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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
36/129

1-34.はじめての課題3




「お邪魔しまーす。」

スミレはハイテンションだった。

「でっけーなー。外から見ても、中から見ても。」

「イオもこんなおうち住みたいー。」

「本日はどのようなご用件で?」

メイドのカノンがネネに聞いた。

「造船に関する本を探していて。」

「本は私たちでお探ししますので、応接室にお通ししてよろしいでしょうか。」

「それでお願い。」

「私はメイドのカノンと申します。ようこそお越しいただきました。こちらへどうぞ。」

彼女はみんなを案内した。

「こちらです。」

 私たちは懐かしい部屋へと案内された。少し前まではここでお客様と話していたりしたからだ。座るとすぐに紅茶とお菓子が運ばれてきた。

「遠慮せずに食べてくださいね。」

目を輝かせるみんなに対してネネが言った。

「私はこれで。」

メイドのカノンはどうやら本を探しに行ったようだ。

「本当に遠慮しないで食べていいの?」

「うん。」

「いただきまーす。」

イオが皿に置いてあったマカロンに手を差し伸べた。

「うーん、おいしい。」

「じゃあ、俺も頂くか。」

サヤカはクッキーを一つとって食べた。

 ネネはその様子を紅茶を飲みながら見ていた。幸せそうに食べますね。遠慮というものは全くないですけど。

「スミレは食べないのですか?」

「はい、ネネ様が食べるまで食べません。ネネ様と同じものを食べたいですから。」


ああ、なんか面倒くさいですね。いま、お腹空いてないのでお菓子は食べるつもりはなかったのですが。

「そうですか。」

「このマカロンうめーな。」

「よかったです。」

「ネネは毎日こんなの食べてたのか?」

「いいえ、私はお菓子はあまり好きではないので。」

「そうなのか、私は好きだぞ。」

「気に入ってもらえてよかったです。」

「スミレは本当に食べなくていいの?」

イオは気を聞かせて聞いた。スミレは明らかに目の前のお菓子を食べたそうにしているが、我慢した。

「ネネ様が食べないのでしたら結構です。」

まあ、どうでもいいですね。はい。

「それにしてもすごいおうちだよねー。イオもこんな家に住みたいなー。」

「使用人とメイドがいなければ不便ですよ。やたらと広いので最初は迷いますし。」

「あれ?ネネは生まれてからこの家に住んでたんじゃねーのかよ。」

「うん、私は十歳まではヒトヨシに住んでました。そこからは財閥本部があるキョウと二番目にでかいクマに住んでいましたね。」

「何でそんなところに住んでいたのですか?ネネ様は?これはネネ様の意外な過去が明かされるかもしれません。いひひひ。」

 あのー、心の声が聞こえすぎて困るんですけど。というか誰も突っ込まないのですね。

「お母様がそこに住んでおりました故に。」

「お母様と言うのは先代の当主のエレ様ですか?」

「はい、お母様が亡くなってから、ここに移り住みました。」

「ごめんなさい、ネネ様に思い出したくない話をさせてしまいました。」

「いいえ、過去のことなので・・・」

 ネネは悲しみを隠し切れなかった。そしてそのことをその場にいる全員がわかったのだった。気まずい空気になってしまった。

「・・・」


 その静かな空気が扉の開く音によって破られた。

「ご主人様、造船及び航海に関する本を持ってまいりました。」

カノンが五冊の本を持って入ってきた。ナイスタイミング。彼女はその本をテーブルに置いた。

「では、ごゆっくり。用があればお呼びください。」

 彼女はそう言って出て行った。

 本は、『造船について』『航海法大全』『世界航海記』『帆船とその種類』『スクリュー船の利点と操縦方法』の五冊であった。

 一人一、二冊読むことになった。ネネは『スクリュー船の利点と操縦方法』という本を読むことになった。その本は要約すると帆船の本ではなかった。魔力を原動力としてタービンを回し、その力で進む船の話だ。

 そういえば、お母様が昔魔法で動く船の話をしてくれましたね。確か、そのような船は争いの元となるので帝国によって技術と船は葬り去られたはずですが。でも、十貴族だけがその検閲対象から外れたのでそのような本が残っているのかもしれませんね。これは参考にしないほうがいいでしょう。

 

一時間後、それぞれ本を読み終えたようだった。

「私の本は特に有益な情報はありませんでした。」

「俺の本は思いっきり造船のことが書いてあったぜ。ご丁寧にサンプルの設計図や設計の仕方が書かれてた。」

「イオの本はねー。帆船の操縦方法について書いてあったから役に立つと思うよー。」

「この本はですね、帆船の種類について書いてあったので造船の際にネネ様の役に立つと思います。」

私だけの課題ではないのですがね。

「では、私の本以外の本を持って帰りましょう。」



 ネストに戻ると男子たちが疲れた様子でリビングでくつろいでいた。

「おかえり、どうだった?」

 ネネたちに気付いたヘイドがそう聞いた。

「良さそうな本が見つかりましたよ。」

「それはよかった。俺たちは、まあ、見ての通り成果はなかったからな。なんせ本が全部借りられててよ。」

「ドックの下見はして来たよ。あと材料もちゃんとそろってた。」

マコトはソファに寝転がってそう言った。

「じゃあ、まずは設計だな。」

「皆さーん、今から作戦会議するから集まってー。」

イオはみんなをダイニングテーブルに集めた。

「おほん、ではこれから作戦会議を始めます。まずは課題の進み方だけど、設計、造船、試運転、修理、本番でいいですか。」

「俺は優勝できれば何でもいいぜ。」

カイが偉そうなことを言ったが全員無視した。

「設計についてスミレから船の種類と説明があります。」

「え、私ですか。」

「そうですよ、期待してますよ。」

「ネネ様に期待されちゃったらやるしかないですね、でへっ。帆船の種類ですが、マストの本数をまず決めなければなりません。船体はそこまで巨大にする必要はないので、商用に使われている三本ではなく二本でよろしいでしょうか。一本だと速度が出にくいので。」

「俺はそれでいいと思うぜ。」

「では、それでいかせていただきます。あとは帆の種類についてです。帆は横帆と縦帆があり、横帆は風を捕まえやすく速度は出やすいのですが、操縦は難しいです。一方縦帆は操縦がしやすく、前方からの風でも使えるのですが、その分速度は落ちます。」

 このようにして議論していった結果、トップルスクナーという種類の船を造ることになった。この船は初心者でも比較的扱いやすくちょうどいいということになった。



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