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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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すれ違い

境内から出てこない。

蒼く爽やかな風が吹き抜けていく。


アオは草を食べていたが、お殿様の帰りが遅い事が気になった。


と、そこに小さな子供たちの声が聞こえて、そしてその声がだんだんと近づいてくる。


1人の子があー!馬だー!馬がいるー!


と騒ぎ出し、みんなアオの周りに集まってきた。アオは、こんな小さな人間を初めて見た、


子供たちはアオの周りに集まりだした。アオは子供たちをひと通りみて、また草を食べ始めた。


子供たちも、アオのその様子を見て、この馬、お腹すいてるんだね。お馬さん、いっぱい食べな。と言うと、食べてるの邪魔したら可哀想だと言って、境内の中に入っていった。


和尚、ただいまー。と、元気な声が中に響いた。


小さな影が障子にうつる。


その影はちょうど聡太郎の小さな頃のようだとお殿様はその影を少しの間みていた。


父上ー!と裸足で走ってくる幼い頃の聡太郎を思い出す。


お殿様は和尚を前に、話しだした。そしてまだ話は終わらないでいた。


始めは、お民と弥太郎の亡骸を供養して頂いたお礼を言うだけで帰ろうと思っていた。しかし、そこで、何故、お殿様は生きているのに亡骸があるのか聞かれたお殿様はそこからもう止まらない。


今のところ、お殿様には行くあてはない。時間がとてもある。それに、ここにいたら聡太郎に会えるやもしれぬ。なのでお殿様は江戸へきたいきさつを話し始め、聡太郎のことも話した。


和尚はその話を全て熱心に聞いてくれ、お殿様はこれからどうするのかと聞かれたのだった。


つかえていた井伊のお殿様が亡くなった。自分は井伊のお殿様が居なくなったらどうなるのか。世情に詳しい訳でもないお殿様には誰も頼るものもなく、給金をくれる者も、もう居ない。


どうしたらいいだろうか。


和尚はそう言うお殿様を見てクスっと笑った。


何がおかしい?


あ、いや、普通は仇を打たねば!というものではないのですか?上がやられたら、そういうものかと思っておりましたので。


いや、だって、ワシ、一回死んだじゃろ?このまま死んでもいいかもしれないと思ってな。


そうですよね。私もお殿様の立場になったらどうしたらいいのかと悩みますね。間違いなく。


和尚がワシだったらどうする?


わかりません。が、ただ会いたい人に会いに行くかと。


ワシは聡太郎に会いたいのう。江戸に来たら会えるやもしれぬと考えていたが、会いたい。


ここにいたら会えますよ。お殿様、ご子息に会えるまでここで待ちますか?


よいのか?


はい。


すまぬが世話になる。アオという馬もおるのじゃが。


馬も居てもらっていいですよ。鎌ちゃんは明日か明後日にも来るでしょう。


そうか。やっと会えるんじゃな。


鎌ちゃんも会いたいんでしょうね。いつもここへ来てお父上様の墓を参られる。あー、そうだ!言うの忘れていました。亡骸は無縁墓にございます。


そうか。お民と弥太郎は無縁墓に。そうか。。


お殿様は和尚に無縁墓まで案内してもらい、そのあとアオの小屋も用意してもらえたのだった。









お殿様と鎌ちゃんは会えるのか?

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