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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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お殿様の回復

怪我を負ったお殿様がようやく動けるようになった。

馬飼に世話になっているお殿様の傷口はまだ完全には閉じてはいなかったが、カラダを起こし、立ち上がれるまで回復していた。


ここまで回復するのにひと月近くかかったが、お殿様はその半分以上眠っていたのだった。


馬飼の家から外へでると、今まで見たこともないくらい広い草原が目の前に広がっていた。そしてそこにアオがいた。


アオ。


アオはお殿様に呼ばれて近寄ってきて、もう大丈夫なのか?と言うように前足を上げてみせた。


お殿様は、ああ、もう大丈夫だぞ。ありがとうなぁ。アオ。


アオは首でも触るか?


と言うようにお殿様に差し出してきた。


首を撫でてやるとアオの澄んだ瞳が瞬いた。一粒、涙のようなものが落ちて、それみたお殿様の目にも涙が溢れる。


馬飼が心配そうにお殿様のようすを心配して表まで出てきた。


自分よりも我が子が先に旅立ってしまうほど辛いものはない。弥太郎、弥太郎よ。


馬飼の住むこの町の外れにも、井伊家のお殿様が暗殺されたという話は広まっていた。馬飼も湯本のお殿様がどんな人かは分からなかったが今回のことと何か関係がありそうな事だけはわかったのだった。


あのぅ。あなた様の事をよく知らないのですが、せめて名前だけでも教えてくれませんか?


ワシか?ワシは井伊家のお殿様に付いて江戸まで来た湯本八十五郎じゃ。馬飼よ、世話になったのぅ。そろそろ家へ帰ってやらんと。妻のお民が心配しておるじゃろう。それにそなたには世話にもなった。家に帰って礼がしたいのじゃ。


その傷ではまだ無理です。こんなところではあるけれど、もう少しゆっくりしていってくださいな。


ふむ。困ったのぅ。ならばワシがここにいることを家の者に知らせたい。


では私が代わりに行って参りましょう。家はアオが知っているでしょ?


いや、やはりワシは1度帰りたい。


では私もお供します。


すまぬ、世話になる。


アオに乗ってお殿様は歩き出した。


やはりお前の背中は乗り心地が良いのぅ。


アオに乗り、お殿様は馬飼と共に海辺の屋敷を目指して歩き出したのだった。










海辺に着いたお殿様は、、、。

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