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第8話 ハーレム

聖が俺たちの前から姿を消した、というより捕まって連れて行かれたという方が正しいか。



宰相の部屋から戻るとすでに聖は連れて行かれたようだった。


被害者のハンナはグレースとともにまだ俺の部屋に居る。

今は薬で眠っている様だ、一日中暴力を振るわれていたようだし少しでも休んでいて欲しい。


ハンナは聖がやらかしたことの生きた証人でもあるから、念のため目の届くところに置いておきたい。

知らないうちに消されてたりしたら寝ざめに悪いからな。


グレースとは仲がいいみたいなので、もうこのままここに居たらいいんじゃないかって言ったら、

まだ部屋に居た泉と谷、祭が男の部屋に弱った女性を置くのはどうか、と言い出す。

なぜか王女もやってきて参加し出し、俺は部屋から追い出された…自分の部屋なんだがな。


そもそもなんで王女が俺の部屋に来たんだ?何の用かわからないがほったらかしで盛り上がっててもいいのか?


どっちにしろ俺が考える事じゃないし、追い出されるとすることもないので、書庫に向かうことにした。

そういや今日の食事はどうなるんだろうと、朝も食い損ねたのでぼんやりと考えながら歩いていく。


この時の俺は自分の隠しスキルの効果のことを完全に忘れていた。





「ハンナさんは"聖女"のスキルを持つ私の部屋で預かるわ」

「そうね、桂とは言え男だし、あんなことのあった女性なら男と一緒はつらいでしょうね」


「それとグレースさんだっけ?彼女も桂のとこから外したりできないかな?」

「勇者様のお世話としてメイドは必要ですわ。それにカツラ様なら彼のような乱暴は働かないでしょう?」


「ふうん、王女様って桂のこと偉く信用してるんだねぇ」

「そ、そんなことはないですわ、普通ですわ、普通はメイドに手は出しても乱暴までは働かないものです」


「あっ動揺してる。でも普通の桂はグレースちゃんを手籠めにしちゃうんだね。乱暴じゃないカツラにグレースちゃんもその気になって…ふふふ」

「そ、それは困りますわ。やはりグレースはメイドから外しましょう。お世話は私がすることにしたら問題ございませんわね」

「えー、王女様自らメイドになるのぉ?やっぱりなんか怪しぃよねぇ」


「もう、祭さんも谷さんもその辺にしといてあげれば。フィアーノ王女って恋愛方面にはとっても初心で可愛いのはわかったから」

「うわぁ世奈ちゃん、ドストライクにぶっこんだねぇ。ほら王女様真っ赤になっちゃたよ」

「こういうのはちょっとずつからかって愛らしい王女を愛でるのが作法ってもんなのよ。世奈ちゃんもそのへんはまだまだね」


「そんな作法知りません!じゃあハンナさんは私が預かって、グレースさんは引き続き桂君のメイドってことでいい?」

「王女様も桂のメイドになりたがってるみたいだけど、どうするの?」

「桂の相手をするグレースちゃんをみて、我慢できなくなった王女様も一緒に…ふふふ」

「えっ?私がカツラ様とっ!?そんな、まだ早すぎますわ!」


「などと、とっても嬉しそうな顔で呟く王女様でした。」

「うんうん、王女様可愛いねぇ」


「あっ…」

真っ赤な顔でうつむいてしまうフィアーノ王女。




「まあ間借りしててなんだけど正直部屋が広すぎるし、メイドさんでもいないと間が持たないよね」

「だねぇ、一緒にお茶してお話しする人がいないとってのは桂も一緒だろうし」

「いっそのことみんなで一緒の部屋にしない?正直メイドさんだと礼儀正しすぎてこっちが気を遣うのよね」

「皆というのは、勇者様皆様ということでしょうか?さすがに4人では狭く感じるのでは?」

「ええっ、桂は当然別でしょ男だし、女勇者3人でってことよ。王女様ってそっちの話に持って行こうとしてない?」

「私は桂も一緒でもいいよぉ、こっちに来てからなんかちょっと良いかもって感じだしぃ」

