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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
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1-60.対抗試合3

 二日目の午前は剣術大会であった。ネネは午後からの魔術大会のほうに参加する予定だ。この剣術大会と魔法大会は担当教員が推薦して行われる。それによって参加者は一校四名ずつと大変狭い枠となっているのだった。

 剣術大会でソフィアから選出されたのはヘイドだけだった。ヘイドは意外に魔法以外は何でもできる優秀な人だった。

 しかし、魔法を重んじるクマ高校と体術も重視するキョウ高校とでは毎年、圧倒的な差が生まれるらしい。

「まもなく、第一試合を始める。その前にルール説明じゃ。」

 コバルト校長は今日も元気そうに放送席に座っていた。

「ルールはな、三つ、簡単やろ?まず、場外に出たら負け、降伏、もしくは戦闘不能になったら負け、そして、相手を誤って殺したら負け。この三つだけやでー。ほな、頑張ってな。」

「それでは、第一試合を始める。キョウ高校からはエスタドス、クマ高校からはヘイドじゃ。」

「試合、はじめー。」

 テレサ校長が大きな声で叫んだ。


 ヘイドは前の相手を見る。相手のエスタドスはヘイドよりも一回り大きい、高身長な少年だ。がたいがよく筋肉が張って見える。それに対して、ヘイドは平均的な身長。少しやせて見える体型であった。


 しかし、ヘイドは物怖じの一つもしない。彼はディアと一か月間、迷宮で鍛えた。その訓練の成果を試すいい機会だ。


 相手に隙はない。ヘイドは目にも止まらぬ速さで、相手との距離を詰める。相手は剣を構えたまま動かない。

 ヘイドはさらに加速して、相手の剣の間合いに入る。

「カン。」

 剣同士がぶつかる音が会場にこだまする。

 ヘイドは受け止められた瞬間、さらに力を入れた。そうすると、なんと、スッと剣の抵抗が緩まる。

 

 受け流されたか。ヘイドはすぐに反撃に対する防御の準備をする。しかし、いつまで経っても相手は動かない。そして、

「カラン。」

と音がした。

 そう、その音は剣が真っ二つに切られて、その半分が床に落ちたのだった。ヘイドは、逆にびっくりした。たぶん、相手の剣がもろかったのだろう。うん、きっとそうだ。

「勝者、ヘイドじゃ。」

「コバルト校長、すごいであいつ。」

 会場から声援が上がる。ヘイドは颯爽とその場から立ち去る。舞台に一礼するのも忘れずに。

「コバルト校長、今、何が起きたか解説してーや。」

「わしが?要するにヘイドの剣速が早すぎて、相手の剣を切ってしまったということよ。」

「やっぱ、すごいやん。第一試合からレベル高いな。」

「次は第二試合じゃ。」


 こうして、剣術大会でヘイドは順調にコマを進めて、決勝に勝ち進んだ。

「ヘイドってあんなに強かったけ?」

 イオが不思議そうに聞く。

「私が知ってる限り、そこまで強くなかった気がするのですが。」

「そうだよね。」

「おい、もうすぐ始まるぞ。」

 サヤカはそう言って、舞台のヘイドに目をやる。


 試合はもう始まっている。ヘイドは相手を見つめる。隙が無い。相手はキョウ高校のアデンだった。彼は「土の魔法使い」と呼ばれている。しかし、剣術大会では魔法の使用は禁止されているので、あまり関係がない。純粋に剣の腕を競うのだ。アデンは剣ではなく刀の使い手だった。

 

 まず、動いたのはアデンだった。素早い動きでヘイドに切りかかる。ヘイドはその太刀を受ける。とても、重い。

「くっ。」

 アデンがすかさず切り込む。ヘイドは一回後ろに引いて、間合いをとる。この繰り返しが続いた。

 両者とも隙がない。そして、実力がほぼ同程度なので、二人とも決定打がない。一見すると逃げているヘイドのほうが不利に見えるが、そう言うわけでもなかった。二人とも、相手の動きの乱れをとらえようとしている。

「ここまで、僕の剣を受け流す奴は初めてだよ。ワクワクしてきた。」

 アデンが笑いながら言った。

「俺は精一杯なんだがな・・・」

 言葉を発している時点で、まだ余裕である。


 その均衡は一人が集中力を乱すと一気に崩れる。アデンが初めにバランスを崩した。ヘイドはすかさず、剣を振る。そして、アデンの首の前で寸止めする。

「参った。強いなお前。」

「偶々勝っただけだよ。」

「そういうことにしとくか・・・」

 二人は剣を下ろして、握手をした。


「勝者、ヘイド選手じゃ。」

「あーー、全然面白くないやん。うちの生徒負けてばっかりやん。あ、試合はめっちゃおもろかったで。」

「テレサ校長・・・」

「あ、すまん、コバルト。」


「まじで、あの校長、性格が少しわりーよな。」

「そうですね。」

 ネネはサヤカに同意した。




kannsounado yorosiku onegai simasu.

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