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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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父の知らせ

新婚旅行から帰ったお雪と伊助だったが。

ラクの背に揺られ、湯本の屋敷に帰る途中の伊助とお雪。あとひと山超えたら帰路に着く。


屋敷を空けてからそろそろ半月ほど経った。


お雪は伊助の両親と会ったことを思い出しては心を温めている。


鎌ちゃんと別れて、そこから2日ほどかけて伊賀にある伊助の故郷へつくと、伊助の父と母は今まで見たことのなかったラクダを見てたまげていた。


遠いところよく来てくれたね。


伊助の母がお雪の手を握ってそう言った。父さまもニコニコと笑っている。そのカは伊助と同じ顔をしていてお雪は伊助はお父さまに似たのね。と言って笑っている。


伊助はそうかなぁ?似てるのかなぁ。と首を傾げているが、そっくりだった。


小さな囲炉裏を囲んでみんなでご飯を食べた。魚を丸かじりしたのはこの時が初めてだった。


次の日は田畑に出かけて土を耕やす手伝いをした。クワを持ったのも初めてで、気がつくと着ていた着物も顔にも泥がいっぱい付いていて伊助はそれを見て笑いながらすみません。と両の手を合わせていた。


そして生まれて初めてホタルの飛ぶ小川をみた。フワフワと飛んでいたホタルを採ると伊助はそれをお雪の髪に乗せた。


お雪、綺麗ですね。


と言った。その瞬間に体中が熱くなってしまう。

初めて二人結ばれた時に伊助が言ったその言葉は二人重なるたびにそう言っていた伊助。


今が真っ暗な闇夜で良かったとお雪は少しホッとする。


お雪、カラダが熱いですね。


なんでわかるの?伊助の意地悪!もう!


せっかく気付かれまいと振舞っていたお雪だったがもう開き直ることにした。


お雪、本当に綺麗ですね。


闇夜だった空に雲隠れしていた月が顔を出してお雪は本当に綺麗に見えた。お雪様をお守りしたい。ただその使命だけで夫婦になった。それに逆玉でもある。そう思っていた伊助だったはずなのに。


今は愛おしくてたまらない。


ラクの背に揺られ、2人夢の中。何も話さずとも同じところにいるようで、振り返るお雪は伊助の顔を見て安心をするのだった。


屋敷へ帰ると、家来たちが出迎えてくれた。


そして、江戸から届いた知らせの手紙を渡された。


伊助はそれに目を通す。そんな。お殿さまがそんな、まさか。


伊助、父上はどうされたのです?


お殿さまが死んだと書いてあります。お民も弥太郎も死んだと、書いてます。お雪、大丈夫ですか?


父上が、死んだ?父上が江戸へ行く前に行っていた。父はもうこの土地に生きて帰る事はないだろうと。


父上は何かを察していたのでしょう。伊助、で、父はいま何処に?


お寺で供養されているようですね。お雪、行きますか?


お雪は伊助に首を横に振ってみせた。


私には伊助が居てくれるもの。


そう言って静かに泣いたお雪の肩を伊助はしっかり抱いて支えていた。



伊助とお雪は2人幸せになることを選んだのだった。

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