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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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ゾンビになってもヒーラーちゃんは癒したい

掲載日:2020/03/26


「大丈夫ですか、旅の人」


 私は野盗に襲われて死んだ、旅の商人を生き返らせた。

 変に恩を着せない為にも、冷静を装って声をかける。

 死んだとは夢にも思わない商人は、戸惑いながらも私に向かって笑顔を向けた。


「危ない所を助けて頂いたようですね。ありがとうございます」


「いや、あの……そんなに引っ張られてしまうと……あっ」


 ボトッ……


 握手をされ引っ張られた私の左腕は、肘から崩れて地に落ちた。

 旅の商人の表情は、一気に青ざめていく。


「ギャーーーーッ! ゾンビだーーーー食われるーーーっ!」


「た、食べないですよー!」


 私の返答も虚しく、走り去った。

 また失敗か……

 仕方なく、目立たない草むらで待ち構える事にする。


 私は生(・)前(・)ヒーラーをしていた。

 人の為を想い、無銭の民にも分け隔てなく尽くしてきたつもりだ。


 だが、いつの間にか死んでいた私はゾンビになっている。

 神よ……まだ私は御下(みもと)に行く資格がないのですか?

 ならば、神に迎えられるその日まで、私は人々を癒やし続けましょう。

 例え、感謝されず驚かれようとも……



 健気に尽くす彼女の事など知らない近隣の村では、森でゾンビが出ると噂になっている。

 そんな馬鹿なと息巻いた村人は、度胸試しに何度か足を踏み入れた。

 その度に、いいカモだと思った盗賊が彼らを殺し、毎度命を救っているとは夢にも思わない。


 いつまでたってもゾンビの噂は絶えず、冒険者ギルドに討伐依頼が掲げられた。

 近隣にダンジョンもない田舎の村では、有力な冒険者は訪れない。

 それを見かねた村の若い男達がパーティを組み、討伐を名乗りでた。


「どうせ年寄りが見間違えたか、なんかだろう? 俺達が倒してきてやるよ!」

「日中にウロつくわ、会話もできるゾンビなんて聞いた事もねぇ」

「オラっちの鎌で、怪しい茂みは刈り取ってきてやるだ」


 3人の男は意気揚々と村を出る。

 近場にゾンビの噂があるのは森だけ、しかも報告例があるのは茶色いローブを着ている個体のみ。

 ゾンビは群れをなしているものだ。

 その知識がある若者達は、絶対に出ないと笑いながら街を出る。



 それを彼女は心配そうに見つめていた。


 あの人達……危ないわ。

 また殺されて盗賊の餌食になってしまう。

 こうなったら、私がついていってあげないと!

 声をかければ逃げられる日々を送っていた彼女は、おどおどしながら若者達に声をかける。


「あの、私は旅のヒーラーで……アミルと申します。そんなに武器を構えて、どこに行かれるのですか?」


「綺麗なお姉さんに声をかけられるとは、嬉しいじゃん。俺らは、森に出る凶悪なゾンビを倒しに行く所さ」

「あぁ、村の年寄り連中が怖がっちまってよ」


 凶悪なゾンビ……私は見たことないけど、そんな怖いモンスターがいるのね。

 それなら、と同行する事を願い出ると、快く承諾してくれた。

 ゾンビを見るのは久しぶりだけど、この人達が生きて帰れるようにと決心した。


 森に到着して小さなゴブリンを倒しながら進む。

 若者達は弱く、アミルは懸命に回復魔法を使った。

 

「ねぇアミルさん、さっきまで左手で杖を持ってなかったか? 疲れたならおぶってあげようか?」

「おまっ……てめぇ! 抜け駆けは許さねぇぞ!」


「フフフ……ありがとう。ちょっと左手が疲れただけなの。心配しなくて大丈夫よ」


 私を気遣うように、3人は何度も声をかけてくれる。

 神よ……この優しき者達に、光がありますように……

 


