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異世界に転移したらハーレムが出来た、ちょっと俺大丈夫かな?  作者: 乙賛


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第2話 転移

 ちょっと今大ピンチなんで、掻い摘んで状況を説明するぞ。


 クラスメイト数人と異世界に転移してきたら、馬鹿がはっちゃけて大暴走。結果、今騎士っぽい人たちに囲まれて剣を突き付けられてる。


 ちょっと意味が解らないって? うん、俺も状況がよくわかってないんだよ。すぐに剣で串刺しってこともなさそうだから、もうちょっと説明しよう。





 俺の名前は、かつら じん高校2年生だ。


 放課後に続きが気になって仕方がなかった小説を、授業が終わるなり自分の机で読んでたんだ。今時教室で文庫本を読んでる高校生なんて珍獣扱いかもしれないって自覚はある。実際俺はクラスでは少し、いやかなりかな? 浮いてる方で特に友人と言えるような奴はいなかった。休み時間の度に文庫本に熱中してる奴なんて、最初は声をかけてもらえても、そのうち誰も相手にしなくなるもんだ。


 勉強も運動もそこそこ出来たんで、いじめられるようなこともなく、空気みたいな存在って言うのが近いかな?


 普段は放課後になれば、クラスメイトは帰るなり部活に行くなりして教室からいなくなっていくだろ。そんな中俺は切りの良いところまでと読書に集中していたら、クラスのカースト上位の集団が何があったのか戻ってきたんだ。


「シンヤー、とっとと忘れもん取ってきてどっか行こうぜ」

「ああ、悪かったな付き合わせて」

「あっ、あいつまた本読んでる、ってかひとり教室で本読んでるってきもくない?」

「あんなのほっといてさぁ、早く何か食べに行こうよぉ」


 相変わらず喧しい奴らだが、どうやらリーダー格のシンヤが忘れ物をしたので取りに戻ってきただけのようだ。


 最初のどこかに行きたがってたのが、しば 一輝かずき、脳筋キャラってのが一番しっくりくるタイプだ。ほんとかどうかは知らないが、喧嘩が強くてこの界隈では一目置かれているらしい。あくまでも『らしい』で、俺はこいつが喧嘩してるところを見たことがないので何とも言えないが。


 忘れ物をしたのが、ひじり 真也しんや、いわゆるカースト上位の金持ちのボンボンで成績はそれなり。親に甘やかされて育った典型的な奴で、少しでも思い通りにならないとヒステリックに切れる危ない奴だ。だが親がそれを無かったことにするぐらいの金持ちらしく、身の丈に合わないブランド品を身に付け、自分の取り巻きには金をばら撒いているらしい。俺が思うにこいつの周りに居る奴は、きっと金目当てなだけなんだろう。俺が気が付くぐらいだから、クラスの公然の秘密かもしれない。


 そして俺のことをディスってたのが、まつり 穂乃華ほのか、チャラチャラしたいかにもってギャルで、頭の方も見た目通り。ふわっとした茶髪を背中まで流し、少しきつめの顔だが十分に奇麗な顔立ちをしている。ただ、成績はともかく自頭は悪くないのだろう、聖からうまく金を引き出して色々奢らせている様だ。まあ、取り巻きをする報酬と思えば、そんなもんなのかなと思う。


 最後のが、たに 芹那せりな、ギャルって程でもないが何考えてるのか読めないタイプ。艶々の黒髪ぱっつんのためか少し幼い雰囲気だが、ほんわかとした美少女である。こいつも祭と同様に聖に集っているが、祭がブランド品ならこいつは食い物、有名なスイーツとかを奢らせているそうだ。


 この辺りの情報は、周りの空気を読めない聖が、大声で奢ってやったと情報を教室内に自分で広めているので、情報収集の手間はゼロだ。


 こいつら4人が、うちのクラスのカースト上位に居るってことになっている。聖に絡むのが面倒なのと、実際過去には親の雇ったボディーガード的な奴らが出てきたこともあるらしく、クラスの皆は腫れ物に触るかのような扱いで、上位でも何でもいいから絡まないでくれ、ってのが正解らしいが。


 俺は正直興味がないので、絡んだ記憶はないと思う。とっとと出て行って欲しいなぁと思ってると、さらに一人増えた。



「ちょっと、早く教室から出てってよ。鍵閉めて持ってかないといけないんだから」


 これは、いずみ 世奈せな、わりと常識的なタイプと俺は思っているが、そこまで仲良くはないので実際のところはわからん。最初のころから結構話しかけてくれていたが、俺が読書に忙しいのでまともに会話が続いた記憶はない。黒髪を肩まで伸ばした可愛らしい系の顔立ちで、クラスでも結構人気があるらしい。どうやら泉は日直だったようで、戸締りをさせられているようだ。