「私も別に構いません。同じ世界から来た者同士固まって住むのは悪いことではないと思うので」

「うわぁホノカも世奈ちゃんも大胆だねぇ。まあ二人が良いっていうなら私も別にカツラのこと嫌いじゃないしOKだよ」

「これって桂のハーレムパーティー結成みたいな感じなのかなぁ?」


「ちょっと、お待ちください。そのような勇者様だけでカツラ様を独り占めするようなことは許されませんわ」

「ええぇ、3人だから独り占めじゃないしぃ。王女様もたまには混ざってもいいよぉ」

「私も参加してよろしいのですか?それであれば何も問題は…」


「ちょっと、貴方たち。桂君のハーレム前提で話するのはどうかと思うわよ」

「あらぁ世奈ちゃんは桂ハーレムメンバーにならなくてもいいのね?じゃあ王女様と3人で順番?それともみんな一緒に?」


「私達まだ高校生よ、そんな関係って不純だと思うよ」


「世奈ちゃん、頭堅すぎぃ。ここは異世界で元の世界には戻れないんだよ?魔王も倒さなきゃぁいけないし、好きに生きても誰にも文句は言われないと思うよ」

「そ、それは、そうかも…」


「王女様も唾をつけようとする、お勧め物件の桂だよ?世奈ちゃんも桂のこと嫌いじゃなんでしょ?それともこっちの人とお付き合いするの?」

「そんなこと考えたことないよ。召喚されてすぐなのに、そんな余裕ないよ」


「うちのメイドさん情報によると、こっちの男って結構男尊女卑が激しいみたい。それにだいぶ不潔で臭いらしいわ」

「うわぁ、それは無理だわ」


「でしょ、だから私もイケメン騎士は諦めて桂でいいかなって?」

「そんな決め方桂君に失礼じゃない?」


「そんなの黙ってりゃわかんないし、こんな可愛いJKにせまられれば大抵の男はいちころよ」

「うわぁホノカ自分で可愛いって、ちょっと引いたかも」


「うっさいセリナ!カズキは想像以上の馬鹿だし、シンヤは変質者。どう考えても桂一択でしょ?」

「まあ、そこは同意かなぁ。うん、それじゃあここのみんなは桂ハーレムメンバーってことでいいかぁ」


「あ、あの私はどうなるのでしょうか?」

「グレースちゃんもこの際メンバーに入っとく?王女様も入るって言ってるし、今更一人増えても変わんないでしょ」


「では、よろしくお願いいたします」


「それにしても急に桂君モテモテよね」



「あっ、そういえばご飯忘れてたわ」

「そうね、今日もみんなで作る?」

「私もカツラ様の食事の用意でしたらお手伝いしたいですわ」

「ご主人様のお世話はメイドの仕事ですわ」

「はぁ、じゃあ皆でご飯の準備をしに行こうか」




俺はあれからずっと書庫で夢中で本を読んでいた。

さすが王城内の書庫って感じのものが多ので、ちょっと初心者向けのものが欲しい。

特に魔法やスキルに関しては完全に初心者も良いところだ。

最初に読むのが禁書相当ってのは難易度が高すぎる。


なのでどうしても歴史や周辺諸国との関係といった社会科的な本を優先して読んでしまう。



「桂君、お昼の時間よ。用意したから一緒に食べよ」

今日も泉さんが誘いに来てくれた。

昼飯というには少し遅い時間だったが、朝からバタバタしていたため仕方がない。


昨日と同じように食堂に移動するのだが、泉さんの距離が昨日より近い気がする。

昨日は手をつないでたが今日は腕を組んできてるしなんか当たってる。

朝から馬鹿が色々やってくれたから、そのせいかな?と思い気にしないように一緒に歩いていく。


「あ~世奈ちゃん、抜け駆けだぁ」

食堂に着くなり谷が叫ぶ。


「ふふ、いいでしょ」

意外なことに泉が谷にやり返す、顔は真っ赤だが。


「早速行動に出るとは、世奈ちゃんも油断できない子だったんだね」

祭がにやにやと俺達を見つめる。


「次は私が呼びに行きますわ」

と、なぜか王女もいる。なんでだ?


「ご主人様、こちらに昼食の用意が出来ていますわ」

グレースもいるがどういう状況なんだこれ?


