1-47.ナハ1
「いっちばん乗りー。」
イオが元気そうに桟橋に降りた。
「俺様は二番だな。顔は一番だがな。」
カイはよくわからないことを言っていた。
「なんだか、揺れてないと変な感じしますね。」
ネネはやはり地上のほうがいいなと思った。
「そうだね。」
ヘイドは私の後に降りた。
「君たちー、よく来たね。残念だけど、君たちは一番乗りじゃないよー。」
レイリ先生が町の方から歩いてきた。
「へ?」
「嘘・・・」
「私が一番乗りだよー。」
「おい、ふざけんじゃねぞー。」
サヤカはすぐにかっとなる。
「冗談も通じないんだ、つまらないよー。」
「じゃあ・・・」
「そう、流石私のアルティだね、一位おめでとう。」
「よっしゃー。」
「やりましたね。」
「よかった。」
「本当に良かったですよ。」
このあと、私たちは学校が予約していた宿に泊まった。
「はいはい、皆さん注目。司会進行のイオです。」
「よっ。」
「これより、戦勝祝いを始めまーす。今回はレイリ先生のおごりなので皆さん好きに注文してくださいね。」
「おい、私はそんなこと言って・・・まあ、いっかー。よし、私のおごりだ。思い存分食べてねー。」
「ということです。では船長改めリーダー、乾杯を。」
私は渋々立ち上がった。私はこういうのはあまり得意ではない。パーティーで何度かアンジェラ財閥の代表としてやったことはあるが。
「今回、勝てたのはみんなのおかげです。これからもよろしくお願いします。乾杯!」
「乾杯!」
グラスを合わせた。みんなのグラスに注がれているパイナップルジュースが揺れた。私はそのジュースを一気飲みした。酒ではないのだからよいだろう。甘さと酸味があってさっぱりとした味だった。
「おいしいですね。」
私は隣にいたヘイドの方を向いた。ヘイドはグラスを置いた。
「そうだね。」
しかし、ヘイドはお腹が空いているらしく目の前にある新鮮な食材から作られた料理に目を奪われているようだ。私は頬を膨らませた。そして、船の上では頂けなかったおいしい料理を食べた。
決して船の上での料理がまずかったわけではない。ケリンは料理人として見事というべきおいしい料理を作ってくれた。しかし、積み込める食材には制限があり、丘の上のように調理できるのではなかった。
「あの時はびっくりしましたー、なんせ船が沈むと思ったからね。」
「ほら、イオ、あんまり大きな声で話さないの、ほかにもお客さんがいるんだから。」
「スミレ。」。
「あの時、俺様がいなかったらあそこで終わりだったんだぜ、もっと感謝してくれてもいいんだけどな。」
相変わらずカイはよくわからないことを言っている。
「はあ?あの時はネネがいたからどうにかなったんだーよ、ばーか。」
「何言ってんだ?俺様はネネにアドバイスしたんだぞ。」
そんな覚えはないんですけど。
「てーめーがそんなことしてもネネ様が聞くわけねーだろ。」
サヤカはいつものように強い口調だ。いつから、ネネ様って呼ばれるようになったのはいささか疑問ではありますね。
「仲いいですよね、サヤカとカイ。」
ネネのもう隣にいたスミレが少し上を向いてつぶやいた。
「喧嘩するほど仲がいいと言いますからね。あの二人は似た者同士なんですよ。」
「私にもそんな仲の人がいればいいのですがね。」
急に重い話を投げかけられた私は戸惑った。
「喧嘩しなくとも仲が良い人はここにいますがね。」
「え・・・・」
「何言っているのですか?もしかして、私は友達だとは思われていない?」
ネネはわざとそう言った。
「ネネ様はお人が悪いですね。」
スミレの顔が明るくなった。
「スミレもね。」
「もう、最後の一言は余計ですよ。」
ネネは改めて思った。いい仲間に出会えたなと。本当に頼もしい、いい仲間だ。しかし、ネネはそのバランスはまだ不安定なものだということに気付いていなかった。




