反抗期
素直になれないお年頃
手紙を破ってクシャクシャにして、丸めた。それを何処かへ投げつけようとしたけれど、そうして振り上げた手の中の手紙は投げる事が出来なかった。
その様子を役人は黙って見ていた。お殿様が大事そうに抱えて、誰か見ていないかキョロキョロして、役人の所へ持ってきた手紙を見たときは、役人は少しその姿を見て涙ぐんでしまっていた。
中に何が書いてあるのがは役人には分からなかったが、その手紙を渡してきたその顔は、父親のそれだった。しかし、聡太郎様にはもう、その父の思いは届かなかいのだろう。
父親の代わりのような鏡山親方がいて、弟子たちもたくさん居る。皆んなで同じ釜の飯を食べるうちに、自然と肉親のように思えてくる。
こうして旅籠にくれば夕霧も道蔵も迎えてくれる。
いつの間にか世間の事を知り、いつの間にか大人になっていく。聡太郎はいま、1番血気盛んな時なのかもしれない。
お役人、私は少し外へ出てきます。皆さまにもそう伝えておいてください。
そう言うと鎌ちゃんは1人、お雪と行った多賀大社まできた。太鼓橋を見上げたが、まだ足がギシギシ音を立てながら伸びている為、登る事は諦め、
桜の木の下まで行ってみた。
まだ少し肌寒いけれど陽射しは春の暖かさを運び、ウグイスが春がきたと告げてくる。
もうすぐ咲きそうな蕾を見つけて鎌ちゃんはお雪と共に過ごした日を思い出して、少し笑った。
鎌太郎として来いか。
父上、私は相撲取りになったけれど、顔が変わるほど、まだ身になってはいないのですよ。
丸めた父からの手紙。
もうぐちゃぐちゃなそれを鎌ちゃんは持ってきた手拭いに包み、懐に直した。
もう会うことはないけれど、
父上、あなたはいつまでも私の父親に変わりはない。
父上、帰らぬ親不孝を許してください。
鎌ちゃんはお参りを済ませると旅籠へと帰ったのだった
でもどこかで父を尊敬している。