よくわからないが、折角用意してくれたんだと思い席に着く。

女の子たちがなぜか甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる昼食は、ひどく恥ずかしかった。


「やっぱりここは、あ~んでしょ」

と祭が食後のデザートと用意していたプリンを掬い、俺の口に近づける。

祭の笑顔に見とれてしまい、思わず口を開いてしまう。


「はい、あ~ん」

さっきまで祭が自分で使っていたスプーンだってことに気が付き、ドキドキしてしまうがそのまま口にした。


「えへへ、間接キスだね?桂…仁って呼んでいい?」

「あ、ああ、構わないけど」

「やったぁ、じゃあ仁もう一口ね、はいあ~ん」

上目遣いでねだってくる祭のペースにはまってしまい、次も口にしてしまった。


「ああ、ホノカばっかりずるいぃ!私もする!それと私も仁って呼ぶけどいいよね!」

谷が慌ててまくし立ててくるので思わずうなずいてしまった。


「はいホノカ交代だよぉ、じゃあ仁あ~んして」

祭を隣の椅子から押し出した谷は、祭と同じように満面の笑顔でプリンを掬う。

ここで断るのはまずいと本能的に悟った俺は、流されるままプリンをいただく。


「そうだ仁、私のことは芹那って呼んでね。谷だと他人行儀な気がしていや」

上目遣いで俺に訴える谷、じゃなく芹那。もうどうにでもなれと頷く俺。


なに、この状況?朝部屋を追い出されてから何があったんだ?


そのまま流された結果、全員からプリンを食べさせてもらい、下の名前で呼び合うことをなぜか約束させられた。

王女はフィアと呼ぶことになったらしい。うん、なんか人ごとになって来てる気がする。




昨夜俺に好意を伝えてくれた世奈なら、まともな回答をもらえるかと期待して質問してみる。

「で、世奈。この状況を説明してもらえるかな?」

「この状況って?」


「いや、昨日というか今朝までこんな感じじゃなかったろ?世奈は好意を伝えてくれたけど、他の子はそうじゃなかったと思う。

 それなのに、こんな急にモテるのは何かあったと思ってな」

「さっすが仁君、そこに気が付くとはね」


「いや普通に気が付くだろ?って気が付かない奴がいるかこの状況で?」

「うーんとね、今朝仁君を部屋から追い出した後にこの4人で女子トークになったんだ

 で、結論は仁君ハーレムになったってことだよ」


「ごめん何言ってるかさっぱりわかんねぇ。女子トークからハーレムの間端折り過ぎだろ」


「世奈ちゃん説明下手すぎ。それと抜け駆けしてたんだね、その辺は後でじぃっくり聞かせてね。

 で仁に説明すると、あの後4人で喋ってたらみんな仁のことが好きかもってなったのよ。

 だって、こっちの世界の男って俺様系らしくてちょっと無理、シンヤとカズキはあれだしね。

 それで残った仁を改めて見直すと、結構というかだいぶ優良物件なわけよ

 取り合いしてあぶれるくらいなら、シェアした方が良いよねってことでハーレムになったってわけ」


「つまり消去法で残った俺をみんなで共有するための手段ってことか。でフィアとグレースもそれに乗っかったと」

「ピンポーン!そのとおりっ!さっすが私の仁だねぇ」


「セリナ!"私の"じゃなくて"私たちの"だからね」


「事後報告された上に、消去法で残ったって直接言われた俺はどうしたらいいんだよ」


「ええ!こんな美女と美少女からハーレムのお誘いしてるのよ。まさか断るの?」

穂乃華が俺を満面の笑みで見つめているが、俺は蛇に睨まれた蛙ってこんな気持ちなのかなって考えていた。

うん、これはどうやっても断れないやつだな、それに美女と美少女ってのは間違いじゃないし、俺も男だからハーレムはウェルカムだ。


「わかった、みんな俺のハーレムメンバーってことで今後ともよろしくな」

「「「「はーい!」」」」

こんな状況だがみんなが笑ってくれているので、良しとしておこう。



「それから、部屋をひとつにまとめるから。今晩から仁の部屋がみんなの部屋よ」

「はあ?」


「何間抜けな声出してるのよ、ハーレムなら当たり前でしょ?」

「それって全員一緒に寝るってことか?」


「ああそういうこと?最初は一人づつの方がうれしいわねやっぱり

 じゃあこっちで仁と一緒に寝る順番を決めておくわ、他はメイドのいたところでも問題ないと思うし」

「いやいや、王女をメイド部屋に寝かしたらいかんでしょ」


「そっか…フィア、仁と一緒に寝るとき以外は自分の部屋で大丈夫?」

「え、ええ、大丈夫ですわ。さすがにメイド部屋で寝起きしているのは問題になりそうです」


「あのさ、俺は毎晩誰かと一緒ってこと?さすがに寝不足になると思うんだが」

「そんな朝までじっくりねっとり相手をしてくれなんて言わないわよ、慣れたら一緒に寝るだけでもいいし」


「まあ、その辺はおいおい決めさせてくれ」

「そうね臨機応変に対応させてもらうわ」


「行き当たりばったりでないことを願うよ」



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