 気づけば日も暮れて、森は暗く染められていた。

 街道に出れば村まで楽に帰れると、若者達の意見がまとまった。

 しかし、それでは盗賊の思うつぼだ。


「ねぇ、街道だけはやめましょう?」


「どうしてだい、アミルさん。目印も何もない暗い森じゃ、どっちに進んでいいかわからないぜ」

「ははぁ……ゾンビが街道で多く目撃されているのが怖いんだな。大丈夫だぜアミルさん! 俺が絶対に守ってみせる!」

「てめぇズリーぞ! 俺が守ってみせるんだ!」


 私は献身的な若者たちに心を打たれた。

 神よ……どうか、この者達の無事を。


「さあ、アミルさん。ここは小川があるから危ないぜ。手を貸すよ」


「いえ……その……、大丈夫です。このくらいは1人で渡れますから」


「おめーは好みじゃないってよ! 俺に掴まんなアミルさん」

「いや、俺が」

「ばっか、俺だろ!」


 なんて献身的なんでしょう。

 でも、どうか私の手を掴まないで……

 その願いも虚しく、3人別々にグイッと引っ張られた。

 両手、両腕がボトボトと地面に落ちていく。


「あっ……」


「いつの間に可愛いアミルさんと入れ替わったんだ。こ……こ、この化け物め!」

「く、食われるぞーーーっ!」

「かーちゃーーーーんっ!」


 勘違いされてしまったけれど、私の言いつけ通り暗い森を通って帰ってくれた。

 無事を確認する為に、急いで追いかけないと。


 どうにか見つけた若い男達は、全員殺されてバッグを奪われている。

 早く処置をしないと、復活魔法が効かなくなってしまう。

 両腕が落ちてしまったけれど、悩んでいる暇はない。

 私は決心して3人を生き返らせた。


「みんな、大丈夫かしら?」


「ゾンビに襲われたと思ったら、盗賊に追いかけられてさ……」

「でも、夢だったのかもな。俺達全員生きてるしさ」

「ヒーラーのアミルさんがいれば、怖いもんなんてないな。ありがとうアミルさん!」


「ごめんなさい、今は私に触らないで……!」


 言った時には頭が転げ落ちていた。

 回復魔法を使うと体が崩れ落ちてしまう弊害は、今度は首に出たらしい。


「ギャーーーッ! やっぱりゾンビー!」

「逃げろーーっ! 食われるぞー!」

「ま、待ってくれよー、みんなー!」


「た、食べませんよー!」


 どうにかカンで頭をつけ治し、両手をつけなおす。

 接合部をしっかりする為にも血を飲まないと……


 あら、丁度よく馬の死体が街道にあるわ。

 私は馬の魂の安寧を祈った後、滴る血を手ですくって飲み始めた。

 よかった、どうにかくっついてくれたみたい。

 一安心したと思ったら、後ろから声をかけられる。


「あの……もし? 大丈夫ですかお嬢さん?」


「えぇ、何の問題もありませんわ」


 振り向くと、商人らしい男の顔が真っ青になった。


「ギャーーーッ! 殺して血を吸うバケモンだあーーっ!」


「こ、殺してませんよーっ!」


 またしても勘違いされてしまった……

 私に敵意が無いと気づく方は、いらっしゃらないのでしょうか。

 ……これも神の試練ですね。

 

 眠れぬ私は、今日も街道を見張って夜を明かす。

 

【皆様へのお願い】

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「★★★★★」にしてください。

素人作者なので、とても励みになります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] この設定に凄く惹かれました。 ジャンルとしては勘違いものファンタジー?にあたるのかもしれまんせが、内容は淡々と物語が進んでいて、主人公のヒーラーの非人間的な献身さが何故か一抹の寂しさを感じ…
2020/10/05 14:07 退会済み
管理
[良い点] ゾンビヒーラーちゃん可愛いです! 見た目のイメージがしやすかったから、短編漫画になっても面白そう。 [一言] 個人的に脳筋騎士と幸せになって欲しい(「・ω・)「
[良い点] アミルちゃんが可愛くて読みやすかったです。 あと短編なのも読みやすくて気軽に読めて良かったです。 [気になる点] オチが弱い気がします。 後人々の反応がワンパターンなのが気になりました。…
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