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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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反抗期

鎌ちゃんの反抗期

鎌ちゃんと鏡山親方が夕霧の旅籠へきてから早いもので10日が過ぎようとしていた。


鎌ちゃんとの初対面を果たした鎌ちゃんは、そのフワフワの可愛らしい生き物に少しの間、釘付けになり、暇があるといつも鎌ちゃんの小屋に行ってはフワフワしたその毛を触るのだった。


そして、母を毒殺したお民に手を貸したカゲロウとも対面した。カゲロウは鎌ちゃんが聡太郎だとは気がつかず、鎌ちゃんも、あのカゲロウだとは知らずにいた。


それを知るのは役人ただ1人だった。言って誰が得をするでもない。知らぬ方が良いこともある、それにカゲロウも罪の重さを感じている。自分の胸にしまっておくのが良いだろう。


と、そう考えてあえて何も言わずにいた。


聡太郎様。


役人が鎌ちゃんの元へお雪からの手紙を持って朝早くからやってきた。


今日はお雪様だけではございません。お殿様からの手紙を預かって参りました。


父上から?父上は私がここにいる事を知っているのですか?


はい。知っております。


そうでしたか。


鎌ちゃんの顔がみるみる曇っていく。もう会うつもりはない。もう父上と呼ぶ事もない。そう決めていた。


しかし、自分の事を考え、思って父上が自分に宛てた手紙。


役人からその手紙を受け取ると、静かに読み始めた。


拝啓、聡太郎、いや、鎌ちゃん、今は鏡山親方にお世話になっていると聞く。相撲というものは上下関係もさることながら、礼儀や常識も学べるところでもある。そして何より力が強くなる。それは武士道にも通じるものもあるからおおいに学べ。


それとな、お雪の白無垢姿をそなたにも見てやってほしい。しかし帰ってきたとなればお民や弥太郎が命を奪いに来るやもしれぬ。すまぬが、聡太郎としてではなく、鏡山親方の弟子の鎌太郎として来てはもらえぬか。


勝手なことばかり並べたててすまぬな。聡太郎、いまはどんな姿をしている?どんな顔になった?背は伸びたか?病院などかかってはおらぬのか?なぁ聡太郎、ワシは聡太郎に会いたいぞ。


母の絵は今も聡太郎の部屋にあるのだぞ、聡太郎。父が悪かった。すまんかったのぅ。聡太郎、


聡太郎、いつかこの家に帰ってくるのじゃぞ。約束じゃ。


父上らしい。


聡太郎はそう呟くと、その手紙を破いて捨てた。


会いにこいとは。しかも名を変えて来いだと?

行く訳ない。





だんだんとグレていく鎌ちゃんであった。

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