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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
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1-23.アルティ決め5


 ネネは部屋に帰るまでがまた一苦労だった。

「あなたのアルティにいれてください。」

「私のアルティの入ってください。」

などと人々に囲まれて大変だった。そして、噂は瞬く間に広がった。

「あの、アンジェラ家の人がアタランタ家の人をコテンパンにしたぞ。」

ちょっと語弊があるような感じで。

「本当にやめてほしいですね、私は普通の学校生活を送りたいだけですのに。」

ネネはつぶやいた。部屋に帰るとカナはまだ寝ていた。ネネはまだ寝ているのですかと思った。そして、さっきカナが見せてくれたカンペが目についた。

「カンペですか。どんなことが書いてあるのでしょう。」

ネネはちょっとした興味でそれを見た。はじめの方は自己紹介や挨拶などだった。

「   こんにちは。    」

「   こんばんは。    」

そして次にはい、いいえ、などの返事があった。次にいろいろな質問に対する答えが書いてあった。

「オレンジジュースがよい。」

「キウイは嫌いである。」

「疲れたので寝るのだ。」

「千ソリしか持っていません。」

ソリとは通貨の単位である。大体百ソリでパンが買えるくらいである。このように日常会話からどこで使うのかわからないものまで、書いてあったが、一番気になったのはこれであった。

「我は竜である。」

ネネが見たとき、竜ですか、と思った。竜は魔物の一種ではあるが、知能レベルが高いので、魔獣の類とされることが多い。しかし、絶滅危惧種であり、滅多に見ることはないし、人を襲うこともない。はるか昔に竜は栄えて、国まで持ったこともあるらしい。

「これは冗談なのでしょうか?」

『いや、冗談ではない。』

 ネネは驚いた。カナは起きて来たのだ。

「まあ、何でもいいんですけどね。」

ネネはカナに気付かないふりをしながらカンペを閉じた。カナはそのカンペをすぐに回収した。


「起きていたのですね。」

カナはカンペをさーとめくった。

「そうである。」

そして、ペンでカンペになにやら文字を書き始めた。

「おぬし、やるではないか。あの、アタランタ家の娘を倒すとは。」

「どうやってわかったのですか?」

ネネは答えはわかっていた。しかし、このままでは会話が面倒くさいものとなる。それなら、今のうちにテレパシーが使えることを言っておいたほうがいいだろう。

「我はテレパシーでほかの人の考えを読んだだけである。」

「テレパシーなら私もできなくはないけど。」

『本当か?』

「本当です。」

『どうやら本当のようだな。』

「そうですよ。」

『まさか初めから我の考えを読んでいたりしないな?』

「さあ、どうでしょうね。」

『まあ、何でもよいか。それよりお主は何者であるか?このような芸当は普通の魔法使いでもできるものではないぞ。』

「私はネネ・アンジェラと申します。暇の魔女と呼ばれております。」

『質問に答えていないようだが、なぜ暇の魔女というのか?』

「それは暇の魔法が使えるからです。」

 カナはよくわからないなという表情を浮かべた。

『どのような魔法であるか?』


はたから見るとネネが独り言を言っているようにしか見えなかったであろう。

「便利な魔法ですね。」

ネネはあまり詳しくは答えなかった。どうせ、魔法使い同士は同じ組にはなれない。だから、手の内を晒すことはしたくなかった。そして、ネネはカナにそのような質問を一切しなかった。

 会話はこの後も続いたが、特に大したものではなかった。


 夕食の時間になった。夕食はバイキング形式であった。大広間のようなところで600人くらいの生徒が混み具合は時間帯によるが、食事をする。もちろん自室のキッチンで何か作ってもよいのだが、入りたての一年生にそのような余裕はない。しかし、ひと月もすると女子の多くは自室で作るようになるらしい。バイキングのメニューは一週間に一回くらい同じものが回ってくるので、飽きてくるそうだ。

