1-29.ソフィア2
女子たちはその後風呂に入ることにした。
「サヤカは入らないの?」
「おう、俺は一人で入るのが好きだからな。」
「そうなんだ。」
脱衣所でみんな服を脱いだ。
「ネネ様の裸が拝める、えへ、えへへへ。」
スミレは一人でニヤニヤしていた。
あ、変態ですね。やばいですね。ネネは少し身の危険を感じた。
「イオ、こんな大きな風呂入るの久しぶりー。」
「私もです。」
「・・・」
ネネは何も言わなかった。
「こんな大きいお風呂入れるなんて、まじ天国。」
イオは一足早く着替えてお風呂のほうに行った。
ネネはかけ湯をしてから、湯船に肩まで浸かった。とてもあったかくて気持ちよかった。
「はあ、」
ネネは思わず息を漏らした。
「やっぱ、お風呂はいいなー。」
「そうですね、とても気持ちいです。」
「ネネ様―――。」
いきなりスミレがネネに向かって抱き着いてきた。スミレはネネの胸の中に飛び込んで、顔をすりすりした。
あなたコミュ障じゃないんですか?やってること陽キャとういうかただの変態ですね。
「あの、やめてください。」
「やめません、ネネ様の生身に触れられるなんてなかなかないですから。」
「減るものじゃないからいいのですが、私はゆっくりしたいのです。だから、どいてくれませんか。」
スミレは満足したらしかった。
「はーい。」
彼女はネネが座っているすぐ横に座った。
「スミレちゃんはネネちゃんのことが好きなのー?」
「あ、え、はい。」
スミレはしょんぼりとした声で答えた。
さっきまでの元気はどこに行ったのでしょう?他の人にはコミュ障を発動させるのですね。
「スミレちゃんはどこ出身なのー?」
イオはすぐに違う話題を振ってきた。
「あ、私はラスフェ大陸のイガ出身です。」
イガはラスフェ大陸中部にある都市である。地理的には世界の反対側にある。
「イガだったらなぜキョウ高校を受験しなかったのですか?」
「それは、ネネ様がいるからですよー。」
スミレはなぜかまた元気になって少しデレデレしながら答えた。
人によって態度かえすぎですよね?しかし、イオは気にしていないようだった。
お風呂の後にご飯を食べて、みんなは疲れたので寝ることにした。女子部屋は、ベッドが五つ横並びになっていた。スミレはネネの横で寝たいと主張したが、嫌な予感しかしなかったので、イオにネネの隣に寝てもらうようにお願いした。
「いいよーん。」
彼女は微笑んですんなりと受け入れてくれた。その晩、私はイオにこの数日間ずっと気になっていたことを聞いた。
「カイに『俺のものになれ。』と言われたのですが、それは具体的にどういうことなのですか?」
ネネは恋愛についての知識が皆無だった。知っているのは男性と女性が結婚すると子供ができるということ。そして、男性は気軽に女性に触ってはいけないということだけだった。アンジェラ家の図書館には小説がなく、勉学の本だけしかなかった。それに外に出ることもなかったので、恋愛の知識を得られなかったのだ。
「それはね、自分の彼女になってほしいというだよ。」
「彼女とはあれですね、男性とお付き合いする人のことですね。」
「そうだよ、本来なら告白と言ってね。もう少し丁寧な言い方をするんだけど。」
「あとは、恋愛感情というものはどういうものなのでしょうか?」
「大雑把に言えば異性を好きになることかな。人にもよるけど、イオだったら相手のことが気になって眠れなくなるとか、常にその人のことを考えてしまう、胸がはちきれそうになったりする、その人といるとドキドキするとかかな。なんだか言ってたら恥ずかしい。」
「イオはそのようになったことがあるのですか?」
「うん、一回だけ。ネネちゃんは?」
ネネは暗い天井を眺めながら考えた。そもそも、同じくらいの歳の異性と関わったことがあまりない。
「うーん、特にないですかね。」
「まあ、そうだよね。これからできるかもね。」
「そうですかね、」
ネネは不安そうに答えた。なんとなくそのような気持ちになる気がしないのだ。
「うーん、恋は落ちるものだから、イオもすとんと落ちたし。」
「はあ、」
ネネはよくわからなかった。そして、恋愛のことを知っているイオを大人っぽいなと思った。
「そうだよ、じゃあ、お休み。」
「お休みなさい。」
ネネはそう言って瞼を閉じた。
私はいつかそんなことになる日が来るのでしょうか?
そのような日はネネが思っている以上に早く来るのだった。




