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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
33/129

1-31.使い魔2



 次はヘイドの番だ。ヘイドはレイリ先生のもとへ行った。

「俺、魔法一切使えないんですけど。」

「あー、そー言えば特別枠だっけ?大丈夫だよー。魔法って本当は誰でも使えるから。」

レイリ先生は他の人にやったように、肩に手を置き、魔力を送った。ヘイドは不安だったが、とりあえず呪文を唱えた。

 ヘイドの手からもちゃんと光が出た。しかし、それは黒色の光だった。その光は地面に落ちた。そして、目の前が真っ暗になった。

 視界が開けるとそこには尻尾とコウモリのような翼生やした、黒髪、黒い眼の露出が多めの女の子がいた。年齢はちょうどヘイドたちと同じくらいだった。

「ご主人様―。」

その女の子はヘイドを見るなし抱き着いてきた。ヘイドは勢いに押されて、床にことんと座った。そして、体が密着すると二人は黒い光に覆われた。ヘイドは何が起こっているのかわからなかった。そして、混乱した。彼女の胸がヘイドにあたっているのに気が付いた。ヘイドは真っ赤になった。

「契約は、まあ、完了じゃなー。最近は少女を使い魔にするのが流行っているのかなー。」

レイリ先生は呑気なことを言った。

「いいなー、あんなに可愛い子を使い魔にできるなんて。」

「下心が駄々洩れですよ、カイ。もう一回死ぬ思いをしたいですか?」

 ネネは全く反省していないカイを脅迫した。

 その一方ヘイドはよくわからなくなっていた。そして、体がひどく疲れていた。恐らく魔法を使ったからだろう。ヘイドは無理やりその少女の抱擁を解き、彼の前に座らせた。

 そして、かしこまった。

「君は?」

「申し遅れました、私はディアと申します。『闇の魔法使い』であるご主人様に仕える悪魔でございます。」

ディアは改まって答えた。なんだか新しい情報が多い。

「悪魔?」

「左様でございます。私たち悪魔は決して人間に仕えることなく隠れ里でひっそりと暮らしております。しかし、『闇の魔法使い』に召喚されたときのみそこへ出向き一生仕えるのです。」

「・・・・」

誰も一言も言わなかった。悪魔と言えば、神話の時代に悪さをして、神々を困らせたという記述のみしかネネは知らなかった。

「『闇の魔法使い』って何?」

「それは、千年に一度現れると言われている闇の魔法が使えるもののことでございます。悪魔はこの世に『闇の魔法使い』が生まれると同時に生まれ、隠れ里で召喚されるまでくらすのです。」

「ふーん。でも、俺は魔法が一切使えないんだ。」

「ご主人様、あなたが私を召喚した時点で魔法は使えるようになるのです。私にもよくわかりませんが、『闇の魔法使い』は悪魔と契約をしないと魔法は使えないようなのです。」

「はあ。」

 ヘイドはもっと聞きたいことがありそうだったが、レイリ先生が仕切り直した。

「まあ、みんな使い魔を召喚できたからいいじゃないかー。」

 よくもまあそのようなこと言ってられますね、ネネはそう思って自分のかわいい使い魔を抱きしめた。

「じゃあ、今から使い魔とは何ぞやと言うことを説明して行くよー。」

レイリ先生は黒板の前に戻った。

「使い魔とは要するに魔術師や魔法使いにとっての忠実な召使ですよー。人違って絶対に裏切るということはありません。そして、使い魔には高い任務遂行能力があります。例えば、私が私の使い魔にネネさんを尾行してくださいと言えば、確実に尾行するのですよー。ストーカー行為ですけど。しかし、魔法使いはその使い魔に対価を与えなければなりません。それは何でしょうねー?では、ケリン。」

ケリンはびくっとした。どうやらぼーとしていたようだ。しかし、質問内容は聞いていたらしい。

「魔力ですか?」

「質問を質問で返さないでよー、まあ、合ってますけど。そう、魔力、正確に言えば魔素なんですけどねー。それを一割ほど吸い取られるのですよ。しかし、それは大きな問題ではありません。体内の魔素はそれに加わる負荷が大きくなるにつれて、全体の容量及び体内で生産される魔素が増えるのですよー。そして、魔素を吸い取ることによって使い魔は主人の考え、思考、感情などをくみ取ることができるんですー。だから、大体一年くらいすると使い魔と会話ができるようになるんですよー。」


ほうそれは面白いですね。この子と会話ができれば、楽しそうです。

「でも、しっかりと愛情をもって育てないと使い魔は心を開いてくれないからねー。はい、じゃあ今日の授業はここまで、明日までに使い魔に名前をつけて今日は一緒に遊んであげてねー。」

ネネ先生はそう言ってどこかへ行ってしまった。


 こうして、私たちはその日は暇になった。

「ご主人様、何して遊びますか?たーっぷり愛情注いでくださいね。」

ディアはとろけそうな甘い声でそう言った。

「いいなー。」

カイが羨ましそうにそう言った。

「とりあえず、ちゃんとした服を買いに行こう。」

流石にそうですよね、露出が多すぎますよね、特に胸元とか胸元とか。ネネはディアの大きな胸を見て羨ましく感じたが、よう考えてみたら、肩こりますよねと思い邪心を捨てた。

