1-33.はじめての課題2
午後の授業はアルティ別対抗課題についてだった。この課題はアルティで行うものであり、個人の評価はされない。しかし、力を合わせれば乗り越えられないというものだ。ここでの成績はもちろん個人の成績に影響するから、みんな必死で取り組むのである。レイリ先生はなんだか嬉しそうに教室入ってきた。
「今年の第一回アルティ大会は、じゃかじゃかじゃか。」
レイリ先生はよくわからない音を付けた。よほど興奮しているのだろう。
「じゃん、帆船レースだよー。イェーーイ。」
「帆船ですか?」
「そうだよー。スタート地点はここクマで、ゴールはナハだよ。」
「・・・」
「え?」
「ん?」
「ナハ?」
ナハはノオン洋に浮かぶ大きな島であるオキナハ島の中心都市である。そして、それはちょうど世界を半周したところにあるのだ。航行距離はおよそ一万キロメートル、およそ四十日かかるものだ。これを高校生にやらせようというのだ。
先生があんな嬉しそうな顔をしていたのはこのためだったのですね。でも、帆船レースって短距離でやるものなのでは?長くても千キロくらいなのでは?
「知っての通り、ナハは遠いから頑張ってねー。あと、帆船は自分たちで作るんだよー。」
「はああ?」
サヤカが思わず大声でそう言った。その声に怯えたのかネネの膝にいたフタバはネネにぎゅっとした。
「文句があるならやらなくてもいいけど、来年進級できるかなー?」
レイリ先生は満面の笑みで挑発した。
「期間はこれから二か月で造船をすること。スペース、大まかな材料は用意してるけど、必要なものがあれば買いに行ってよし。金はある程度学校から出るから、欲しかったら言ってねー。あと、約四十日間の食料も用意してね。途中で補給するのもいいけどねー。授業は午前中のみで、午後は造船にこれから二か月間励みたまへ。この課題だけど、全学年対抗だから、三年生とか特に手ごわいと思うけど頑張ってね、質問は?」
「課題ってどうやって決めたのですか?」
「ああ、先生たちがやりたいことを紙に書いて、それをくじ引きで決めたんだよ。」
この学校はくじ引きが好きですね。
「先生はなんて書いたんですか?」
聞く前から大体想像はつきますけど。
「え、帆船レースだよー。」
やはり、先生はどうせずるをしてこれにしたのでしょう。他の先生はもう少し優しい課題を考えていたはず・・・
「そうですか、なるほど。」
「何がなるほどなのかはわかりませんが、ほかに質問は?」
「・・・」
早速私たちはどうするのか話し合った。誰も船を造ったことがある人、操縦したことがある人はいなかった。
「どうしますか?とりあえず、船に関する文献を調べてみます?」
「うん、そうだね。みんなで図書館に行こう。」
どうやらみんな考えることは同じなようで図書館は入りきれないくらい人がいた。
「さあ、どうしよう。私のうちだったらたぶん造船に関する本があった気がするんだけど。」
「じゃあ、ネネの家行こうよー。」
「ええ?」
「イオの言うとーり、今はそーするしかなさそうだな。」
「ネネ様の家、めっちゃめっちゃ行ってみたいです。ネネ様のにおいがついている物を残らずとってきましょう、うししししし。」
心の声が駄々洩れなのですけど。
「みんなで押し掛けたら迷惑じゃないか?」
マコトがネネの言ってほしかったことを言ってくれた。
「うん、そうですね。」
「じゃあ、僕たちは学校で資料を集めるから、女子で行ってきなよ。」
いや、そこは一人で行って来たらじゃないのですか。スミレを家に連れて行くのは不安しかないんですけど。
「あ、はい、そうしますね。」
ネネは本心をひた隠しにしながら、そう言った。




