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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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鏡山親方

夕霧が頼んだ親方はどんな人物か。

夏は過ぎたというけれど、まだまだ暑い日が続く。ミンミンゼミの声は聞こえないけれど、ツクツクボウシの鳴き声が辺りに木霊する。夕暮れにはヒグラシの鳴き声が、なんだか寂しく聞こえてくる。


夕暮れの空をただ見上げて、旅に出た鎌ちゃんのことをおもう。


鏡山親方のところだったら心配ない。親方は、自ら旅籠まで迎えに来てくれた。


夕霧の隣に正座して座るその姿は凛々しく、湯本のお殿様の面影を色濃く残している。


湯本のお殿様は、街の民が喜ぶよう、寺社仏閣の保護そして民たちの楽しみとして、相撲興行を開いてくれる。評判の良いお殿様である。そのお殿様の御子息を預かることを決めた時、自分の弟子と同じように育てようと決めていた。


風の噂で聞いた噂では、


武士の時代はこの先は無くなり、新しい時代を迎えるという。


ただの噂ならいいけれど、そうでないような気もしている。それに、もしも湯本家の御子息が生きていると知ると、それをよく思わない連中が命を奪いにくるかもしれないと夕霧はいう。


お殿様の後を継ぐにしても、このまま力士になるとしても、はたまた違う道へ進むとしても、自分の所に居たら安心だと言ってくれる。そんな夕霧の想いを裏切るようなことは出来ない。それと同じくらい夕霧に頼りにされている事が嬉しい。


親方、年に一度は顔を見せにきてくださいね。


そう言って見送る夕霧を親方は鼻の下を伸ばして手を振った。


さあ、行こうか。鎌太郎。


はい!


小さな手荷物一つ持ち、鎌ちゃんは相撲を引退したとはいえ、大きな親方のあとを付いていった。


鎌ちゃーん、いってらっしゃいー!


夕霧も道蔵も、もう涙は出なかった。


これからの鎌ちゃんの行く先を、笑顔で見送った。


行っちゃったわね!


そうね!


これから楽しみだね!


そうね!


2人は1年後の鎌ちゃんを想像してルンルンしてる。


そして夕霧にはもう一つ、


しなくちゃいけない事があった。




これから鎌ちゃんはどんな風になっていくのか。また、湯本家はどうなってしまうのか。はたまた鎌ちゃんの存在はどうなってしまうのか。

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