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カミトキ  作者: 稗田阿礼
第一章 学園編
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プローグ

 ある寒い雪が降る夜、二人は戸口の前で話をしていた。

「エレ・・・この子をよろしく頼む。この子を普通の少女として育ててくれ。」

「メイドとしての役割ですか?」

「そうだ。これが最後の仕事だ。僕は殺される。運が良くても永遠に封印されてしまう。」

「もしかして・・・」

「ああ、シモエは僕を裏切るつもりだ。」

「行かないでください、私は・・・」

エレと呼ばれていた女性はきれいな緑色の瞳を持っていた。そして、その瞳が徐々に潤って家から漏れ出る光を反射させ、一層美しく見える。

「そう泣くな、僕だって死ぬのは怖いさ、でもこれも歴史の流れで、僕の運命なんだよ。」その人は笑った。エレは知っていた。その笑顔にはどこか悲しいところがあった。


「僕が安心して死ねるのはエレが僕の娘を育ててくれるからさ。」

「私にはこんな大役務まりません・・・」

「僕に頼れるのは君しかいないんだ。この子を帝国から守れるのは君だけだ。僕が死んだら、シモエがこの世で最強になる。その脅威からこの子を守れるのは君だけだ。僕の最後のお願いを聞いてはくれないか?」


しばらくエレは黙っていた。エレの口からは白い吐息が出た。

「わかりました、してこの子の名は?」

「名はネネだ。名字は君のものを与えてくれ。」

「では、ネネ・アンジェラですね。」

「ネネ・アンジェラ、どうか幸せに生きておくれ。」

 その人は最後にその赤子を抱えた。そして額に接吻をして、どこかへ飛んでいってしまった。

 エレはその赤子を守るようにして抱いて、舞い落ちてくる雪を見た。そして、もの惜しそうにして扉を閉めた。


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