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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
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1-32.はじめての課題1


 次の日の授業では、先生にそれぞれ名前を報告した。みんなそれぞれの使い魔と仲良くなれたらしい。ディアは昨日ヘイドに買ってもらった服を着て、ヘイドにべったりとくっついていた。まるで彼女のものであることを見せびらかしているように。ヘイドはもう慣れていたみたいだった。

「昨日授業が終わった後、ネネとヘイドの使い魔についていろいろ調べてみたんだけどね、まずはネネのから、その子はこの世のものではない何か、人間には触れることが許されない何かなんだよー。だから、普通の人間には見えない。しかし、どこの世界でも普遍的に存在する魔法によってのみ視覚されるんだと思う。見えてないのは日頃から魔力感知によって対象を認識していない人、魔力量が少ない人のどちらかなー。

 ヘイドの使い魔についてはその子が持ってた情報以上はわからなかったよー。でも、『闇の魔法使い』のことなら少しわかった。どうやら千年前にいたようだねー。ちょうど大魔術師時代のことだね。私は会ったことないけど。」

 この世のものではない何かって何ですか?こんなに愛しいのに。愛しいからでしょうかね。

「そうですか。」

「そうなんだよ。じゃあ、今日から本気で授業するよー。」

「昨日までは本気じゃなかったのかよ。」

サヤカはつっこんだ。

「ん?何か言いましたか?宿題倍にしますよー?」

「なんでもないです・・・」

「一限目は歴史です。別に魔法史ではないので、普通の人もいっぱい出てきますよ。」

 歴史は総合的な歴史の学問のことで、そこから魔法史、魔族史、人間史などと詳しく細分化される。

「今日は二千年前の世界大戦のことから授業をします。それより前のことは資料が少ないのであまりわかってはいません。所謂神話の時代ですね。魔帝が神々を滅ぼす前の時代です。まず、世界大戦が起こった経緯ですが、様々な原因があります。まずはドワーフ王国、アソ魔国、南ラスフェ共和国が冷戦状態となります。これが今から二千五百年前のことです。

しかし、冷戦の氷は解けてしまいました。その原因と言われているのが産業革命です。蒸気機関によって技術が発達しました。それに伴い武器の改良などが行われました。また、三国は軍事力を支える大きな経済基盤を産業革命によって手に入れたのです。

しかし、この産業革命が一番成功したのがこの三国ではなく、クルメ帝国という国でした。そして、この国は有り余った軍事力と経済力を外に向けます。まあ、当然の流れですかね。そしてアレ暦五年に周辺国を占領し、領土を拡大します。これが世界大戦の始まりです。クルメ帝国はノイン大陸西部を占領します。しかし、ノイン大陸東部を支配していたアソ魔国は黙ってみているわけではありません。


そして、この時かの国の魔王だったのがアルフェナ様です。しかし、実質的には次期魔王のアレ様がクルメ帝国に宣戦布告。彼女の類まれない戦の才によってアソ魔国は一年足らずでクルメ帝国を滅ぼし、翌年、ノイン大陸を領土とします。

これを脅威と考えた大国である、ドワーフ王国、南ラスフェ共和国、そして今のノーズ大陸全体を支配していたノーズ帝国は同盟します。しかし、その時内戦がおこっていたノーズ帝国はあっけなく滅亡して、アソ魔国の領土となります。そこからはまた五年間の冷戦状態が続くのです。その間、南ラスフェ共和国は現在のシズオカからアオモリを占領、ドワーフ王国はヴィア大陸を占領。実質的にはアソ魔国(以後ノイン帝国)が世界の半分、そして同盟国がもう半分を支配するという体制でした。

この均衡を壊したのが、ノイン帝国で起きた魔法革命です。これによってノイン帝国は圧倒的な軍事力を獲得し、ほかの国々の各個撃破を図ります。最初にラスフェ大陸最南端のシモノセキに上陸、そこからラスフェ大陸を北上していきます。そして、現在のトヤマ、ナゴヤを結ぶ線で南下してきた南ラスフェ共和国とぶつかり、戦線を作りました。

また、ヤマガタ、センダイを結ぶ線でも戦線を形成。その間にノイン帝国はドワーフ王国を滅ぼします。そして、アレ暦十五年に戦線を突破し翌年最後の砦であった、ミト、オダワラ、ハチオウジ、ウツノミヤが次々と陥落し、最後には首都のエドが占領されて、ノイン帝国は世界を支配するようになりました。

これは概要で、これから詳しく二千年前の大戦について話していきますねー。

・・・」

 まあ、このようにとんとん拍子で授業が進んでいった。この時代のことはお母様がよく話をしてくれたものだった。このあと午前中はずっとこの話を聞いて過ごした。


「にしても魔帝ってすごいよなー。」

カイが昼食を食べながらケリンに話しかけた。ちなみにアレのことを魔帝と呼ぶ人も多い。

「うん、そうだね。経った十一年で世界を支配するなんてスケールが大きすぎるよ。」

「でもなんで世界を支配しようとしたのかな?だって戦争って人殺しちゃうんでしょう?」

イオが割り込んできた。

「確かに歴史上で一番人を殺した人は魔帝だとされているよ。」

「へー、マコトって物知りだね。」

イオは彼を誉めた。

「たぶん平和な世の中を作ろうとしたんじゃないかな。」

ヘイドが口をはさんだ。

「まあ、とにかくすごい人だったってことだよなー。」

「でも、平和な世を作るためにと言って人をたくさん殺していいのでしょうか?ネネ様?」

「ん、それ以降戦争が少なくなったのを考えると相対的に見ればよいと思うのですが、人を殺すというのはよくないことだと思います。家族を失った人の悲しみは計り知れないものでしょうし、それが正当化される世界というものはおかしなものですよね。」」

「そうですよねー。」

 スミレはネネのお膝に抱き着いてきた。

 この人は一体何なんですか、かわいいけどやたら滅多くっついてくるんですね。

「まあ、それぞれ言いたいことはあるんだろーけどよ。俺たちがここで話しても過去は変わらないんだぜ、過去は。」

 サヤカがテーブルに肘をつきながらそう言った。

「そうだな。」

 ヘイドが同意した。

「でも、これから戦争が起こるかもしれないのだから、考える価値はあるよ。」

「あん?お前、戦争なんて起こるわけねーだろ。こんなに平和なのによ。」

「いや、十年以内に戦争が起こる可能性は高いと思う。この頃政府が税率を引き上げたりしていて、人々の不満がたまっているからね。」

「人々の不満がたまっているだけで戦争になるのかな?」

イオが聞いた。

「うん、民衆を率いるリーダーがいれば反乱がおきて、そこから新たな国ができることは有り得る。そして、その国を帝国が黙認するわけにはいかないからその時は戦争になると思うよ。」

「ほー。じゃあ、本当に戦争になるんだな?」

「絶対ではないけどね。帝国がこのまま政治をしていれば経済にもしわ寄せがきて人々の生活が苦しくなることは間違いないと思う。」

「お先真っ暗だな。」

カイはサンドウィッチを食べながらそう言った。


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