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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
76/129

1-71.対抗試合8

ネネ対マコトです。


「いや、本当に戦いたくないよ。」

 マコトは舞台上でそう言った。

「私もですよ。運が悪いというかなんというか。」

「じゃあ行くよ。」

「はい・・・」

 ネネはだいぶ乗り気ではなかったが、負ける気などさらさらない。マコトもそうみたいですね。ここは班長としての威厳を見せないといけませんね。わざと負けてくれるなんてないですよね・・・

 ネネはため息をつき、臨戦態勢に入った。


「ネネ様―、頑張ってください。」

 スミレはネネを応援するようだった。

「ネネ、頑張れよ。」

「マコト、班長をぶっ潰してやれ。」

 カイはマコトを応援していた。


 最初に仕掛けたのはネネだった。暗黒球を手始めにマコトに撃ってみたが、防御結界によってすんなりと防がれてしまった。

 報復と言わんばかりにマコトも氷の刃をいくつか撃ってきたが、ネネはそれを防いだ。

「硬いですね。」

「ネネもな・・・」


 ネネは魔法の強度そして数を上げて、マコトに撃ち込んだ。マコトは防御魔法で防御して、一部は回避した。マコトも大きな氷結弾を生成して、ネネに放った。しかし、ネネはそれを同程度の魔力量の暗黒弾で相殺した。相殺する瞬間、二つの魔法はお互いに混じりあいパッと光って消滅した。

 このような激しい攻防が五分以上続いた。

「なかなか、勝敗が決まりませんね。」

「そりゃ、ネネとマコトは同じレベルくらいだからだろ。」

 サヤカは投げやりにそう言った。

「レベルが高い・・・」

 ケリンはヘイドにぼそっと言った。

「そうだな・・・」

 二人は次元の違う戦いに圧倒されていた。


「おっと、両者手を止めたな。これまでは五分五分やからなんか進展してほしいんやけどな。」

「テレサ校長、あまり圧をかけないでやってくれ。」

 コバルト校長はテレサ校長を諫めた。


 このまま持久戦となると魔力量の多いマコトが遥かに有利になりますね。ここは早めに勝敗を決していたほうが得策でしょう。さてどうしたものですか・・・

 マコトも同じことを考えていた。となると、ネネは早めに大技を使ってくる可能性が高いな。防御結界を一段階強化しておくか。持久戦に持ち込んだ方が勝機がある。


 二人の方針は奇しくも真逆になってネネに不利となってしまった。

「仕方がありません、ここで決着をつけるとしますか・・・」

 ネネはわざとそう言った。そして、魔力を圧縮した暗黒弾を作って宙に浮かせた。それは、禍々しい黒紫色の球であった。


 あれは、やばいな・・・でも果たしてネネがこんな単純攻撃で決めに来るかという疑問が頭を過った。答えは否だ。ネネの性格上暗黒弾はおとりだ。

 では、本命は?他に魔力の気配は?

 そこでマコトはネネの秀逸さに気が付く。マコトの魔力への集中はすべて暗黒弾に集められていた。彼の周辺の微細さ魔力のうごめきを感じられないくらいには。マコトはネネの事前にセットしてある魔法に包囲されていた。個々の威力は小さそうだが、大量に浴びてしまうと防御結界が破られるだろう。


 マコトがその包囲陣から脱出することはほとんど不可能であった。

「やってくれたね。」

「なんの話ですか?」

 ネネはそう言って暗黒弾をマコトに向かって撃った。マコトが避けられるくらいの速さで。

 追い詰められていたマコトは防御結界を最大まで強化し、暗黒弾を相殺させるために氷結弾をそれに向かって撃った。

 暗黒弾はマコトの放った氷結弾と激突した。しかし、込められた魔力量の違いによって暗黒弾は氷結弾を飲み込み、少し勢いは衰えたが真っすぐにマコトに向かっている。

「やばい。」

 マコトができることは、暗黒弾による被害を最小限に抑えて、暗黒弾がマコトの防御魔法によって相殺される瞬間の魔力の乱れを利用し、包囲陣から脱出することだった。

 まあ、無理げーに等しいがマコトには可能性があった。


 そして、ついに暗黒弾がマコトに到達した。マコトは防御結界で防ぐが、外側からパリンパリンと割れて行く。そして、幾重にも重なっていた結界のほとんどを破壊され漸く相殺することができた。それは一瞬のことであり、創生された瞬間彼は包囲陣の脱出を試みた。もちろん、すべての魔法の起動を防ぐことはできなかったが、魔力の乱れによって、ネネが事前に設置していた爆発魔法の数そして威力は小さくなっていた。

 いくつかの爆発魔法を浴びながらマコトは必死に脱出をした。防御結界が持たないか心配だったが、最後の二枚で耐えてくれたのだった。


 マコトはネネの包囲陣を無傷で脱出したのだった。そして、マコトは顔を上げるとネネの姿が見えなかった。

 しまった・・・彼が気が付いた時にはもう遅かった。

「流石マコトですね。」

 そう背後から声が聞こえた。マコトは防御結界を再構築するが間に合わない。


 ネネは背後から身体強化をして、回し蹴りをした。マコトの防御結界のすべてがその重い一撃によって破られて、マコトの体は大きく折れ曲がった。そして、すごい速さで場外に飛んでいき、マコトの体は舞台を覆っている結界にめり込んで、そのまま地面に落ちた。


「勝者、ネネじゃ。」

 コバルト校長がそう言った。そして、ネネはマコトのもとへと歩いていった。マコトは気絶していたが、ネネが頬にビンタすると息を吹き返した。


「げっほ、げっほ。」

 マコトの体は出血はしていないようだが、骨は何本か折れているようだった。

「大丈夫ですか?」

「いや、げっほ、大丈夫じゃない。」

「そうですよね・・・」

「本当に完敗だ。ネネにはかなわないよ。」

「そんなことないですよ。私だって途中で負けるんじゃないかってヒヤヒヤしました。」

「惜しかったのにな。まさか、両方とも囮だったとは。」

「マコトを倒すのならばこれくらいはしないといけないと思いまして。」

「確かにな、最後のは本当に不意打ちだった。流石に俺でもあれは予知できない。」

「もし、受け止められたらあのまま近接戦をするつもりだったんですけどね・・・」


 魔法使いに近接戦という概念はほとんどない。そもそも魔法は遠距離攻撃用として使用されることが多く、剣術とすみ分けをしているのだ。だから、ネネの取った行動はマコトにとって不意打ちだったのだ。

「近接戦で勝てる自信がないな・・・」

「そうだと思ってやろうと思ってたんです。」

「一体ネネはどこでその発想を思いついたんだ?」

「さあ、どこでしょうね。」

 ネネとマコトは笑いあった。


いつも読んでいただきありがとうございます。

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