 ヘイドはそのままブティックへ行くのかと思ったら、ネネの前に来た。

「ネネ、あ、あの俺ファッションセンスとか全くなくて、よかったら一緒に来てくれない?」

 ヘイドはなぜか少し照れながらそう言った。

「いいですよ。私もなんかこの子にあれば。」

「俺にはネネが空気を抱えているようにしか見えないんだよね。」

「この子が見えないんですね。では、触れるのですか?」

「触っていいの?見えないけど。」

「ここら辺に頭がありますので。」

 ネネは見えないヘイドのために指をさした。

「どれどれ。」

 ヘイドはネネの指したあたりに手を伸ばした。そして、見えない何かに触れた。つやつやとしていた。

「おお。なんかめっちゃ面な感じだ。」

「確かにいることはわかりましたね。この子はめっちゃ嫌そうな顔してますけど。」

「もしかしたら、人に触られたくないから姿を隠しているのかも。」

「そんな理由ですかね。」

「俺、嫌われたかな。」

「さあ。」

 

ネネは使い魔を抱きながらそう言った。そして、四人、使い魔は人に入るのかはわからなかったが、は学校の外れにある服屋へと行った。

 ヘイドとネネは歩いている間、何も話をしなかった。ネネはずっとこの子の名前は何がいいかを考えていた。ヘイドの使い魔も余程おかしかったのだが、種類がわかっているだけましだった。ネネの使い魔は一体何なのか見当もつかない。普通の人間であればぷかぷか宙に浮かぶこともできないし、このようなことは物理学的には有り得ないのだ。

 不思議すぎますね、かわいいからいいですけど。ネネは使い魔の名前をフタバにすることにした。

 ネネは急に立ち止まり、胸に抱いている使い魔に向かってこういった。

「あなたの名前はフタバですよ。」

 フタバはネネの言葉を理解したのであろうか、こくりと頷いた。

「急だね。」

「いま、思いついたもので。」

「いい名前だと思うよ。」

「ありがとう。」

「そういえば、こんな風に歩いてるとアソの村で二人で一緒に見て回ったのを思い出すね。」

「そうですね、ちょうど一年前くらいのことですね。」

「あの時は楽しかったな。」

 そこでネネはある視線に気が付いた。それはヘイドの使い魔のディアからだった。なぜが意味ありげな視線を向けてくるのだ。羨ましがっているのか、疑っているのかそのような視線だった。

「はい、楽しいデートでした。」

ヘイドはまた赤くなった。そして、黙り込んでしまった。たしかにあれはデート言えるのか、もはやこれはネネのことが好きだと言っているのと一緒なのか、俺の恋心がばれてしまったか。

 しかし、その一方でネネは男性と女性が一緒にどっかいけばデートと思っているのであり、決して告白の意味合い、好きの意味合いがあるなんて知らなかった。

「あ、あ、そうだな。」

ヘイドは表情が表に出ないように頑張って取り繕ってそう言った。だが、ディアはネネのように鈍感ではなかった。

「ははーん、さてはご主人様はネネのことがお好きなのですね。」

 ディアはヘイドだけに聞こえるようにそう言った。ヘイドはまた赤くなった。

「まあ、わかりますのでいいのですが。」

「・・・」

 ヘイドは黙っていた。そうしているうちにブティックに着いたのだった。

 ネネはディアにフリフリが付いたワンピースを選んであげた。そして、フタバにも服を選ぼうと思ったが流石に子供用の服は売ってなかったので作ってあげることにした。そこで、ネネは白い布、紺色の布、チェックの布を買った。

 ネスト(アルティの部屋)に戻るとネネは早速フタバの服作りに取り掛かった。面倒なので魔法で作ることにしたのだが、魔法で服を作るのは大変だ。綿密な設計と採寸、完成図をしっかり頭で思い浮かべないとできない。処理する情報がとても多いのだ。ネネはそう言った情報処理は得意だった。まずフタバの体を空間魔法によって測量、その情報を頭に記憶する。そして、頭の中で半径二センチメートルくらい余裕を持たせて服の骨格を作っていく。あとはデザインだ。考えるのが面倒だったので、この学校の制服の縮小版を作ることにした。

 この学校の制服はかわいいですからね、あと、ディアみたいに悪目立ちせずに済みますし。ワイシャツ、チェックのスカート、冬になったら着るブレザーをフタバの体に合うように構築して、襟、ボタンなどの微調整をして、完成ですね。あとは、布やらを用意して、構築プロセスをイメージしてそれを術式として解き放つ。

「はあー。」

ネネは力強い声を出して、魔法を使った。隣でぷかぷかしていたフタバは何事かみたいな顔をして、布を様子をじっくりと見ていた。ネネから放たれた魔法は正確に布を裁断し、服のパーツを作っていった。

 フタバは目を大きくしながらそれを眺めていた。布切れは裁断されると自ら端の糸がほどけて他のパーツと結びついた。そしてあっという間にフタバの服が完成した。

ネネは出来上がったばかりの服をフタバに着せてあげた。

「うん、かわいい。めっちゃかわいいよ。」

ネネはそうフタバに向かって言った。フタバはそこら中を笑って飛び回った。

「嬉しそうで何よりです。」

 ネネはこのあとパジャマと洗濯用のワイシャツとスカート作ったのだった。


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