1-63.封印されし者1
対抗試合は続きますが、一旦みなさんが忘れていそうなカイ君の話になります。
カイは目を覚ました。
「う・・ここはどこだ。俺は確かネネたちの帰りを待って、学校をぶらぶらしていたんだが・・・」
カイがいた場所は真っ暗だった。そして、カイがコートを着ているのにも関わらず肌寒い。
「誰かいるか?取り敢えず灯りでもつけてくれ。」
そう言った瞬間、カイの目の前がパーッと明るくなった。そこにいたのは、白い雪のような肌の紫色の髪の幼女だった。
「あっ、お前はフタバだな。」
フタバはくすくすと笑った。
「おーい、シロ?」
「ホーウ。」
少しすると白いフクロウが飛んできた。このフクロウはカイの使い魔で風属性である。名前はシロ。アルティのメンバーには安直すぎじゃねと言われたが、カイはなぜか自身のネーミングセンスの無さだけは自覚しており、これでいいんだよ、と押し切った。シロはカイの腕に止まった。
「よーし、よし。」
カイは使い魔にはやさしい。女性にはやさしくない。(完全なるネネの主観)
「まじでここどこだよ・・・」
カイは辺りを見渡す。フタバの明かりが辺りを照らすが、地面と天井の岩盤しかない。どうやら大きな横穴にいるようだ。天井の高さは十メートルくらいで後ろと前は暗くて見えない。
「転移か、くっそ。」
カイは漸く正解にはたどり着いたものの理由はわからない。
「まあ、いっか。」
カイは考えるのを放棄した。フタバが楽観的すぎだろと目で訴えているような気がした。
「何だ、おめーも俺のことが好きなのか、主従そろって変わんねーな。」
ちなみにネネはカイのことが大嫌いであり、転移される際に暇の魔法によって無自覚に世界で有数の過酷な環境に送られていることをネネもカイを知る由もない。
「とりあえず進むか。」
カイはそう言って前へ歩き出した。洞窟は長い一本道でほんの少し勾配がある。そして、洞窟の地面の溝には水が流れていた。至る所で水がぽつりぽつりと落ちてきていた。
「とりま、水には困りそうにねーな、シロ。」
「ホー。」
シロは返事をした。フタバはカイの前を浮いて進んでいる。洞窟は緩やかにカーブを描いていた。
一時間くらい歩いたころだっただろうか。
「シロ、腕が死にそうだから降りてくれ。」
カイの腕は悲鳴を上げていた。
「これ、筋肉痛確定なやつやん・・・ちょっと休憩しよ。」
カイは洞窟の壁に寄り掛かり一息つく。カイは手ぶらだったが、水魔法で水を作ってのどに流し込んだ。
「ほら、シロ。」
「ホー。」
カイはシロに手のひらに溜めた水を飲ます。それを見てフタバもふわふわと飛んできた。
「おめーも水いるのか?仕方ねーな。」
なんだかんだ言ってカイは優しかった。カイは魔法で水を作ってフタバに差し出す。彼女は手のひらの水を浮遊魔法を使って自分の口へと運ぶ。
「潔癖症かよ。」
カイはそう言って、少し目をつむる。このまま何もなかったら俺ら死ぬよな。だが、進むしかねーか。
「よし、行くぞ。」
カイは立ち上がり、洞窟の奥へと進んで行った。
読んでいただきありがとうございます。評価や感想お願いします。励みになるので。




