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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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明治の石けんは高かった

石けん作りが佳境を迎えます。

コトコトと、ゴリゴリ砕いたサザンカの実を今度は蒸し器で蒸し始めた。


半時蒸して、その実を今度は布に包んで、端に棒を挿してクルクルと回していった。


布から油が滲み出てきて、それを鎌ちゃんと夕霧は楽しそうに見ている。


1人汗をかいて、それでも楽しそうに道蔵はクルクルクルクルと布から一滴もでないくらいに絞り出した。


その出てきた油の量はごくごく僅かで、


ツバキ油って、物凄い実の量が要るのね。。


絞ってでてきた油の少なさに驚きながら夕霧が呟く。


これで本当に石けんなんて出来るのかね。


道蔵も、うーん、わからないわね。


とそう言った。


時代は明治の始め頃、世にはまだあまり石けんが出回っていなかったころだった。


けれど、道蔵も、夕霧も、鎌ちゃんも、朝市に出かけると、そこでいつも買って帰ってきていた。


値段はびっくりするほど高い。


それでも、旅籠に泊まりに来たお客さんに喜んでもらう為、置いていた。


それが手作り出来たなら、それはとても助かるし嬉しい。


ちょうど昔からの道蔵の友人が石けん問屋を開いたところで、道蔵はどうやって作るのか聞いたところだった。


けれど聞いただけでは想像もつかない。


それでも、材料を揃えて、こうして作業をしていると、なんだか出来そうな気がして、


その勢いのまま、事をどんどん進めていく。


あとはこの灰汁を加えて固まるのを待つだけよ。


あと2、3日、の筈が、


石けんが出来たのは、それから更に1か月後になった。


その間に夕霧は、1人、鎌ちゃんをこのまま旅に行かせても、絶対に良くない。まだたったの16才。


透明な心を持つ鎌ちゃんはこの先、何色にだって染まってしまう。


ならば誰かに預けるべきではないかと考えた。


旅が出来て、ご飯にも、寝るところにも困らないところか。。。


いろいろ、そういう仕事はあるけれど。。


1番良いのはお相撲さんの部屋に入ることではないかという結論を出した夕霧は、さっそく昔の吉見で1人の親方のところへ出向き、鎌ちゃんのことを話した。


するとその親方は湯本のお殿様のことを知っていて、それならばと快く、鎌ちゃんの面倒をみると言ってくれた。


先のことはどうなるかはわからない。それでも、この部屋での修行はきっとどこかで役に立つ!


夕霧は、鎌ちゃんにその話をしたら、鎌ちゃんは行くところも決まっていなかったこともあって、お相撲部屋へ入り、巡業の旅に周る事を喜んだ。


1か月が経ち、出来た石けんは5つだけ。


5つ全て鎌ちゃんにあげたら、


これは夕霧さん。これは道蔵さん。これはお客さん。そしてこれは私ので、もう一つはお雪にあげたいです。と言う。


旅立つことに不安を持っていた鎌ちゃんだけど、今は楽しみしかない。


それも全て夕霧さんや道蔵さんのおかげ。


鎌ちゃんはこの恩は絶対に忘れちゃいけないと思うのだった。



忘れちゃいけない恩を鎌ちゃんはちゃんと忘れずにいる事が出来るのか。それはこの先のキーワードになって行きます。

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