始じゃ。」
ネネとチャチャはお互いを見つめあっていた。かくして二人の密かな恋は始まった。いや、何言ってるんですか始まるわけがない。ネネはその謎の妄想を切り捨てた。
「久しぶりに楽しめそうじゃのう。」
チャチャは相変わらず、じじいの口調だった。そして、顔はネネに似ていた。違う点と言えば、髪が白か黒か、ショートかロングかくらいである。
「お手柔らかにお願いします。」
「それは無理なお願いじゃ、負けたらおじいに怒られるしな。わしの面目も丸つぶれじゃ。」
「面目がかかってるかどうかは知りませんが。」
「負けたら、負け犬呼ばわりされるであろう。それに実践だったら死を意味するのじゃ。」
「確かにそうですけど。」
「お主の考えはどうでもよい。わしも最初から本気で行かせてもらおう・・・」
チャチャは両手を広げた。そして、叫んだ。
「いでよ、わしの箱庭。」
その瞬間、舞台全部が特殊な結界に覆われた。そして、地面の石畳が消えて芝生が生えだした。空気感もさっきとは大違いだった。
「わしの箱庭の魔法はある種の結界魔法じゃ。しかも大型のな。わしを倒さない限りこの魔法は消えることはない。」
こうして、ネネは最初から不利な状況に立たされたのだった。
ちなみに許しやすい順にキャラを並べると、ヘイド(チョロい)>カイ(少しチョロい)>ケリン(普通)>スミレ(人見知り)>マコト(ガードが少し硬い、ベニヤくらい)>ネネ(ブロック塀並み)>サヤカ(核シェルター並み、ただしなぜかネネには甘い) です。ただの裏設定です。




