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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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カゲロウ日和

カゲロウの行方は、、、

寒いのは苦手なんだけど。仕方ない。


女中の姿からカゲロウは旅娘の衣を身に纏い、雪山を超えていた。


行き先はまだ決めていないが、何か事があれば夕霧の旅籠へ。


と別れ際に伊助が言っていた。


まだ1月初めの年が明けて間もないのに、こんな事になろうとは。


山道を歩きながら、カゲロウは幼い昔を思い出していた。


物心がついた時から兄妹のように育ったが、少しずつ大きくなるうちに自分達は、他の子ども達とは違うことに気がついた。


両親は、先祖代々受け継がれたある書物をカゲロウへ授けた。


そしてその日からその書物の中身を身につける為の修行の日々が始まった。この時カゲロウは自分の両親は忍者であることを知る。


しかし、戦国時代から続いてきた忍者稼業は衰退していた。


ただ、その先祖達が遺した書物を先の世まで継承していく事で、自分達が生きた証になればと、代々そうして受け継いできた思いは幼かったカゲロウにもよくわかる。


伊助もまた同じで両親から書物を受け継いできた。


家系によって忍者の中にも専門分野があり、その中でも伊助は馬術に長けていて、カゲロウは薬や毒に長けていた。


他にも爆薬に長けた忍者も居れば、戦いに長けた忍者もいた。


忍者は1人で行動してはいるが、


横のつながりが深い。情報交換などしていざという時はすぐに動く準備ができている。


そのせいか、カゲロウと伊助には他とは違う信頼関係があり、


いつしか身も心も知ることとなる。


考えている事も、言わずともわかってしまう。


愛とも恋とも違うそれは、信頼としか今は言うまい。


麓がみえて、お茶屋さんをみつけたカゲロウは、冷えた身体を温めようと、寄ったのだった。


いらっしゃい。この雪の中、寒かったね。


おばちゃんはお茶をさげでカゲロウに差し出してくれる。


カゲロウは軽く頭を下げて熱々のお茶を頂いた。


口数は少ないが、美味しそうにお茶を飲む表情がどこかあどけなくて可愛らしい。


お嬢さんはもう宿は決めてるのかい?


カゲロウは首を横にふると、


あのね、ここを真っ直ぐに行った突き当たりにね、旅籠があるんだけどね。夕霧って女将さんがやってるんだけど、おばちゃんあの人が好きでね。いつも勝手に宣伝して楽しんでるんだけど。


お嬢さん、行ってみる?


カゲロウは、行ってみます。と言うと、夕霧さんはどんな人かを聞いてみた。


おばちゃん、歳は若くて人一倍頑張り屋さんだねよ。あそこの旦那さんが亡くなったあとに働いていた雇われ人がみんな辞めちゃったのよ。


でも1人だけ板前の道蔵さんだけ残ってくれてね、近所の主婦の方たちも大変だろうって女中として来てくれることになって、


そこからは旦那様の大切にしていた旅籠を今度は自分が守るんだ!って、その夕霧さんの気持ちがおばちゃん好きでね。


話を聞いただけでも良い人だとしかわからない。カゲロウはお茶代を払うと、ありがとう、おばちゃん、行ってみます。


と、おばちゃんは、毎度あり。


と見送った。


カゲロウは旅籠の前まで着いたのだった。









夕霧と、、、

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