告白
冬が起こす魔法があるならこれは魔法。
行灯の灯りの下で、1人泣く道蔵の持つ手には鎌ちゃんがお雪へ書いた手紙があった。
長い長い手紙を道蔵はただただ読み進む。
あら、寝ちゃったのね。あの子らしい。と最初の方は思っていたのに、もう、涙が止まらなくなってきていた。
伊助は今夜もお殿様の部屋の屋根裏にいた。そして今夜もその部屋に道蔵が居る。
泣いているその背中は大きいのに伊助には小さく見える。
伊助はまたスッと道蔵の前に上から降りてくると今夜はびっくりした顔をして伊助を見ていた。
何、泣いてるんですか?
鎌ちゃんがお雪ちゃんに宛てたこの手紙よ。
それを聞いて伊助の顔色が変わる。
違うの。ここに書かれてる鎌ちゃんの師匠のお相撲さんの友達の話がね、泣くの。
あんた、お雪ちゃんに読ませてもらいなさいよ!一緒になるんでしょ?
あ、はい。
あ、はいじゃないわよ!もう!!アタシのこと、弄んだくせに!アタシは鎌ちゃんもお雪ちゃんも大好きなの!だから伊助さんのことはなかったことにしたいんだからね!
伊助はそんな事を言う道蔵を真っ直ぐにみて、
私はなかったことになんてしません。あの日の道蔵さんは私だけの道蔵さんだったから。だからずっと忘れてなんかやらないです。
伊助さん?
女を泣かせる男になりたくはない。たとえそれが一夜限りのことでも、私は道蔵さんのこと、忘れませんよ。
運命っていうのは皮肉なものね。アタシのことを女として見てくれる人なんてこの先現れないかもしれないのに。そんなこと言ってくれる人だっていないかもしれないのに。
伊助は優しい微笑みを浮かべて道蔵に言う。
きっといますよ。大丈夫。いなかったら私の側室にします!
道蔵はそれを聞いてハッキリキッパリ、側室は嫌!正室じゃないと嫌!伊助さん、お生憎様。
道蔵さん、いま私のことフリましたね。
フッちゃった。お雪ちゃんのこと、幸せにしてあげてね。またここにも連れてきてあげてね。鎌ちゃんもラクに会えて喜ぶし。
はい!
伊助も、道蔵も、人を大切に思うから誰も傷つけたくはない。それに自分も傷つきたくはない。けれど、お互いのことを思えば思うほど、少しずつ少しずつ痛くなる。小さな筈の傷口はいつのまにか深くなって、
互いに大切な存在だと思い知る。
それでもその人には自分の前では笑っていて欲しくて、、その人の前では笑っていたい。
それが愛なのか、そうじゃないのかはわからないけれど2人は心の中で誓っていた。
お雪の幸せを。
幸せにしたいと。
心の中で誓っていた。
滑稽なのに切なく残る思いはたぶん何処にでもあるのかもしれない。




