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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
70/129

1-65.封印されし者3

 カイは恐る恐る目を開けた。もうまぶしくはなかった。輝いていた水晶は跡形もなく消えていた。そして水晶があった台座の上に一人の女性が立っていた。

 その女性はカイの目を釘付けにしてしまった。彼女は美しい灰色を少したなびかせて、その灰色の瞳を開いた。肌は透き通った絹のように白く、言葉にできないほど美しかった。

「久しぶりだね、新鮮な空気を吸うのは。」

 カイはその場で呆然としていた。そして、目の前の女性が裸であることに気が付き、頬を赤らめたが、目線を逸らすことはしなかった。

「ところで、僕を開放してくれたのは君かな?」

 彼女は薄紅の唇を動かしてそう言った。そして、そのままカイに近づいてきた。カイは漸く正気に戻った。

「はい。」

 そうはっきりと答える。

「そう・・・」

 そして、カイが彼女の裸体を凝視しているのを見て微笑んだ。

「欲望に忠実な少年は嫌いではないよ。」

 彼女はカイの耳元で囁いた。そして、黒いドレスを魔法で作った。

「ところで君はなんのために私の封印を解いたのかな?」

 カイは一瞬戸惑ったが、すぐに答えた。

「ご飯を作ってもらうためです。」

「ぷっ、はっはは。ご飯を・・か。」

 彼女は急に笑い出した。

「これは想定外だね・・・まあ、封印を解いてくれたお礼だ。精一杯腕を振るわせてもらおうじゃないか。」

「お願いします。」

「オッケー。」

 彼女は指をパチンを鳴らした。そうすると、どこからともなくブランケットが現れて、洞窟の床に敷かれた。

「ここでピクニックと行こうじゃないか。」

 彼女はそう言って作ったばかりの靴を脱いで、ブランケットの上に座った。

「君たちも座り給え。」


 カイは目の前の状況がまあ理解できていなかった。でも、なんか食べられるようだし、いいかと疑問を切り捨てた。そして、靴を脱いでブランケットの上に座った。

「とりあえず、温かいスープは欲しいよね・・・」

 彼女はそう言って二人分のオニオンスープを魔法で即座に用意した。

 カイは魔法で食料を作れないと思っていたので驚いたが、それよりもお腹が空いていたので、渡されたスプーンで勢いよくスープを飲む出した。

「おいおい、君やけどしちゃうよ。僕も頂きます。」

 彼女も同じようにスープを飲んだ。

「はあ、あったまる・・・」

 一息ついた。そして、彼女はカイを見た。カイはすでにスープを飲み干してしまっていた。

「美味しいのならいいけど・・・」

「美味しいです。」

 カイは即答した。

「君、スープが付いちゃってるよ、ふふ。」

 彼女はハンカチを取り出して、カイの頬を拭く。

 カイは思わず赤面してしまった。

「初心だねー。」

 彼女にはどこか大人の余裕があった。


「じゃあ、次は前菜かな。」

 彼女はカプレーゼを魔法で作った。

「わあ。」

「ほらお食べ。」

 彼女は半分カイに差し出した。カイは添えられたフォークを握り、また勢いよく食べた。

「おいしいかい?」

「はい。」

「うん、偉い、偉い。」

 彼女はカイの頭をぽんぽんした。そして、彼女は上品にカプレーゼを食べた。


「ところで君、名前は?」

「カイ・・です。」

「カイ君ね。」

「あの・・・あなたの名前は?」

「うーん・・・レナ?とでも名乗っておくわ。」

「それは、本名ですか?」

「さあ、どうでしょうね、ふふ。」


「ねえ、さっきから俺のことずっと忘れてない?」

「おお、虎、めっちゃうまいぞありがとな。」

「そうならいいけどさ・・・」

「ヴィイいたんだ。」

「おい、ひどすぎるだろこの仕打ちは。一応、あっ、レナの使い魔だぞ。」

「そう言えば、そんなのもいたわね・・・」

「もうヤダ帰りたい。」

 ヴィイはそう言って拗ねてしまった。

「もう、冗談に決まっているじゃない。」

「ならいいけど・・・そう言えば昔も空気と扱い変わらなかったけ。」

「窒素じゃないだけましじゃない?」

 レナと名乗った女性はそう言ってヴィイをからかった。

「もう・・・」

 カイは同情したが、自分に関係なくねと思った。

「そろそろメインでも作ろうかな。」

 彼女はそう言って、魔法で料理を作った。

「ほらお食べ、カルボナーラだよ。」

 彼女はカイの分の料理を差し出した。カイはフォークでパスタを口に入れた。胡椒のほのかな香りとソースが絡まったパスタが絶品だった。

「おいしい・・です。」

「君に喜んでもらえて本当に良かった。」

 そう言って、彼女は微笑んでヴィイを膝の上に乗せて撫でた。首元を撫でられたヴィイはそこそこ、ああ、この感じ懐かしい・・・とあくびをしていた。


伏線を少し回収していくつもりです。

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