「はいはい、世奈ちゃんに怒られないようにさっさと帰るとしますか」

 聖が忘れ物を見つけたようで、教室を出ようとした時だった――


 クラスの床が白く輝き、見たこともない文字列がリボンのようにいくつも宙を舞い始める。


「これって……」

 谷が何かを言おうとしたが、その声は最後まで聞き取れなかった――





 ――真っ白な輝きの中、俺の右手に何かが触れる。


「今は、これ以上は制限されているようね……仕方がありません、我が加護を与えましょう……」

 耳元で女性らしき声が俺に囁くと、右手の感触ごと何もなったように消えた。


 周りはまだ光り輝いている――

 



 ――輝きが収まり目が慣れてくると、明らかに教室ではない場所に俺達はいた。周りを見るとこれがテンプレかって思わんばかりに、王様らしき人物、王女やその護衛っぽい騎士たち、召喚を頑張ったと思われる魔法使いっぽい人たちが俺たちを見つめていた。そこは石造りの部屋で床には見たこともない文字がびっしりと書き込まれた、おそらく魔法陣と思われるものが描かれている。


 そんな状況の中、俺以外の5人はけっこう間抜けな顔で呆然としたままだった。



「勇者よ、召喚に応えてくれまずは感謝する」

 金髪をオールバックみたいにして後ろでくくっている、いかにも王様っぽい人が話しかけてきたとき、それは起こった。


「よくわかんねぇが、てめぇがここで一番偉そうだっ! てめぇを抑えりゃ俺たちの勝ちだろ!」

 突然、芝が意味不明のことを叫びながら、王様っぽい人に向かって走り出したのだ――



 ――当然、完全武装の騎士にボコられたうえで抑えつけらる。そして、そのついでに俺達も騎士さんたちに囲まれ、剣を突き付けられているという訳だ。


 ここまでは、理解いただけたであろうか?





 剣を向けられた俺は、無能な味方は下手な敵よりも害悪って、こういうことなんだなぁってちょっと現実逃避していた。


 王様がいるってことは政治形態は王政だろ? 王様の機嫌を損ねたら俺達なんて、首ちょんぱされて終了するしかない。この召喚にかかったコストがそれを許さないことを願いつつ、俺は辺りに眼を向ける。


 俺の横では谷が小声で「ステータス、ステータスオープン……えぇ出てこないよぉ」などと呟いている。どうやらステータス表示は今のところ出来ないようだ。泉の方は「鑑定、鑑定……」と呟きながら首を振っているところを見ると、こちらも望んだ結果は得られていないようだ。


 祭は「騎士ってけっこぉイケメンかも……」などと言っているのでこれは無視する。聖はこの急展開に付いてきていないようでまだ口を開けてボケっとしていた。芝は騎士に囲まれその姿は見えないのでスルー。


 王様っぽい人はいきなり襲い掛かってきた野蛮人(イコール)芝を虫けらでも見るような目で眺めている。これは、ちょっとまずい流れな気がするな。



「あのぉ、すみません」

 俺はこの空気を変えようと手を挙げて王様っぽい人に声をかける。


「その馬鹿のことはすみませんでした。それはそのままでいいので、この状況を説明頂けると助かるのですが」


「あ、ああそうだな。他の勇者の方はあのような蛮族ではなさそうであるし、説明させてもらおう」

 とりあえず王様は、それほど怒ってなさそうなので一安心。そして、そのまま王様は話し続ける。


「余はブロンシュ王国国王、リースリング・ド・ブロンシェである。此度は勇者の力を借りる必要があり、このような形で召喚することになった。魔王を打ち滅ぼすために力を借りたい」


「つまり我々が勇者であり、その魔王と言う奴を倒して欲しいということですか」

「ああ、その通りだ理解が早くて助かる。よろしく頼むぞ」


「お父様、それでは勇者様たちには何も伝わっておりませんわ。私からもう少し説明させていただきますわ」

 見事な腰まであるブロンドの王女っぽい彼女は、やっぱり王女だったようだ、ざっくりとした説明で終わらせようとした、王様のフォローをしてくれるらしい。彼女は、腰から下が膨らんだ奇麗な艶のある薄いブルーのドレスの上に、真っ白な毛皮のようなショールをかけていた。


「皆様には、召喚の際に勇者としてのスキルが与えられているはずです。スキルとはこの世界では一般的なもので、少なくとも一つ以上のスキルを皆が持っています。ただ、魔王と戦うにはそれなりのスキルを保持していなければ話にならず、そういったスキルは勇者にのみ与えられるのです。

