1-59.対抗試合2
「で、話って何ですか?」
「ちょっとついて来て。」
アルベール先生は、キョウ高校の会議室へとネネを案内した。扉を開けて中に入ると、そこには、見たことのあるお兄さんと少女がいた。
「おっ、あんちゃん、ありがとさん。」
二人はとりあえず、何も言わずにせきに着いた。
「いや、ちょっと、シュリーフェンがなんかわかったらしくって、ネネとチャチャを呼べっていうから、呼び出しただけだ。俺はあんまり、関係ない。」
「お嬢ちゃんが忘れてるかもしれないから、俺はシュリーフェンだ。一応、預言者やってる。」
シュリーフェンは今回はパンツ一丁ではなかったが、ピッチピチの短パンとピッチピチのティーシャツを着ていた。彼の筋肉の輪郭がわかるくらいには。
「ちゃんと覚えていますよ。」
「早速だが、本題に入らせてもらうぞ。」
シュリーフェンが真剣な顔になった。
「まず、君たち二人は、この世界の不確定要素である、と判明した。しかし、闇の魔法使いではない。」
「それはわしは知っておる。」
チャチャはつまらなそうにそう言った。ネネも薄々そのような存在であると気づいていたが、何も言わなかった。
「不確定要素と言うのは世界の意思に逆らうことができる存在のことだ。まあ、正確に言うと逆らいやすいだけだがな。普通の人でも、頑張れば抗うことはできる。しかし、それには尋常じゃない精神力が必要が。」
「それで、話とは何なのじゃ?」
「実は、カタストロフィについてだ。」
「どこまで知っているのですか?」
「どこまでも何もすべて知っている。お嬢ちゃんの知らないところまで。」
「そうですか。」
「何じゃ?カタストロフィはクマの魔力爆発のことか?」
「そうです。」
ネネが答える。
「ことの発端は一か月前、誰かがクマ城の地下の魔力核融合炉が爆破されて、クマの町が一瞬にして、ただの空洞に様変わりした。それにより、魔力核融合炉の機能は完全に停止した。」
「よくご存じで。」
「預言者の名も伊達じゃないんでな。しかし、この魔力核融合炉の役割、それは魔素を生み出すことだが、そのエネルギーはどこから来ていると思う?」
「??わしにはようわからん。」
「この星の魔法エネルギーですか?」
「そう、この魔法エネルギーをちょうどいい具合に取り出して、魔法災害や、プレートの運動などを抑制していたのだ。まじでこれを造ったアレは天才だと思う。しかし、このバランスがカタストロフィで一気に崩れた。」
星の運動まで管理していたということか。すごいなアレ。しかし、その調和が乱れたとなるとどうなるのだろう。
「バランスが崩れるとあとは一方的にエネルギーがこの星の表面に流出するだけだ。しかも、二千年の間少しずつ、過剰に溜まっていたエネルギーが放出し始めている。これから、各地でカタストロフィが多発するだろう。また、魔物の大量発生も起こる。」
「なんかすごいことじゃな。」
「どうやったら止められるのですか?」
ネネは聞いた。
「俺にはわからない。」
この預言者使えねー。まあ、情報をくれるだけましですけど。最近、一か月魔物の被害が増えているとは聞いていますが・・・
「魔力核融合炉を新しく作り直すとしたら、被害を押さえることはできますか?」
「それは厳しいと思う。もうバランスは崩れた。魔力は水のように流れ始めたら最後、それは誰にも止めることはできない。」
ネネは頭を抱えた。一体どうしろと、私のような少女に。
「なぜ、これを私に?」
「いやー、一人で抱え込むのがめんどくてよ。君たち一応、世界の不確定要素だし、どうにかしてくれるかなって。」
は?まあ、言ってくれるに越したことはないんですけど。
「わかりました、こちらで調査してみます。」
「わしは、おじいに相談してみる。」
「まあ、そんなことでよろしく。」
本当に、困ったものですね。何も起きてほしくないのに。
しかし、歴史はもう激動の時代へと動き始めていたのだった。
シュリーフェンが出て行ったあと、ネネとチャチャはその部屋に残った。
「先日ぶりですね。」
「そうじゃな、まさか、お主がここに呼ばれているとはな。」
「シュリーフェンを知っているのですか?」
「あいつはおじいの知り合いでな。じゃが、おじいは完全に信用するなと言っていた。」
「そうですか。」
「今の話が嘘ではないくらいは流石にわかるのじゃがな・・・」
チャチャもこのことを真剣にとらえているようだった。
「あなたとは一度話をしてみたいと思っていたんです。」
「何じゃ?わしとか?」
チャチャは机に身を乗り出した。
「近い・・・」
「おお、すまんすまん。」
美少女がそう言う口調なので、少し面白い。
「確か、お主はネネ・アンジェラ、暇の魔女と呼ばれているそうじゃな。」
「はい・・・」
「まあ、実力は対抗試合で見るとしよう。」
「そうですね。じゃあ、得意魔法は何ですか?」
「みすみす手の内を明かすわけにもいかんが、これくらいはいいじゃろう。わしの得意魔法は、思考加速じゃ。お主はどうじゃ?」
「私は、暇の魔法が得意ですが、たぶんどういう魔法かわからないと思うので、二番目に得意な魔法も教えましょう。空間魔法です。」
「ほう、楽しみにしておくぞ。」
「私も、楽しみですよ。」
そう言って二人は別れた。
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