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鎌太郎、故郷へ帰る
鎌太郎と鏡山親方の旅
まだ少し寒いけれど、見渡せば春の足音がする。見上げた先に桜の木があった。とても太い幹をしている。
鏡山親方と2人、夕霧の旅籠へと旅にでた鎌ちゃんは、立ち寄ったお茶屋さんのすぐ横にある大きな桜の木をジーっと見ていた。
本当は手紙をだそうかとも思ったが、それよりも旅籠にいきなり行って夕霧と道蔵をビックリさせたい。そのビックリした2人の顔を思い浮かべると、なんだか顔が緩んでくる。
鏡山親方は、桜の木を見てニマニマと笑っている鎌ちゃんを見て笑った。
親方、知ってますか?
何を?
夕霧さんは、冬が1番好きな季節なんですよ。
そうか。冬が好きとは。寒いのになぁ。
私も夏が好きなのかと思ってました。
そうだなぁ。夕霧は熱燗が好きだからなぁ。寒い方が美味そうだなぁ。あと3日くらいで着きそうだな。
旅のあいだはいつものように、鏡山親方は何処にいても贔屓衆が集まって世話をしてくれる。
この日もまた贔屓衆が酒やご飯をご馳走してくれた。
鏡山親方はこの旅のあいだ、贔屓衆に鎌太郎を紹介してまわっていた。その事が鎌太郎にはとても嬉しかった。そしてまた、この世話になった分も返して行けるように強い力士にならねば!と強く思っていたのだった。
あと3日もしたら夕霧さんの旅籠。




