1-69.対抗試合6
やっと対抗試合に戻ってきました。覚えていないかたもいると思いますで、前回までのあらすじを。
対抗試合、魔法大会第二試合マコト対オデッサ。マコトはオデッサの強力な言霊の魔法に対して、有効な手が撃てず、オデッサの魔法の直撃を受けて、絶体絶命?の大ピンチを迎えていたのだった・・・
闘技場内は人でいっぱいだった。この対抗試合は一般人にも公開しているのだ。毎年多くの人が見に来ている。
「レナも残ればよかったのに。」
カイはそう言って、舞台の方に目を向けた。舞台は黒い煙がもくもくと上がっており、その対となるところには少女が勝ち誇ったように堂々と立っていた。
「さあ、マコト選手どうなったのじゃろう?」
「いや、あれは流石にあかんやろ、たぶん無事じゃないないで。」
コバルト校長とテレサ校長の実況の声が会場に響き渡る。
「わからんぞ。」
ん、あれはコバルト校長と・・・隣のやつは誰だ?それにマコトが戦っているのか。
カイは全然状況を理解していなかった。
「それより、班長を探さないと・・・」
カイは会場を見渡した。そして、カイのいる場所とは逆側にネネたちが座っているのが見えた。
「おっ、マコト以外は全員いるみたいだな。」
カイは少し嬉しくなった。
その頃、舞台上ではオデッサがすました顔で佇んでいた。いや、ドヤ顔だった。
「ふっふ、これを持ちこたえるわけはないわ。これを耐えた人なんていないもの。」
無意識に盛大なフラグを立てていたオデッサであった。そして、そのフラグは見事に回収される。
少し強い風が吹き、煙が一気に晴れる。
「果たしてマコト選手は無事なのか?」
珍しくまともに実況をしていた。
部隊の上にはマコトが無傷で立っていた。
「そんな・・・どうして。」
「ふん、練度が足りないな。こんなの防御結界で防げる。」
「まさか・・・最初の展開した結界はダミー?」
「そうだよ。」
マコトは笑った。恐らく覚えていないだろうが、マコトはダミーの防御結界を展開して、わざとそれを壊させることで本命の強固な結界の存在を隠していたのだった。ちなみに本命の結界は試合前にもう展開してあった。
「僕もやられっぱないしは嫌だからね。そろそろ反撃をするとしよう。」
「それでも、私の優位は変わらないわ。」
「そうかな?」
マコトは作ってあった大きな氷の刃をオデッサに撃った。それはオデッサを目掛けて一直線に飛んでいく。
「消えろ。」
オデッサは言霊の魔法を使った。しかし、その氷の刃は消えない。そして、どんどんオデッサに近づいている。
「消えろ、消えろ、消えろー。」
しかし、消えることはなかった。オデッサは慌てふためいていた。こんなことはなかったのに、何で私の魔法が効かないの?
そして、その氷の刃はオデッサの喉の元まで到達した。オデッサは怯えすぎて声すらでないようだった。そのまま氷の刃はオデッサの喉に突き刺さったように見えた。
「あれ?痛くない。」
オデッサは目を開いた。その瞬間、彼女はマコトの風魔法で場外に吹き飛ばされたのだった。
「勝者、マコトや。もうちょっとやったのにな、オデッサちゃん。」
テレサ校長は悔しそうだった。
「ネネ様、何が起こったのですか?」
「あれは光魔法で作った、幻像でしょう。」
「幻像か?」
ヘイドは聞いた。
「ええ、マコトは言霊の魔法は見えているもの、つまりは認識しているものしか操れないことを見抜いたのでしょう。」
「どうーゆーこと?」
イオは唇に手を当て、可愛らしく聞いてきた。
「つまりはあれですよ、今からパンチするって言われて、キックされたら対応が遅れるでしょう?マコトは氷魔法の幻像を光魔法で生み出して、そちらに意識を向けさせます。しかし、氷魔法と思っているものが実は光魔法なので言霊の魔法で消すことができず、慌ててパニックになっているところに予期していないであろう風魔法を撃ったのです。要するに不意打ちですね。」
「ふん、マコトのやつなかなかやるじゃねーか。」
「何対抗心燃やしてるんですか、サヤカ。」
「別にそんなことしてねーよ。」
「マコトすごかったな、まあ、俺にはかなわねーがな。」
「幻像の次は、幻聴でしょうか。」
ネネたちは少し懐かしい仲間の声を聞いて振り向く。
「あれー、カイじゃんー、やっほー。」
「え、カイ。」
ケリンはびっくりした顔をしていた。
「ああ、やはりそうですか。一生帰ってこなければよかったのに。」
「相変わらず辛辣だな。」
しかし、カイは傷ついたようではなかった。
「ネネ様こう見えて心配していたのですよ。」
「そうなのか、やっぱ俺に・・・」
ネネはカイに向かってビンタした。
「スミレ、余計なことを言わないでください。調子乗りますから。」
「おっ、その反応はまじみたいだな。」
「殺しますよ。」
「ネネ、流石にそれは言いすぎじゃ・・・」
「ヘイドは黙っていてください、私はこの男を心底軽蔑しているんです。」
「ああ、やっぱレナと一緒に行きたかった・・・」
カイはぼそりと嘆いた。
「フタバ!」
ネネはカイの後ろにぷかぷかついて来ていた、フタバを見つけて席を立った。フタバはネネのもとに飛んできて胸の中に入った。
「本当に心配したんですよ。」
「ごしゅじんさまー。」
フタバが声を発した。
「へ?」
「え?」
「しゃべりましたよね、ネネ様?」
「うん・・・」
「げ、お前喋れたのかよ。」
カイの脳裏にレナとの思い出が浮かんだ。とても楽しく、そして他人に聞かれたら恥ずかしいものばかりだ。もし、ネネに伝わりでもしたら・・・何をされるかわかったものではない。一生ネタにされそうだ。それだけはごめんである。しかし、カイに今できることは皆無だった。
「フタバー、偉い偉い。」
ネネはフタバの紫の髪を撫でた。
なんか見覚えがある気がするのは気のせいだろうとカイは自分自身に言い聞かせたのだった。
次は城取合戦の予定です。
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