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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
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1-35.はじめての課題4




 そして、忙しい二か月が始まった。午前はレイリ先生の授業や魔法を習ったりして、午後はひたすら船を造った。みんな何か大きなものを作るのは初めてでいろいろ失敗もした。笑いあったり、時には喧嘩したり、ネネたちのアルティは少しずつではあるが、一つに仲良くなっていった。そうするにつれてお互いのことがわかってきた。ネネたちはアルティを二つの班に分けた。一つは造船、もう一つは操船だ。操船の方は当日の航路の把握や船の操縦について学んだり、港に行って実際に練習させてもらったりする。主に男子が造船を担当している。

ヘイドは本当にまじめで仕事をさぼらない。それに対して、カイとイオはさぼりがちだ。マコトは真面目だがちゃんと抜くところは抜いている。そして、彼は造船の現場監督の係だ。そのほかにも、サヤカもちゃんと仕事をしてくれているらしい。時々カイとサヤカが現場で喧嘩しているらしい。ケリン曰く毎日のことなので問題ないらしい。

 操船班は私、スミレ、マコトだ。はじめマコトは女子に囲まれて気まずい様子だったが、どうにかなじめている。スミレは私と同じ班がいいと言ってやまなかったので操船班に入ることになった。

「嬢ちゃんたち本当に操船をするのかい?」

「学校の課題で協力してくれませんか?見せてくれるだけでもいいので。」

ネネは社交界で培った笑顔を武器に水夫に迫る。

「ん、じゃ船長に頼んでみるは。」

ネネたちはその商船でイサハヤというクマからアリアケ海を越えた港町まで乗せてもらうことになった。イサハヤまでは丸一日かかる。

「嬢ちゃんたち、大体容量はわかっているのかね?」

上甲板で優しそうな船長さんが聞いてきた。

「はい、本で少し。」

「じゃあ、タッキングを今からお見せしようどうせクマ港から出るのに一回は必要だからな。」

「タッキング。」

船長はそう叫んだ。船の角度が九十度右に向いた。

「取舵一杯。」

「こんなもんだ。当たり前だがホイールをもっている人に的確な指示をして、お互いを信頼していないとできない。」

「はい。わかりました。」

「風は気まぐれだからな。こっちが合わせないといけないんだよ。」

「タッキング。」

船長はまた叫んだ。今度は船が左に九十度曲がった。どうやらこれで港を抜けれたようだ。

「これからは追い風だから特に心配することはねー。お嬢ちゃんたちは船員の働きぶりをよく見とくんだな。」

「ありがとうございます。」

「減るもんじゃねーしな。あとはかわいい嬢ちゃんたちが乗ってるとみんなが喜ぶんでな。まあ、満喫して学んでくれや。」


 ネネたちはそれからホイールの扱い、錨の扱い、帆の出し方やしまい方、その他もろもろ教えてくれた。船の上での料理もおいしかったし、みんな丁寧に優しく教えてくれた。そして、イサハヤ港に入るころにはすっかり私たちは船の一員となっていた。そして、空は真っ赤に染まり、海もまた染まってきれいだった。

「嬢ちゃん、舵を握って、指示だしやってみるかい?イサハヤ港に入るのに二回タッキングがいるのでな。」

「はい。」

 舵はスミレ、指示出しはネネがすることになった。

「まだだぜ・・・・今だ、嬢ちゃん。」

「タッキング!」

ネネは精一杯叫んだ。

「アイアイ。」

スミレは思いっきり舵を回した。

「お、重っ。」

 船はしっかり九十度回った。港は段々と近づいてきている。

「タッキング。」

私はまた叫んだ。スミレは今度は逆にホイールを回して、船は正確にイサハヤ港へ入った。

「どうだ、初タッキングは?」

「緊張しました。」

「そうだろう、俺だって今でも緊張するぜ。たぶん、どんな熟練な船乗りでもタッキングでは緊張するんだ。それにしても、よかったぜ。」

「ありがとうございます。」

私は笑った。夕日の淡い光が私を照らした。海面は紅に染まっていた。


 イサハヤ港に降りると、船員のみんなに別れを告げた。

「また来いよな。」

「楽しかったぜ。」

「いつでも歓迎するからなー。」

「俺と付き合ってください。」

よくわからないものも交じってはいたが、ネネたちは笑顔で見送られた。

「はーい、また来まーす。ありがとうございました。」

「課題頑張れよー。」

船長さんがタッキングと同じくらいの声量で叫んでくれた。

「がんばりまーす。」

 こうして、楽しい一日が終わっていった。


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