1-48.ナハ2
次の朝、まだみんなが寝ているころにネネのところにフクロウの使い魔が来た。そのフクロウは手紙を銜えていたのでネネはその手紙を手に取った。
「 拝啓
紙幅の関係上事項の挨拶は省略させていただきます。ナハにいらっしゃるということで、今からアンジェラ財閥ナハ支店にお越しください。早急にお話ししたいことがございます。道はそのフクロウのジェンが案内いたします。
敬具
チャコ・コンポステラ 」
「チャコですか。」
ネネはすぐに着替えて、フクロウに案内されてアンジェラ財閥ナハ支店に向かった。着いた時にはもうお出迎えの準備ができていた。学校側からの情報によって昨日から準備をしていたのだろう。わざわざ私のためにここまでしなくてもいいと思うのだが、チャコは形式にこだわる。
「ようこそお越しくださいました。ネネ様。」
ナハ支店で働いている人がお辞儀をした。ネネは案内され、会議室に通された。そこには、がたいがよく、眼鏡をかけており、白髪の男の人が待っていた。
「お待ちしておりました。ネネ様。急な呼び出しをお許しください。」
ネネは会議室のソファに座った。すぐにお茶が運ばれてきた。
「あなたもかけなさい。」
「失礼します。」
チャコはお辞儀をして座った。二人っきりとなった。
「で、話って?」
「ネネ様に署名していただきたいものがございまして。」
アンジェラ財閥は大きな組織であるため、私が署名するような書類は少ない。幹部であれば、権力があり私が署名しなくて信憑性があり信頼できるからだ。私に署名を求めるということは余程な案件なのだ。
「見せて。」
ネネはチャコに偉そうに手を差し出した。チャコはその手に書類を乗せた。私は書類を受けとり、じっくり見た。私はため息をついた。
「軍拡はいいでしょう。その方面の研究費も惜しみなく出させるように。」
ネネは一枚目の書類にサインした。
「もう一つの方はどうなさいますか?」
「もう帝国の崩壊のカウンターがないのね。」
「もって三年でしょう。早めに手を打つべきです。」
ネネは熟慮した。
「わかりました、私は再来年の十人衆の会議でアンジェラ家の独立を宣言します。それまでに、研究者、魔法使いの囲い込みを済ませなさい。」
「では、アンジェラ財閥のノイン大陸から手を引くのを認めていただけるのですね?」
「仕方ないわ、でも、クマ高校、ミカク要塞だけは死守しなさい。」
「わかっております。」
「あくまで、気づかれないように進めるのよ。でも、鉄道部は残しておきなさい。」
「わかりました。では、そのように進めておきますね。」
「帝都は静かですか?」
「ええ、しかし、テロメア家は動いているように感じられます。」
「そうですか。」
「感謝いたします。」
「あなたにはまかせっきりで済まないわね。」
「いいえ、ネネ様のお役に立てて光栄です。エレ様がしっかり高校生活を楽しむようにとおっしゃっていましたので、楽しんでくださいね。」
「ええ、十分楽しいわ。」
「休暇は戻ってくるのですよ。」
「はい、なんだか、お母様みたいですね。」
ネネはそう言って宿に戻った。いきなり現実に引き戻された感じだ。もう歴史の歯車は動き始めてしまった。これを止めることは誰にもできない。その中で必死にあがいてみましょうか。




