1-62.対抗試合5
「次は第二試合、マコト対オデッサちゃんやで。個人的にはうちの子らが勝ってほしいんやけどな。」
「テレサ校長、本音が駄々洩れじゃ。」
「まあ、そんなことより、試合開始や。」
マコトが舞台に上がった。クマ高校側から大きな声援が沸き上がる。そして、黄色い声援も。マコトはモテるのだ。それもかなり。一週間に一回くらい告白されているらしくカイがそれを知ったら嫉妬に飲まれそうになるだろうが、彼は知る由もないし、現在行方不明だ。あいつのことだからどこかで飄々と生きているだろうとマコトは全く心配していなかった。逆にヘイドが行方不明だった時はかなり心配したが、ネネがたぶん大丈夫と言っていたので、どうにかなっているのかなと思っていたりもした。
相手は魔導書を持った大人びた女性だった。好みじゃないなとどうでもいいことを思いつつ、マコトは結界を展開した。
「あら、随分と用心深いのね。」
「そうかな?」
マコトがやったことはごく当たり前のことだった。魔法使いを相手にするのならまず初めに対魔法結界を自分の周りに張りましょうと教科書にもちゃんと書いてある。
マコトが特別にしたことは結界の強化と従来の魔法へのアレンジを加えたということだ。その点にもし相手が気が付いているのなら、油断できないな。
お互いが警戒しあっていた。最初に仕掛けたのはマコトだった。無演唱で氷の刃を放つ。
「おっと、ここでマコト選手先制攻撃やな。」
実況がやっとまともな仕事をしている。
「これくらいならね・・・」
オデッサは向かってくる多数の氷の刃に対してたった一言つぶやいた。
「消えろ。」
そう言った瞬間、マコトの攻撃が一気に霧散にした。
「は?」
マコトは少し驚いたが、全く隙を見せることはない。
「おっと、出たで、あれはうちのオデッサちゃんの自慢の言霊や。言ったことがほんまになんねん。すごいやろ。」
「確かにそうじゃな。」
コバルト校長は素直にうなずく。
これでいいのか、実況よ。
しかも、キョウ高校の校長が種明かしをしてしまっていいのか、とマコトは思った。そんなことより、種がわかればどうにでもなる。
「じゃあ、私も本気で行かせてもらうよ。」
「壊れろ。」
彼女はそう呟いた。
そして、次の瞬間、マコトの結界がパリンと割れた。
マコトは動揺することなく、氷の刃を再び差し向ける。
「消えろ。」
そして、またマコトの魔法が消される。
「ふふ、これで終わりにしてあげる。」
「爆ぜろ。」
オデッサはその可愛らしい声でいかにも中二っぽい言葉を発した。
これはやばい。マコトは素早く空中へ回避する。
突然マコトのいたところが爆発した。しかも結構な大爆発。殺す気だろとマコトは思ったが、自由の利かない空中は不利なので、すぐさま体勢を整えて迎撃準備に移る。また、無数の氷の刃を作りだして、オデッサの方へと飛翔させる。
「これを躱した?」
一方のオデッサは動揺していた。しかし、マコトの魔法が向かってくるのを見てすかさず言霊の魔法を使う。
「消えろ。」
「何回やっても結果は同じよ。」
「いや、そんなことはない。」
ヘイドは今度は一本の少し大きめの氷の刃を作った。
「爆ぜろ、爆ぜろ。」
オデッサは二つの言霊魔法を使う。空中にそしてヘイドの足元に。
「これで逃げられないわよ。」
オデッサは自信満々に語る。
「それはどうかな。」
今度はヘイドはその場を動かない。そして、バンと二つの爆発魔法が炸裂する。
「マコト・・・」
観客席のスミレが思わず叫ぶ。
ヘイドのいた場所は黒い煙がもくもくと上がっていた。
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