1-66.封印されし者4
「ところで、君はどうやってこの海底迷宮に入ってきたんだい?僕気になるな。」
「海底迷宮って何ですか?」
「ん?意図的に入ってきた訳じゃないんだ。ちょっとそこの水たまりの水を少し舐めてみな。」
「水ですか。」
カイはレナが言ったところの水を少し手につけ、そして舐めた。
「しょっぱい。」
「そうでしょ、ここは遥か海の底なんだよ。そして、この海底迷宮は僕を封印するために造られたんだ。」
なぜか彼女は少し得意げだった。そして、続けた。
「全長百キロメートル、海抜マイナス十キロくらいかな。」
「全長って・・・」
「ああ、この迷宮は巨大ならせん構造になっていて入り口から入ると百キロくらい歩かないとここには到達できないんだよ。しかも、大規模な魔力結界も展開されていたようだし・・・」
「君はどうやってここに来たんだい?」
「わかりません。たぶん転移だと思いますけど。」
カイは答えた。
「ここに転移する前はどこにいたんだい?」
「クマです、クマ高校の校舎にいました。」
「クマってノイン大陸の?」
「はい。」
「あそこに学校ができたのか・・・そうか。」
「何ですか?」
「いやこっちの話だ。で、君はこれからどうするつもりだい?」
「えっ・・・」
カイは彼女について行きたかった。しかし、級友が心配しているのは確実だ。
「こっからどうやって脱出するのですか?」
「それについては心配ないよ。僕が責任もって陸地までは連れて行ってあげるから。」
カイはほっと息をついた。とりあえず身の安全は確保されたということだな。しかし、ついて行くべきかな、ついて行きたいな、うん、ついて行こう。
「レナさんについて行きます。」
「レナでいいよ・・・本当かい?」
「はい。」
「そうか、助かるよ。僕は目覚めたばかりだからね。世界がどうなっているのか全く分からない。」
「俺が教えますよ。」
カイはそう言って笑った。
「カイってさ、レナの前では猫かぶってるよね。」
ヴィイが不意に突っ込んだ。
「猫はおめーだろ。」
「はは、確かに猫には言われたくないことだな。」
「レナまで・・・」
ヴィイは嘆く。
「それじゃ、行こうか。」
「どこに?」
「とりあえずこの迷宮の入り口に。」
こう言って、彼女はその場の人を全員転移させた。




