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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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親子の旅

お殿様の話を聞きにきた伊助とお雪

お昼近くになると天高くに登ったお日さまが雪を少しずつ溶かしていた。ポタポタと落ちる冷たい水の玉が積もった屋根の雪の先に集まって小さな氷の塊になる。


その塊が少しずつ少しずつ伸びてツララになってキラキラと光る。


お雪と伊助はお殿様に呼ばれ、かしこまって話を聞いた。


伊助とお雪に、2人夫婦となって湯本家を守っていってほしいとお殿様は言う。


父上がそのように決めた事ならばとお雪は伊助と夫婦になることを受けとめた。


伊助は、お殿様とお雪様がそう言って頂けるのならばと承諾した。


お雪が部屋を出たあとにお殿様は伊助を呼び止め、話しだした。


伊助、実のところ、ワシは湯本家のことなど、この先どうなろうとどうでも良い。


ただ、お雪がワシが居なくても困らぬように、側にいてやって欲しいと思っておる。ワシの1番の家来である伊助に任せるのが一番良い。だからワシの養子となるのだ。


反対する者など、おらぬぞ。だってワシ、お殿様じゃからな。ハハハ。


お雪のこと、頼みおくぞ。


とお殿様は伊助に頭を下げた。


伊助はその頭よりもっと低く頭を下げた。


弥太郎とお民はワシと一緒に江戸へ連れて行くから心配せずとも良い。江戸が本家、湯本家は分家としようではないか。のぅ、伊助、良い考えだろ?


お殿様、それではもう、江戸から戻って来られないのですか?


その通り。ワシは江戸の地で骨を埋める覚悟でおる。伊助、もしもなんだが、もしも聡太郎が帰ってきたその時には、兄として迎えてやって欲しい。とはいえ、伊助は何才だったかの?


、、、。伊助はお殿様に年を告げることなく、頭を下げるとお殿様の部屋をあとにした。


、、、。あやつ、何才じゃ?


お殿様のみたところ、20歳そこそこではないかと思っていたが、実際のところ、伊助の年はもう20歳をとうに過ぎ、26歳になっていたのだった。


お雪様と自分が夫婦、、、。


考えたこともなかった。だがしかし、これはまたとない大出世。自分がお殿様の養子とは!湯本家の主人となる。出世とはいえ、両親を亡くした身の伊助には親、兄弟もいない。


ただ1人、


幼馴染みで同じ同郷のカゲロウという女がいた。





身も心も知るカゲロウとの間柄は、、、

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