1-22.アルティ決め4
リテラは目を覚ますとそこには知らない天井があった。白く、明かりが所々ついている。リテラはどうやらベッドに寝かされているようだった。リテラは起きた。そこはどうやら保健室のようだった。横にはヘイドが座っていた。
「起きた?」
「見たらわかるでしょ。」
「うん。ちょっと先生呼びに行くね。」
すぐにヘイドは戻ってきた。その後ろには大柄でスキンヘッドのおじさんがいた。
「嬢ちゃん、気分はどうだい?」
「この人は?」
リテラは何もわからずにいた。
「俺はな、あれだよ、保健室の先生のデイヴィッドだ。」
こんないかつい先生が保健室の先生なんだ、とリテラは思った。
「初めまして、気分は大丈夫です。」
「そりゃよかった。まあ、毎年のことなんでな、慣れてはいるが。」
「毎年のこと?」
「ああ、一年生は大体力を示すか、力比べをしてアルティを決める人がいてな。毎年のようにけが人が出るんだ。決闘だがなんだが知らないがやるのが悪いんだよ。で、毎年のようにけが人がここに来るってわけさ。本当にいい迷惑だよ。」
リテラは思いあたることがあり、少し目をそらした。
「へー、そうなんですか。」
「私ってどうやって負けたの?」
リテラはヘイドのほうに顔を向けた。少し首が痛む。
「あ、え、まあ、大きな炎に飲まれて気絶したみたいな感じかな。」
「うーん。」
「まあ、ゆっくりして気分が落ち着いたら自分の部屋に戻りな、なんかあったら俺は隣の部屋にいるから呼んでくれ。」
「あ、はい。」
デイヴィッド先生は出て行った。
「無茶するからだよ。」
「あれは無茶じゃないと思ってた。私は圧勝するつもりだったのよ。なのにあの、憎たらしい女は、攻撃を全部受け止めて、たった二つの魔法で私を倒したのよ。」
リテラは悔しそうだった。
「要するに実力差がありすぎたってことだよ。」
「うーん、今はそう言うしかないわね。納得できないけど。」
「そういえば、ネネがヘイドは私が貰うわ、って言ってた。」
「はあ、まあ、仕方にわね。勝負を持ち掛けたのは私だし。」
リテラは自分の部屋に戻ってまたベッドで横になった。そして、いろいろなことを考えた。リテラはやはり現実を受け止めることができなかった。小さいころから、魔法において人より劣っていたことはなかった。
そして、いつしか自分は魔法においてなら負けることはないと思い込んでいた。初めての敗北であった。ネネは本気を出しているようには見えなかった。時間を止める魔法は破られるはずがない、そう信じ切っていた。理論的に不可能であるからだ。しかし、あの人はそれをすんなりとやってのけた。そして、その上リテラの魔法を一瞬にして見破った。
これらはリテラにとって屈辱であった。彼女の面目は丸つぶれであるし、家名に泥を塗ったようだ。リテラは今更やるべきではなかったと後悔した。
そもそも、これはリテラの早とちりのせいでこうなったのだ。別にネネはヘイドをたぶらかしていないことはリテラも知っていたが、彼女はネネとヘイドを引き離したかった。別にヘイドとほかの女子がしゃべっているのを見ても何も思わない。
しかし、ネネと話しているときはそれを壊したくなる。ヘイドは私にしてくれない表情をネネに向かってにだけしているとリテラは思った。ヘイドはネネと話しているときは恥ずかし気でどこかかわいいらしい表情を浮かべていたのだ。それが耐えがたく、ヘイドを独占したいという思いでいっぱいになった。
たぶん私はヘイドに恋をしているんだろうとリテラは思った。自分の行動を冷静に見てみるとヘイドには異常に好意を寄せている。そもそも、ヘイドと同じ学校に行くためにここを受験したのだ。当時はただ幼馴染と一緒にいたい気持ちがあっただけだと思っていた。それは恋だったのだ。
「はあ・・・」
リテラはため息をついた。恋は盲目であるとはよく言ったものだなと思った。リテラはなぜかネネに負けることですべてを失ってしまったように感じた。ヘイドが主体的に話しかけていくのが許せなかった。しかも、においで当てるなんて。リテラはそれを見てネネにすべてを負けているような気がした。容姿も頭脳も何もかも。だから一番自信のあった魔法で勝負をした。しかし、それでも負けてしまった。もはや自分の中には何もない。自殺する人の気持ちが少しわかったような気がした。
「恋ねー・・・。」
リテラは寝返りを打った。そして、そのまま寝てしまった。




