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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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お殿様の決断

船に乗り込んだお殿様達は圧倒的な強い国に太刀打ちなどできるわけないと思い知る。

桜も見頃を過ぎてまだあかい小さな柔らかそうな葉っぱがキラキラした太陽の光に反射して光ってみえる。


アオを連れて海辺まで来たお殿様は、手綱を離した。アオは大人しい性格で、手綱を離されたことにも気付かず、道に生える草を食べていた。


アオ、ワシは今からあの船に乗ってくるから、この辺りで待っておれ。いいか、捕まえられそうになったら逃げるか蹴るかするのじゃ。


自分の身は自分で守るのじゃ。


お殿様はうん!と頷き、井伊家のお殿様と、万二郎と三人で船に乗り込んでいった。


大きな船には大砲が前にも後ろにも横にもあって、大勢の船乗りが乗っていた。


ラクが乗っていた船の何倍も大きな船に乗り込むのも大変だった。縄ばしごがかけられて登ってこいという。が、その高さは落ちたら死ぬ。


最初にお殿様が登って、万二郎が登って、最後に井伊家のお殿様が登っていった。


三人、無事につくと、金色の髪をした青い目の背の高い男の人が出迎えてくれた。


黒いスーツに身を包んだその姿は、異国人ではあるがとても美しく見えた。万二郎が自己紹介を買ってでて、井伊家のお殿様と湯本のお殿様を紹介すると、異国人は笑顔で握手を求めてきた。


それに恐る恐る手を伸ばして握手をしたが、それは子供と大人くらい、手の大きさも違っていた。


軽い食事に招かれ、そこでテーブルと椅子を初めて見た。美しい形のグラスに赤いワインが注がれるのをただただ見ていた。


万二郎のするのをジーっと見て、お殿様2人もマネをする。フォークもナイフも、そして食べた事も無い料理を食べてみる。


それが美味しいのか不味いのかさえ分からないが、これがこの異国人のもてなしだろうということはわかった。


しかし、本題に入って言う事はキツく、開国しろとの事。しないその時は大砲が火を噴く事になる。さあ、どうするか決めてもらえます?


ニコニコとしていた表情とは一転して恐ろしい。まるで侠客のようだと湯本家のお殿様は心の中で思ったのだった。


隣国と同じ内容を突きつけられた井伊家のお殿様は、本当は朝廷に話を通してから決断しなければならないが、何だかんだと難癖をつけ、戦になってしまうやもしれない。


今はその力はないが、こんな大きな船を作る人に今は逆らわず、従おうと勝手に決めたのだった。


それを見ていた湯本家のお殿様は何も言えない。だってお殿様はそんな大それた事をこんな短い時間で決めてしまうような頭の回転は持ち合わせてはいない。しかし、2つに一つの回答なら、自分もそっちを選んでいる。


戦になっても、赤ちゃんと大人が戦うようなものじゃな。


口数の少ない井伊家のお殿様は何も言わず、ポンと判子を押して船から降りて帰ってきた。


そしてまた湯本のお殿様と万二郎に褒美を与えた。


井伊家のお殿様は国の一大事を誰に相談することもなく決めたので、朝廷の偉い人達も、他の大名達も納得いかず、怒りをあらわにするだろう。


黒船が来て、それを見ていろんな思想を持つもの達がこのままではいかん。と国に不満を持ち始めているだろう。


派閥が誕生したのもこの頃で、武士の世の中は大きく変わっていこうとしているのだろう。


ワシの命もいつまで持つか分からぬのぅ。しかし、民の命を守る為じゃ。国の名を遺す為じゃ。そう思えば、どれだけ不本意な条件だろうがワシは受け入れる。


そう、井伊家のお殿様は心に違っていたのだった。




お殿様の決断は合っていたのか間違いか。

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