テーブルは、二、三年生は組ごとに用意されていて、十人掛けの円卓であったが、一年生はまだ組がないので、普通のテーブルや小さい円卓が用意されていた。一年生も一週間後には二、三年生のようなテーブルになるらしい。


 ネネはカナと一緒に座った。少しは仲良くなれた気がしていた。ただし、公でカナはしゃべることは絶対ないので、ネネもテレパシーを使うことにした。独り言を言っている変な人だなと思われたくなかったし、目立ちたくもなかった。

もちろんご飯の時間でさえ、いろいろな人がネネとカナを勧誘してくる。それを華麗に無視しながら、彼女たちは会話をした。

『そういえばカナは入る組を決めたのですか?』

『いや、まだだ。目星は付けたのだがな。』

『そうなんですか。』

話しているうちに、ヘイドがやってきた。


「隣いいかな?」

「いいですよ。」

ネネは答えた。リテラはいないようだった。

「どうでした、彼女の様子は?」

「リテラのこと?体に異常はないみたい。まあ、負けて悔しがっていたけどね。どうして、試合の申し出を受けたの、君らしくないのに。」

果たして、私とこの人は理解しているような仲なのでしょうか、彼はそう思っているようですけど、ネネは思った。

「あれはやらないと言っても聞かないからですよ。ああいうのは一回潰せばしばらくは黙っていますからね。」

ヘイドの中でのネネの印象が少し変わった。

「そうなんだ。で、アルティのことだけど、誰を誘うの?」

ヘイドは話題をそらした。本題はこれであるのだけど。

「私は知り合いはいないので、とりあえず、良さそうな人を誘おうかなと思っています。」

「俺はなんか掲示板にお知らせでも張ったほうがいいと思うのだけど。」

「それもいいかもしれませんね。では、面接でも行うとしましょうか。」

「あと、個人的に一人入れたい人がいるんだけど。食事のあと時間ある?」

「ええ、いいですよ。食事を終えたら、会ってみましょう。入れるか入れないかは私が決めます。」

ネネは人を見る目があった。貴族のパーティーなどでいろいろな人と接する機会が多かったからだ。

「この人は?」

ヘイドはネネの隣に座っていたカナのことを聞いた。

「この方はカナですよ、私の今のところのルームメイト。」

「今のところの?」

「ええ、この学校ではアルティごとに部屋が決まるの。だから、今の部屋は一週間でおさらばってこと。」

「へー、そうなんだ。」


 食事を終えると二人はケリンのところへ向かった。まあ、ヘイドの部屋である。ヘイドはケリンをネネのアルティに入れたかったのだ。

「こちらが、ケリンだ。」

ヘイドはネネに紹介した。

「夜中に来てしまってすみません。ネネ・アンジェラと申します。」

ケリンは慌てているようだった。

「あ、い、え、僕はケリンと申します。よ、よろしくお願いします。どういったご用件で?」

「ヘイドさんがあなたを是非私のアルティに入れてほしいと言われまして、どのようなお方なのか、見に来た次第でございます。」

「ぼ、僕をネネ様のアルティに?」

ケリンはひどく驚いた様子だった。

「はい。」

「え、でも、僕なんの才能もないですよ。世界トップクラスの魔法使いのネネ様のアルティなんて、恐れ多い。」

「まだ、入れるなんて一言も言ってませんけどね。」

「そうですよね・・・」

ケリンは少し落ち着いた様子で言った。

「ええ、でもあなたは気に入りましたので、是非私のアルティに入ってください。」

「本当ですか?」

「はい。」

「これ、夢じゃないですよね?」

ケリンはあふれんばかりの笑顔でそう言った。

「夢じゃないですよ。」

ネネが帰った後もケリンは興奮して全く夜も眠れなかったらしい。こうして、ケリンはアルティのメンバーになった。ヘイドはなぜネネがケリンを入れたのはわからなかったが、本人たちは喜んでいたのでよしとした。


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