親子の旅
夕霧と道蔵の会話
大きな鍋から湯気が出て、
米の炊ける良い匂いがしている。
寒いはずの季節に、夕霧は額に汗をかきながら焼いたり、切ったり、調理している。
と、そこに、やっと起きて青い顔した道蔵がごめんなさーい。と謝りながら前掛けをつけてきてくれた。
夕霧は、呑んじゃったのね。大丈夫?
と聞くと道蔵は、大丈夫よ!と青い顔をして言う。本当ならこのまま寝かせてあげたいのだが、花板の道蔵が居ないとどうしようもない。
、、、。黙って料理を作っている道蔵の後ろ姿はいつ見ても頼りになる。けれど道蔵の心は乙女で、鎌ちゃんよりも繊細だと知っているのは夕霧以外にはこの屋には居ない。
中居さんたちが出勤してきて、ようやくいつもの旅籠の朝に間に合った。
朝の仕事が終わって夕霧は調理場の戸を開け、外へ出た。そして、久しぶりに晴れ渡った空を見上げ、うーんと伸びをした。
眠い。
道蔵ー。鎌ちゃんがお雪ちゃんに書いた手紙があるんだけど、あんた読む?
青い顔をしていた道蔵の顔は白い顔になっていた。本当は肌色なのだが、まだ調子は戻ってはいないが、鎌ちゃんの手紙?読みたい!
じゃあ、あとで渡すね。道蔵、飲めないのに何故飲んだの?
聞かないで。お願い、そっとしておいて。
大きな身体を小さく丸めて悲しそうな顔をしている。
同じ男を好きになってしまった者の運命ね。仕方ないじゃない。道蔵。伊助さんは優しいよ!
そうね。優しいよね。あの人。って女将、お殿様のこと、好きだったの?
夕霧は黙って、頷いた。
女将には敵わない。アタシ、女将には敵わないわ。だって女将なんだもの。
道蔵はうん!と頷くと、束の間の休息を終わらせて洗い場へと向かう。女将はもう休んでね。あとはアタシがやっておくわ。
道蔵、大丈夫?
アタシを誰だと思ってるの?
そう言い残すと洗い場へと向かっていった。
夕霧と道蔵の会話




