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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
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1-17.クマ高校3





 その少し前、リテラはヘイドと別れた後、三階に向かった。茶色の絨毯の上に荷物を転がしながら廊下を歩いていた。リテラは、自分の部屋番号を探しており、前を注意していなかった。

 どん、と音がしてリテラは床に倒れた。一体何が起こったのかわからなくなった。天井の明かりがまぶしい。リテラは体を起こした。

 ぶつかった相手の人は倒れてはいないものの、ふらっとしていたようだ。

「申し訳ありません、大丈夫ですか?」

ぶつかってきた女性はそういった。リテラはの人を見上げた。そこには、可愛らしい黒髪、黒い瞳の女性が立っていた。その女性は、長い髪に桃色の花のヘアピンをつけていた。リテラは思わず見とれてしまった。

「ええ、大丈夫よ。」

「ずっと部屋を見ていてぶつかってしまいました。申し訳ありません。」

彼女はどこか人をひきつけないような声で言った。

「私こそ、前を見てなかったの。ごめんなさい。では、失礼するわ。」

リテラはそう言って、今度は前に注意して部屋を探した。何せ、一階に部屋が五十以上存在するのだ。慣れていないと迷う。

 そんなこんなあったが、リテラは部屋にたどり着いた。ドアを開けたとき、またどん、と音がした。今日は運がよくないらしい。

「痛ってー。」

どうやら中には人がいたようである。リテラは相部屋だということは知っていたが、まさかドアのすぐ向こうに人がいるとは思わなかった。

「ごめんなさい。」

リテラはやっとドアを全開にして部屋に入った。

「てめえ、何しやがるんだ。」

その人は女性らしからぬ強い口調でリテラを責めるように言った。

「すみません。あなたが私と相部屋の人ですか?」

「ん?見たらわかるだろ。」

リテラはこの人は好きになれない、こんな人と相部屋なんてついていないなと思った。

「私リテラと申します。よろしくお願いします。」

「ああ、俺はサヤカだ。よろしく。」

口調の割にはかわいい名前だなと思った。

 部屋は広かったので、お互いのスペースを決めて、リテラは荷物の片づけをした。その間、リテラはサヤカに話しかけた。

「どこから来たの?」

「あん?なれなれしいな。まあ、いいだろう。俺はノイン大陸のオオイタから来た。」

「へー。」

「お前はどうなんだ?」

「いきなりお前呼ばわりなんだ。」

「ん?なんか言ったか?」

「いや、私はダザイフから来たよ。」

「ほーん、帝都から来たのか?ひょっとしてお前貴族か?」

クマ高校は入学者の三分の一は貴族であったので、そこまで珍しいものではなかった。

「ええ。」

「俺は相手が誰であろうとへりくだったりしないからな。」

思わず、逃げたくなるような鋭い視線をサヤカは送った。

「別にいいですよ。」

リテラはなんだか幼い男子と会話しているような気分になった。彼女はどうやってこの学校に入れたのだろうか、不思議になった。

「で、どのくらいの身分なんだ?」

興味ない割には興味あるんだなとリテラは思った。ここは一泡吹かせて見せましょうかと思った。

「私は十人衆アタランタ家のものです。」

サヤカは驚かなかった。その代わり面倒なものと一緒になってしまったという顔をした。こっちも面倒なんですけどとリテラは思った。

「そうか、ああ、めんど。どうせお嬢様なんだろ。はあ。」

サヤカは大袈裟にため息をついた。

「別に迷惑かけないので、」

「俺は貴族が嫌いなんだよ。」

それから二人は黙り込んだ。


 続々と生徒たちが中庭に集まってきていた。中庭はそこまで広くはなかったが、300人くらいは普通に立っていられた。中庭に着いたリテラは、ヘイドと合流した。さっきのこともあり、気が沈んでいたが、ヘイドのことを見て少し元気が出た。

「どうだった?」リテラは聞いた。

「ああ、相部屋の人は好さげな人だったよ。」

「そう、よかったね。」

「そっちは?」

「え、あ、貴族嫌いの口の悪い人だった。」

「ふーん、それは、まあ、仲良くなれば大丈夫だよ。」

「そうだといいけど。」


 生徒が集まる中庭をじっくりと見つめる二つの影があった。

「どうでしょう、今年の新入生は?コバルト校長?」

コバルト校長と呼ばれた、髭の生えた老人は新入生の様子を見た。

「ふむ、四人ですかな?アルベール先生。」アルベール先生と呼ばれたほうはまだ若く、眼鏡をかけていた。

「そうです、魔法使いの称号をすでに持っている者が今年は四名も入学してきました。」

「例年は一人いたらすごいのにな。」

「今年は異例中の異例です。あと気になるのが二名いますかね。」

「それは、魔法使い並みか?」

「一人はそうですが、もう一人はまだ・・・」

「ほっほ、そうか、今年は楽しみじゃな、アルティ分けが。」

「そうですね。」

二人は降りて行った。


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