 皆様にはステータスとスキルを確認頂き、スキルにあった訓練を実施頂いた後にまずはダンジョンを攻略いただき、最終的には、魔王討伐に向かって頂きたいと考えております。

 当然その間の衣食住は最高のものをご用意させていただきますし、討伐の暁には報奨だけでなく叙勲や陞爵も行わせて頂きますわ」

 王女は前もって練習していたかのように、流暢に説明してくれた。だが肝心な点がすっぽりと抜け落ちている。


「丁寧な説明をありがとうございます。一点確認させてください。我々は元の世界に戻れるのでしょうか?」

「……大変申し上げにくいのですが……」


「なるほど、了解しました。戻る術は無いということなのですね。つまり魔王とやらを倒せたとしても、我々はここで生きていくしかないということになるのですね」

「はい……、突然見知らぬ世界に召喚しただけで無く、戻すことが出来ないなど、非常に申し訳なく思っております。こちらで出来ることがあれば可能な限りさせて頂きます、どうかご協力いただけないでしょうか」


「少し考えさせてもらえませんか? いきなり異世界に召喚され魔王を倒せと言われても、頭ではわかっても気持ちが付いてきませんので」

 そうやって俺が時間を稼ごうと王女に提案しようとしたときに邪魔が入る。


「桂! 王女様の頼みだろうが! ここで即答しないからお前はダメなんだ。王女様、私、聖 真也が勇者の名に懸けて魔王を討伐いたしましょう」

 勢い込んで王女に勇者アピールを始めた聖を、俺だけでなく泉や谷も呆れた顔で見ている。


「ヒジリ様でしたわね、ありがとうございます。そうそう自己紹介がまだでしたわね、私はフィアーノ・ド・ブロンシェ、この国の第一王女ですわ」

「フィアーノ王女、私のことはシンヤとお呼びください。フィアーノ王女のためにも魔王はこの手で倒して見せます」


「シンヤ様、頼もしいですこと。私のこともフィアとお呼びくださいね」

 うん、これは完全に手玉に取られてるな。美人な王女に眼が眩んだ馬鹿って思われてるよきっと。


「他の方々も考える時間は当然用意いたしますが、まずはステータスとスキルの確認をお願いしてもよろしいでしょうか? その後お部屋をご用意しますのでゆっくりとお休み頂いた後、考える時間を取って頂ければと思いますわ」


「ちょっとぉ、カズキはどうなるのよぉ」

 イケメン騎士を検分していた祭が、思い出したように芝の扱いを聞く。そうだな、やつが囲まれているのを忘れてた。というかバカのことは記憶から消していた。


「さすがに皆様と同様に扱うのは問題があります。騎士団により取り調べと何らかの懲罰が与えられることになるかと思います」

「懲罰って何するの?」


「王族に殺意を向けたのです、これが勇者でなければその場で切り捨てられても文句は言えません。ただ、今後勇者として働くのであれば今後先ほどのような野蛮な行いをしないように、契約の魔法で縛ることになると思います」

「契約の魔法ってなに?」


「皆様は魔法のない世界から来られたのでしたね、契約の魔法とは契約内容を守ることを魔法で強制するものです。今回の場合は、王族に対する不敬な行いを禁止する契約になると思います。この魔法により、もし契約に背く考えや行動を行うと、その程度によりますが軽い痛みから最悪の場合死に至ることもあります」

「うわぁ、けっこうエグイことするんだね王女様って」


「おいおい、悪いのはカズキだろ? フィア王女も、身を守るためにはその位はするだろ? 王様に手を出そうとしてこの程度で済むんなら逆にラッキーじゃないか」

 ふーん聖ってこんな奴だったのか、いくら王女が美人だからって友人を簡単に売るんだな。いや、そもそも友人とも思ってなかったって可能性もあるな、周りは俺に仕えるのが当然! とか言ってそうだなこいつ。これなら祭のほうが人間的にはるかにまともだわ。


「では皆様こちらに」

 そう言って、聖の言葉など無かったかのように、王女は先に歩き出す。空気となった王様も一緒に行くようだ。芝を囲っている騎士たちが動かないところをみると、ここから別行動なんだな。



 階段をいくつか上がり廊下を歩くと外からの日差しを感じることが出来た。召喚された部屋は地下にあったんだな、と考えながら王女の後をついていく。


 2階に上がり少し行った先の部屋に案内された。そこは窓もなく、薄く灯った明かりを頼りに見回すと、教室程度の広さの部屋で中央にテーブルがあり、そこに半透明の球が置いてあるだけの部屋だった。いつの間にか部屋の中央のテーブルの横にフードを深くかぶった魔法使いっぽい人が、調整? のように玉を触ったり何か呪文を唱えたりしていた。そいつが調整が終わったのか王女のもとに近づいて何か告げると、王女が説明を始めた。


「こちらがステータスを確認するための宝玉になります。この世界の者も成人したときに同様の宝玉を触ることで、自身のステータスを初めて確認するのです。一度ステータスを確認すれば、宝玉無しでも自身で確認できるようになりますので、ここに来るのはこれが最初で最後ということになります」

 王女は相変わらず丁寧に説明してくれる。どうやらこの宝玉とやらを触ればステータスが何時でも見れるようになるらしい。


「じゃあ、さっそく俺から試させてもらう」

 聖が王女に微笑みながら宝玉に近づき、それに手を触れた――

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