アオと出会う
馬が救ったお殿様。
お殿様は走った。一生懸命に走った。走って走って、走って、息が上がって喉も渇いて、道の真ん中に倒れこんでしまう。
はあはあと、息を整える為に目を閉じていた。
ちょうどぱかぱかと、蹄の音がだんだんと近くに聞こえ、ピタっと止まった。
アオ。お前を市場に連れて行かなければならないんだ。すまないが歩いてくれるかい?
アオ、さあ、行こうな。
アオと呼ばれる馬は一向に動こうとしなくて、横にいる、まだ年若な青年の、すすり泣きがめちゃくちゃ近くで聞こえ、お殿様は目を開けてた。
太陽の光が目に飛び込んできて、薄ぼやけたまなこがだんだんとピントが合い、お殿様はうわぁーと叫び声をあげた。
アオは驚かなかったが、連れていた青年はお殿様を見つけてうわぁと同じように叫んでいた。
何してるんですか!こんな道の真ん中で!寝ないでもらえます?
お殿様は、ちょうどアオの、前足と後ろ足の間にいて、ギリギリ踏まれず助かった。
アオが動かなかったのは、次、どの足を出しても、こいつを踏んでしまうと歩く事を嫌がったようだった。
アオと呼ばれるその馬は、灰色をしており、タテガミは黒で、江戸の街がとても似合う姿をしている。
お殿様は、この馬は今から売られていくのじゃろ?ならばワシに売ってはもらえないだろうか?
急ぎの用が出来た時、この馬が居たらワシはものすごく助かる。そなたの言い値で構わぬ。この馬をワシに譲ってくれ。
青年は、思い切って、25両くれますか?と聞いた。
お殿様は、黙って財布の中から25両を渡した。
そしてその馬にまたがった。
アオとお殿様はここで会ったのが本当に初めてかと疑うほど、息ピッタリに走り抜けていった。
青年は、アオと別れる辛さより、アオが大金にかわったことの方が少し増した。それに、あのお殿様みたいな人にアオを譲れたことが何よりも嬉しかったのだった。
お殿様はアオのおかげで誰より先に、井伊家のお殿様を訪ねていくことができた。アオを馬使いに預け、お殿様は井伊家のお殿様に面通しすることができた。
そこで大きな外国船がやってきて、こちらに大砲を向けてこられ、ドーンと玉が飛んできた事を告げた。
井伊家のお殿様はその事を聞き、とうとう此処にも来よったかと目を閉じた。
報告ご苦労であった。褒美をつかわす。
ははぁ。頭を下げて起き上がると、目の前に100両積まれていた。
それをお殿様は受け取って、家へと帰ろうとして、そういえばワシ、さっき馬を買ったのじゃった。
帰りにアオを受け取ると、お殿様はアオにまたがり家路についた。
ワシはお殿様だから、アオよ、そなたは堂々としておるのだぞ。よしよし。
アオはこの日からお殿様が何処へ行くのにもいつもアオと一緒になっていたのだった。
いよいよ黒服から出てきます




