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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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帰宅

帰ってきました。

時が過ぎるのは早く、


お殿様とお雪御一行は、夕霧の旅籠をあとにしてからもう3日がすぎた。


お雪は湯本家に帰ると、一番先に庭に行き、サザンカを見に行った。


、、、。


真っ白な雪に化粧されたサザンカの木には、真っ白な花が咲いていた。


お雪は言葉を失い、その白い花をただただみていた。


これは、、。


声がして振り返ると伊助がいて、ラクもいる。


伊助、この花も、サザンカ?


見分けの難しい花の木の苗木は、たまにこうして混じって椿の苗木が入っている事がある。


白いサザンカもあるにはあるが、この花は、紛れもなく、椿の花だった。


お雪様、この花もサザンカと同じ、冬に咲く花の仲間で、椿と言います。サザンカの兄弟のようなものなので、この白く咲いた椿の花はお雪様のようでございますね。


そうなのね。この花、椿っていうのね。サザンカの花も綺麗だけど、この白い椿の花も、綺麗ね。


大切に育てられたこの花のように、今度は私があなた様をお守りします。お雪と呼んでもよろしいですか?


お雪はうんと頷いて、着物の袖で顔を隠した。


伊助はそのなんとも可愛らしい様子のお雪を見て微笑んだ。


ラクを小屋に連れて行きますね。


お雪は袖から少し顔をだしてラクちゃん、ゆっくり休んでね。


ラクは聞いたことない大きな声で返事をして小屋へと帰っていった。


お雪、何をしておる?寒かろう?


あ、父上。サザンカだと思っていたら、椿が咲いてました。


お殿様は、花を覗き込んで、本当じゃ。真っ白じゃな。お雪のように綺麗な花になったのぅ。鎌ちゃんにも見せてやりたいのぅ。


父上。父上も兄上に会いたいのですね。


ワシは春になったら会える。江戸へ行ったら一番に会いに行く。この椿の花を見せてやりたいが、持って行けぬゆえ、お雪、この椿の花をワシはえがく!


父上?


父はこう見えて絵が上手いのじゃ。知らないのも無理はない。ワシは誰にも言っておらぬ。


その絵、お雪にも1枚、描いてくださいな。父上。


春になったら父上は居なくなる。もう、あと三ツキ。あまり父との関わりを持たずに育ったが、母の手紙に書いてある。父も母も、お雪の事が大好き。お雪が生まれてくるのを心待ちにしていたんだよ。と、そう書いてある。


お雪の願いを叶えるべく、お殿様は、帰ってきて早々なのに墨と筆を持ってきて、下絵を描きだした。


父上、帰ってきて早々、疲れたでしょ?大丈夫?


お雪にワシが出来ることはしてやりたいと思ったら、やってしまったのぅ。これを書き終えたのちに入る。心配せずとも良い。


しかし、お雪は思いやりのある良い子じゃなぁ。ワシはそんな娘を持てたことをありがたく思っておるぞ。


父上。私も父上が父上で良かった。


2人は何故か寒い空の下、


涙ぐみ、お雪は父に手を振って、家の中に入っていった。


お殿様はお雪に手を振り返し、サーっと下絵を描きあげると、家の中へ入っていった。


また空から白い雪が降ってきて、積もった上にまた落ちる。湯本家の自慢の庭に本格的な冬がとうとうやってきたのだった。









絵は描きあがるのか。

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